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なぜ、正しいリスクマネジメントの知識が必要なのか?

掲載:2022年04月27日

執筆者:取締役副社長 兼 プリンシパルコンサルタント 勝俣 良介

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目次

皆さん、こんにちは。
突然ですが、みなさんは「問題」をどう定義しますか?
辞書で調べると「答えを求めて他が出しまたは自分で設けた、問い※」とあります。そのほか色々な形で表現されますが、一般的には「あるべき姿とのギャップ」などと表現されます。この定義に当てはめれば、例えば「雨が降りそうなのに傘を持ってこなかった。しまった!」という場面も「問題」と言えます。この場合の「あるべき姿」は「雨が降りそうな時は傘を持っていること」であり、「ギャップ」は「傘を持ってないこと」です。

当たり前じゃないか、と思われるかもしれませんが、マネージャーやリーダーは管理職研修等においてこうしたテーマについて考え、問題発見力や問題解決力を養います。「問題」は、実は奥が深いテーマなのです。なぜ、奥が深いのか。それは、「問題」は必ずしも万人にとって明白ではなく、しばしば「取り違え」が生じるからです。

例えば、部下が「大問題です!今日、朝ごはんを食べ忘れました!」と言ってきたとします。それを聞いてあなたは「問題」と感じるでしょうか? 部下にとって「朝ごはんは毎朝食べるもの」であるならば、それは「あるべき姿」であり、そこには「食べなかった」というギャップがあります。その意味では、「問題」と言えそうです。が、ポイントは、部下にとっての「問題」は必ずしも上司にとっての「問題」ではないということです。「朝ごはんを食べる」は、あくまでこの部下にとっての「あるべき姿」にすぎません。もし「朝ごはんを食べないせいで彼の仕事のパフォーマンスが落ちる」ということがわかったなら、その時点で初めて、上司にとっても「問題」になります。ただし、この場合の「問題」は「朝ごはんを食べていないこと」ではなく「パフォーマンスを十分に発揮できないこと」です。

この例から分かるように、人はそれぞれ「あるべき姿」について異なる考え方を持っています。このことが、問題の取り違えが生じる原因です。立場、役割、価値観、習慣、性別、年齢などの違いで、「あるべき姿」は変わってしまいます。

社長に「パソコンが壊れました!」と報告する場面を相談してみてください。なんて答えるでしょうね。「お、そ、そうか。君、それで何が問題なんだ!?」と聞き返されることでしょう。社長が考えているのは会社の経営に関しての「あるべき姿」(例:「売上増」と「コストダウン」等)なので、その目線で「問題」を語らなければ通じないわけです。このように、「問題」は奥が深く、取り違えが起きやすい。そして、「問題」の取り違えが起きていたのでは、問題解決どころではありません。だからこそ、問題発見力や問題解決力に関する研修が必要不可欠なのです。

さて、「リスク」にも、実はこれと全く同じことが当てはまります。リスクは「目的に対する不確かさの影響」と定義されます。言い換えれば「目的に対して与える影響」であり、「それが起きるか起こらないか、いつどう起こるかが不確実である」というものです。「目的」は言わば「あるべき姿」のことであり、「影響」は対象を変化させ本来の姿との間に「ギャップ」を生じさせるものですから、「目的に対して与える影響」は「あるべき姿に与えるギャップ」と言い換えることができそうです。不確実性を伴うかどうかだけが、「問題」と「リスク」の違いと言えるでしょう。

こう解釈するならば、「問題」の取り違えが起きやすいのと同じく、「リスク」の取り違えが起きやすいのももっともだと思いませんか? 繰り返しますが、「あるべき姿」は立場、役割、価値観、習慣、性別、年齢などの違いで変わります。そのような環境下で、正しい教育をうけずにリスクについて議論しようとすれば「リスクの取り違え」が起きます。「『リスクはなんだ?』と問いかけても瑣末なリスクしか上がってこないんだよな」とか「なんか視点ズレてるんだよな」といった経験はないでしょうか?

「リスク」は、そこに不確実性の要素が加わっている分だけ、むしろ「問題」よりも正しい知識が求められると言えるのではないでしょうか。リスクマネジメントこそ、正しい研修が必要なのではないでしょうか。

※引用文献:問題-Google検索 Oxford Languagesの定義より

 

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