企業のリスク・マネジメントがテーマとなっている本コラムですが、リテラシー不足によるリスクについて話してみたいと思います。
私の社会生活は外資系IT企業で大型システムをお持ちの大企業様を担当するシステム・エンジニアから始まり、大手自動車会社の開発、生産、販売、サービスおよび販売会社、部品会社を担当し、全業務に関係し、その後東日本の全製造業様のシステム・インテグレーション・サービスを担当しました。
2000年末から、アメリカのCRMソフト会社の立ち上げとERPのサービス・ビジネスを推進してきました。
私の一貫した経験および信条は ・“お客様から学ぶ” ・“ある分野でその会社(できれば日本でも)のNo.1になる” ことでした。ある分野で会社でNo.1になることができたケースは残念ながら多くはなかったのですが、“お客様から学ぶ”は担当したお客様から、仕事の進め方、マメージメントの仕方、人生の生き方まで含めて学ぶことができました。
“お客様から学ぶ”と同時に“外から学ぶ、人(専門家)から学ぶ”ということも我々は常に心がけなくてはならないと思います。
“学びて思わざれば則ち罔し(くらし)、
思いて学ばざれば則ち殆し(あやうし)”
外資系IT企業では長い間自社のマニュアルさえ読んでおけば十分だと言われていましたが、1980年代後半からあれよあれよという間に、外部の本、資料を読まないと通用しなくなりました。「学び、考え、外を知り、己を知る」を繰り返していくことが重要ではないかと思います。
そのようなことをせず、取り返しのつかない失敗、災害を拡大、または拡大中(進行形)の例を三つあげてみたいと思います。
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[例1] 戦争災害-戦争必至の空気に引きずられ、日中戦争、太平洋戦争を引き起こし、アジアの国々に多数の、日本人に300万人超の死者を出す戦争災害を引き起こした戦前の軍部。
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[例2] 経済災害-1992年から現在まで長期のデフレを脱却できず、高失業率、若年者の就職難、一人当たりGDPの大幅低下、名目GDPが1991年と2010年が変わらないという実績の日本の金融/経済政策。
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[例3] 原発災害-安全神話の空気のもとで、総合的なリスク対策、安全設計ができなかった福島第一原発事故。
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- 実務(実戦)経験、専門知識が少ない人たちが指導的役割をし、
- 上に行くほど専門、最先端知見のアップデートが少なく、
- 世界の進んだ例から学ばず、取り入れず(日本スタンダード)、
- “Too little, too late”のガダルカナル方式をとる
これらの事例を引き起こすのは、我々日本人全般に、
- 軍事/外交
- 経済
- 原発/放射能
「リスクは一生の友」とも言われ、あまり付き合いたくない友ですが、上記のような日本人の特性により、悪化するリスクを予防、低減するには、我々一人一人がそれぞれのリテラシーを高め、リスクを正しく認識し、健全なる批判と積極的な提言が重要だと思います。
今回の東京都中小企業、団体BCP策定支援事業でも、“お客様から学び”、“リスク・リテラシー”を高めあいながら、お客様のお役に立ちたいと考えております。