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避難勧告/避難指示/高齢者等避難/緊急安全確保

掲載:2021年05月14日

執筆者:シニアコンサルタント 辻井 伸夫

用語集

水害や土砂災害、高潮、大津波などの自然災害が発生したとき、あるいは発生のおそれがあるときに市町村長から発令されるのが、「避難指示」「高齢者等避難」「緊急安全確保」です。

以前は、「避難勧告」「避難指示(緊急)」「避難準備情報」と言われていましたが、近年頻発している大規模な災害を受けて、避難を開始する必要性を明確にするために名称が変更されました。なお、「避難命令」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、法律的には「避難命令」という言葉はありません。

これらの用語の違いを理解していないと、いざというときに間違った行動をとってしまうかもしれません。また、用語の違いをあらかじめ理解しておくことが、自らの身の安全を守ることになりますから、避難に関する用語を正しく理解しておくことは大事です。

         

「避難勧告」とは

「避難勧告」は、安全な場所への立退きを求め、早めの避難を促すために発令されてきましたが、2021年の災害対策基本法改正によって廃止となり「避難指示」に一本化されました。同法60条に定められていた「避難のための立退きの勧告」がなくなり、「立退きの指示」のみになっています。

この法改正の背景には、避難勧告が発令されたタイミングで避難せず、逃げ遅れにより被災する人が多いことや、「避難勧告」と「避難指示」の違いが十分に理解されていないことがあります。改正法の施行後は、従来の「避難勧告」のタイミングで「避難指示」が発令されることになります。

「避難指示」とは

「避難指示」は、水害等の災害のおそれがある場合に出され、まだ避難していない人はすぐに避難しなければいけません。避難する(時間的)余裕がない人は、生命を守るための行動が必要です。法律では、災害対策基本法60条で「避難のための立退きの指示」が規定されています。

2021年5月に公表された「避難情報に関するガイドライン」では、避難指示が発令されたタイミングで、該当地域にいる人が危険な場所から全員避難することを基本としています。避難する場合は指定緊急避難場所や安全な親戚・知人宅などに移動する「立退き避難(水平避難)」が望ましいですが、移動する時間がない場合や、洪水や高潮などで高層階が浸水しないと想定される場合は、上階への移動(垂直避難)や高層階に留まる「屋内安全確保」も有効です。

冒頭では用語の意味を正しく理解することが重要と書きましたが、実質的にはこの「避難指示」は市区町村長からの避難についての「命令」の意味だと認識し、出来るだけ早く近くの避難所や安全な場所に避難しましょう。

「高齢者等避難」とは

法律上の規定はなく、「避難情報に関するガイドライン」や市区町村の地域防災計画等で定められています。2021年の法改正以前は「避難準備・高齢者等避難開始」という名称でした。

この「高齢者等避難」という名称は、2016年の台風10号による水害で岩手県岩泉町のグループホームが被災し、入所者9名が全員亡くなる等の高齢者の被災が相次いだため、「避難準備情報」という名称では適切な避難行動がとられないという反省の下に決められました。
人的被害発生のおそれが高く、事態の推移によっては避難指示が発令されることを促しています。

求められる具体的な行動としては、避難に際して時間がかかる高齢者、身体障碍者等は避難を開始し、それ以外の人も必要に応じて外出を控えるなど普段の行動を見合わせ、避難の準備をする、自主的に避難するといったことが挙げられます。また、河川沿いや低い土地など早めの避難が必要な場所の住民は、このタイミングで自主的に避難することが望ましいとされています。

「緊急安全確保」とは

「避難指示」「高齢者等避難」の段階で避難できなかった場合や、状況が急激に切迫して安全な避難が難しくなった場合に緊急的に発令されます。2021年の法改正で新たに規定された避難情報で、条文では「緊急安全確保措置」となっています(災害対策基本法60条)。

