2025年2月26日に発生した岩手県大船渡市の山林火災を教訓として、各自治体の火災予防条例に新たに「林野火災注意報」と「林野火災警報」の規定を検討するよう、総務省消防庁が通知を発出しました。通知は総務省消防庁と林野庁が設置した検討会がまとめた報告書の提言を踏まえて発出されました。火災予防条例は各自治体で規定することとなっており今後、自治体では総務省消防庁が定めた「火災予防条例(例)」(標準的な記載が示されている条例のモデル)を基に地域の実態に応じて条例を改正していくことになります。
総務省消防庁と林野庁は今年4月、大船渡市での大規模山林火災を踏まえて「大船渡市林野火災を踏まえた消防防災対策のあり方に関する検討会」を設置、全6回にわたって林野火災の予防と消火活動について議論してきました。8月26日には報告書を公表し、これを踏まえて総務省消防庁は同29日、「林野火災の予防及び消火活動について(通知)」を改正するとともに、「火災予防条例(例)」の一部を改正したことを通知しました。
改正された「林野火災の予防及び消火活動について(通知)」では、「林野火災注意報や林野火災警報の発令」が新設されました。「林野火災注意報」と「林野火災警報」を創設するもので、それぞれの発令基準が明記されています。
林野火災は雨が少なく空気が乾燥していたり、強風が吹いたりしていると発生、延焼しやすくなります。消防法に基づく「火災警報」を発令し、警戒パトロールによって火の使用制限の徹底を行うことが火災予防には効果的とされています。ただ、火災警報には罰則規定があり、住民に強い制限を強いることになるため、発令は低調であることが調査で分かりました。このため、強い制限や罰則を伴わずに住民へ注意を促す新たな制度が必要だと検討会は提言し、これを踏まえて「林野火災注意報」が創設されました。
発令の対象期間は、空気が乾燥しやすい1~5月を基本としています。発令基準は「3日間の合計降水量が1ミリ以下で30日間の合計降水量が30ミリ以下」もしくは「3日間の合計降水量が1ミリ以下かつ乾燥注意報が発表されている場合」と示されています。
一方、火災警報は、林野火災予防に着目した的確な発令が必要だとし、対象地域を限定して「林野火災警報」との通称で発令できるように改正されました。対象地域は林野火災が発生・延焼するリスクに応じて絞り込まれます。発令基準は、林野火災注意報の発令指標に加え、強風注意報が発表されている場合と示されています。なお、林野火災注意報および林野火災警報は地域ごとの気象特性などに応じて発令基準を調整することが可能です。
このほか、林野火災発生の大半は、たき火や火入れといった人為的な要因によるものだとして地域特性に応じて、火災予防条例においてたき火の届出制度を位置付けるよう明記されました。