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計画規模と想定最大規模

掲載:2022年06月17日

執筆者:コンサルタント 田口 翔海

用語集

近年、大雨による被害が毎年のように発生しています。例えば、2019年台風19号(令和元年東日本台風)や2020年の九州地方を中心とした豪雨(令和2年7月豪雨)、2021年の大雨による熱海での土砂災害などが記憶に新しいのではないでしょうか。地球温暖化などによる気候変動の影響から降雨量が増加し、それに伴い洪水の発生頻度も上昇しています。そのため今後も浸水被害が多発する恐れがあり、水害リスク対策の重要性・必要性は高まっています。本稿では、水害リスク対策において前提となる降雨の規模である「計画規模」や「想定最大規模」について解説するとともに、企業の望ましい対応についても紹介します。

         

「計画規模」と「想定最大規模」とは

洪水ハザードマップは河川の氾濫によって洪水や浸水が発生する範囲や想定される浸水の深さなどを示しますが、洪水を引き起こす雨量については、「計画規模」の降雨と「想定最大規模」の降雨の2種類を想定しています。

計画規模の降雨とは、10~200年に1回程度の割合で発生する降雨量を想定したもので、河川整備など洪水防御に関する計画の基本となる降雨です。一方で想定最大規模の降雨とは、想定しうる最大規模の降雨のことで、1000年に1回程度の割合で発生する降雨量を想定しています。

10~200年に1回程度、あるいは1000年に1回程度の割合といっても、それは10年ごとあるいは1000年ごとに必ず1度はその規模の降雨があるという周期的な発生を意味しているわけではありません。想定最大規模の場合、1年間で発生する確率は1000年に1回程度(約1/1000以下)という意味です。つまり、計画規模、想定最大規模の降雨は、小さな確率ながらも毎年発生する可能性があります。計画規模と想定最大規模の降雨が連続して発生する可能性もあります。

なお、計画規模と近い意味で用いられる用語に「計画降雨」「計画規模降雨量」「治水安全度」などがあります。

「計画規模」と「想定最大規模」の背景

「計画規模」と「想定最大規模」という考え方は、水防法の改正によって導入されました。まず、2001年の水防法改正で、洪水予報河川を対象に浸水想定区域の公表と浸水想定区域における避難措置が義務付けられました。洪水予報河川とは、水位などの予測が可能な流域面積が大きい河川で、洪水により重大または相当な損害を生じさせる恐れがある河川のことを指します。また、浸水想定区域とは、河川が氾濫した際に浸水が想定される区域を指します。この改正に伴い、洪水を引き起こす雨量の規模として、計画規模の考え方が導入されました。

水防法は2005年にも改正され、浸水想定区域を検討する対象が水位周知河川にまで拡大されました。水位周知河川とは、洪水予報河川以外の河川のうち、流域面積は小さいものの洪水により重大または相当な損害を生じさせる恐れがある河川のことです。この改正により、浸水想定区域を検討する対象地域では、計画規模を踏まえたハザードマップの作成も義務付けられました。 

さらに、2015年にも水防法は改正され、想定最大規模の降雨量を想定して、洪水浸水区域を公表する形に変更されました。想定最大規模の考え方はこの改正により導入されたものです。改正の背景には、2010年代前半、計画規模を上回る降雨による浸水被害が多発したことがありました。主な浸水被害として、2013年の梅田駅周辺での浸水被害や2014年台風11号による浸水被害などが挙げられます。2014年台風11号の際には、避難場所である徳島県阿南市の加茂谷中学校に2階にまで浸水が及びました。そのため、想定しうる最大規模の降雨量、つまり想定最大規模も前提に加え、計画規模と併せて洪水浸水区域を公表する形に改正されました。

企業の望ましい対応

豪雨や台風などによる被害が甚大化し企業の事業継続にも影響を及ぼしかねない昨今、企業としても水害リスクに備えておくことが求められます。水害リスク対策を検討する際は、発生可能性を考慮することが望ましく、その際に想定最大規模と計画規模の考え方を活用することができます。例えば、発生可能性が低い想定最大規模については、洪水リスクの把握や避難場所の確認にとどめ、実際に検討する対策の被害目安としては、発生可能性が高い計画規模を使用するといった使い分けをすることが可能です。

具体的な対策を検討するにあたっては、まずは国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」や「地点別浸水シミュレーション検索システム」(通称「浸水ナビ」)、各自治体のハザードマップなどを活用し自社の所在地における洪水浸水想定などを確認してください。その際、現在想定している避難場所が適切な場所であるかを再確認することが必要です。

その上で、自社拠点に被害の可能性がある場合は、電子機器やシステム機器などを高所へ移動させる、浸水を防止するための止水板や止水壁の設置、土のうや水のうの準備、非常持ち出し品や備蓄品の準備などの対策が有効となります。併せて社内への周知・徹底を行うために避難訓練を実施したり、既存のBCP(事業継続計画)の見直し・改善を行ったりすることが重要です。情報を活用し、適切な被害想定の下で自社を守るための対策を進めていきましょう。

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