このタイミングでは、既に災害が発生して危険が目前に迫り、指定緊急避難場所などへの立退き避難が困難になっています。上層階や近隣の堅固な建物、建物の入り口や窓から離れた場所など、少しでも安全な場所へただちに避難しなければなりません。ただ、避難した場合でも必ず身の安全を確保できるとは限らないため、できる限り「避難指示」「高齢者等避難」の段階で行動を起こすことが重要です。

類型 内容 根拠条文等
警戒区域の設定 警戒区域を設定し、災害応急対策に従事する以外の者に対して当該区域への立ち入りを制限し、若しくは禁止し、又は当該区域からの退去を命ずる 災害対策基本法 災害対策基本法
第4節 応急措置
第63条 <罰則あり>
避難指示 被害の危険が目前に切迫している場合等に発せられ、居住者等を避難のため立ち退かせるための行為 災害対策基本法
第3節 事前措置及び避難
第60条 <罰則なし>
高齢者等避難 高齢者等は危険な場所から避難。それ以外の人も必要に応じて避難や避難準備を開始 避難情報に関するガイドライン(2021年5月)
緊急安全確保 立退き避難が困難な場合に、高所や堅固な建物、建物の開口部から離れた場所などに緊急的に避難 災害対策基本法
第3節 事前措置及び避難
第60条 <罰則なし>
自主避難の呼びかけ (各市町村において独自に行っているもの) 地域防災計画等

警戒レベルと避難情報

2019年5月末から、5段階に分けた警戒レベルが避難情報とともに伝えられるようになりました。2018年7月の西日本豪雨で各自治体が避難を呼び掛けたにも関わらず、逃げ遅れによる死傷者が相次いだことなどを受けたもので、自治体が避難情報を発令する際、警戒レベルも併せて伝えることで、直感的に理解しやすくする狙いがあります。2021年5月現在、警戒レベル3で高齢者等は危険な場所から避難、レベル4以上で危険な場所から全員避難、レベル5では既に災害が発生または切迫している状況のため「直ちに安全確保」としています。

警戒レベル 状況 住民がとるべき行動 行動を促す情報
5 災害発生又は切迫 直ちに安全確保 緊急安全確保※1
~~~~~<警戒レベル4までに必ず避難>~~~~~
4 災害のおそれ高い 危険な場所から全員避難 避難指示(注)
3 災害のおそれあり 危険な場所から高齢者等は避難※2 高齢者等避難
2 気象状況悪化 自らの避難行動を確認 大雨・洪水・高潮注意報(気象庁)
1 今後気象状況悪化のおそれ 災害への心構えを高める 早期注意情報(気象庁)

※1 市町村が災害の状況を確実に把握できるものではない等の理由から、警戒レベル5は必ず発令されるものではない
※2 警戒レベル3は、高齢者等以外の人も必要に応じ、普段の行動を見合わせ始めたり危険を感じたら自主的に避難するタイミングである
(注) 避難指示は、2021年の災対法改正以前の避難勧告のタイミングで発令する

(表:内閣府「避難情報に関するガイドラインの改定」を基にニュートン・コンサルティングが作成)

多様化する避難関連の情報手段

災害時の避難に関する法律的な根拠となっている災害対策基本法が制定されたのは、半世紀以上前の昭和36年(1961年)です。その当時から比べると、情報伝達手段や情報自体の高度化、社会環境の変化等により、避難の呼び掛け方法も大きく変わってきています。

以前は、避難に関する情報手段は、防災無線、ラジオ、テレビ等が主流でしたが、現在ではパソコンや携帯電話、スマートフォン、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)等の情報手段が広く普及しています。

また、市町村ごとのハザードマップや警報、エリアメール、防災速報等などの高性能な降雨情報の提供により、災害に関する各種情報が整備されています。

人の生命を守る防災の観点からだけではなく、組織の継続を図る観点からも、災害時に迅速に避難できるような体制を、普段からどのように作り上げていけばいいのか考えておくことが必要です。

多様化している情報伝達手段の活用

出典:名古屋市「あなたの街の洪水・内水ハザードマップ」より

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