ベルシステム24様
東日本大震災を教訓に、より高い実効性を求めて
―今回の取組のきっかけはどのようなことでしたか?
浜口様: 当社では、数年前から首都圏直下型地震を想定した行動ルールを検討しており、災害対策マニュアルやリスク管理規程も整備していました。しかし、東日本大震災の際にそれが想定通りに機能せず、大半の社員がその存在さえ知らないという状況であったため、より実効性のあるBCMを確立していくことになりました。また、クライアントの関心も高くなり、クライアントの弊社に対するBCPに関する問い合わせも増え、特に外資系のクライアントではBCPに関する条項が契約書に盛り込まれる等クライアントの意識の高まりも、後押ししました。
外部の支援を受けるにあたっては、ドキュメント整備だけではなく、有事の際の実効性までを重視した結果、クライアントの声も交えながら具体的な取組の内容を説明したニュートン・コンサルティングを採用させていただきました。
クライアント単位のBCPを構築できるフォーマットを考案
―今回のプロジェクトの概要を教えてください。
浜口様: 今回のプロジェクトはスモールスタートで立ち上げ、集中して仕組みを構築し、その後、社内で展開していくこととしました。
コールセンターの業界ではBCPの事例は少ないと感じております。新しいジョブが日常的に増減し、クライアントの求めるレベルに応じてコミュニケータの人員数も変化するなど、他業界に比べると業務パターンが多岐にわたります。
また、有事の際の要求レベルも復旧のスピード感もクライアント毎に様々です。有事には業務を停止するクライアントもいる一方、社会的インフラにかかわる事業をしているクライアントでは、有事の際にこそコールセンターを立ち上げる必要があり、我々としても最大限のご支援をすることで社会的責任を果たさねばならないと思っております。そのようなクライアントとは、東日本大震災の後、協議を重ねて、人員の確保などについて合意するなど態勢の整備を図って参りました。先に申しましたが、事業継続を求めるクライアントは、増加してきていると感じております。その中で、有事に関する意識が非常に高いクライアントもあり、あるクライアントのコールセンターでは、有事の際に運動靴が支給されるなどの対応を日頃より行っている会社もあると聞いております。また、ライフラインや公共事業にかかわるクライアントは、有事に対する意識がとても高いと感じております。
こういったことから、すべてのクライアントの業務をひとつのBCPでカバーするのは困難だと判断し、今回は、発生した案件に応じてクライアント単位で柔軟に構築できる「災害時業務継続手順書」のひな型による展開の仕組みを考えました。
具体的には、「災害時業務継続手順書」のひな型をジョブ(クライアント)ごとに作成し、クライアントと協議を行って完成させます。そして演習を行い、改善計画を策定し、状況確認表を提出させることによって事務局で管理できるようにしました。このような仕組みによって、事務局の負担を軽減しながら現場で主体的にBCPを策定することができます。現場のコミュニケータたちも、自分の業務にマッチしたBCPであれば、有事の際の対応にも迷いがありません。「自分の業務の場合は…」と解釈しなければならないものだと、いざというときに迷いが生じてしまいます。
また、当社ではどういう対応が可能かということを提示しながらお客様と協議ができるという点で、お客様の要求に柔軟に対応できることも、この仕組みの利点です。今回のものをベースに、誰がいつ何をするかという具体的なルールを組織に当てはめていき、BCPについても内容をクライアントと詰めていく段階に入っていきます。当社の場合はクライアントの合意がないBCPには意味がありませんから。また、この後さらに他のクライアントに広げていきますので、その選定も行っているところです。
事業内容を理解し、実態に即した支援をいただきました
―ニュートン・コンサルティングのコンサルティングはいかがでしたか。
浜口様: 当社の事業内容を理解していただく姿勢がとても強く、また実際に役に立つものを作るという姿勢で臨んでいただいたと思います。ドキュメントという成果物だけに頼るのではなく、有事の際の行動基準を身体に染み込ませて初めて取組の成果が出ると何度も教えられました。コンサルタントというと専門用語で煙に巻かれる印象がありましたが、非常に実態に即した支援をいただきました。
BCPを通常の業務プロセスの中に取り込んでいきたい
―今後の展開について教えてください。
浜口様: 今回、方針が決まって仕組みができたので、実質的な方針や態勢を確立するとともに、今年は訓練にも力を入れていきたいと考えております。なお、具体的な体制を決めていくとともに、地震以外の災害も考慮に入れて、北海道から沖縄まである全国の事業所にどのように展開するかが喫緊の課題と認識しており、まずは社員の意識改革が重要であると感じておりますので、彼らの意識を改革するためにも全国を行脚することも視野に入れた対応を考えております。コールセンターではBCMというと何か特別なものという意識がまだありますので、通常の業務プロセスの中に取り込んでいくべき当たり前の取組だという意識を、一人でも多くの社員にもってもらうことが大事だと思います。そのような意識がなければ有事の際に自律的な行動をとることはできませんから。また、BCPについてはクライアントを選定して広げていくつもりです。内容についても毎年見直し、クライアントと毎年協議していきます。
利用サービス
プロジェクトメンバー
お客様 |
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専務執行役 浜口 聡子 氏 |
監査室長 余郷 雅巳 氏 |
法務コンプライアンス部 部長 井木 尚洋 氏 |
法務コンプライアンス部 マネージャー 松山 豊晴 氏 |
ニュートン・コンサルティング |
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取締役副社長 兼 プリンシパルコンサルタント 勝俣 良介 |
担当の声
取締役副社長 兼 プリンシパルコンサルタント 勝俣 良介
“フットワークの軽いBCP構築”を実現
ベルシステム様の場合はどうだったのか? 事例中の浜口様のご説明にもありましたように、言わば“コールセンターBCP”を構築する上での最大のチャレンジは、同社のBCPに対する多様なクライアントニーズにどう応えるかということと、その変化にどうついていけるようにするか、というものでした。通り一遍のアプローチでは、数年後に形骸化することは目に見えていました。そこで出した答えが“フットワークの軽いBCP”を作るというものでした。“フットワークの軽い”とは、つまり、トップから出される事業継続方針を満たしつつも、ベルシステム様がクライアントにサービスを提供する組織単位で、現場主導で、クライアントとともにBCPを策定し、訓練し、改善できるもの、を指します。当該事業トップを担う浜口様をはじめ、BCP事務局の松山様、余郷様、そして現場の方々は、既存の枠組みに固執せず、むしろこうしたアプローチを積極的に採用してくれました。何よりも全ての活動に対し、本当に真摯に取り組んでいただけました。だからこそ、本プロジェクトは一定の成果を残せたのだと感じています。
2年後、3年後…10年後に、ベルシステム様の皆様が今以上の笑顔でいらっしゃってくれること…それが私の目標です。