NISTはこのほど、WUI火災(原野と都市の境界面における山火事)に関するガイドラインの最新版を公表しました。
ガイドラインの正式名称は「WUI Fire Evacuation and Sheltering Considerations: Assessment, Planning, and Execution (ESCAPE)」で、通称「ESCAPEレポート」です。
アメリカではWUI火災が深刻化しています。WUIは“wildland-urban interface”の略で、「原野と都市の境界面」と略されます。急速に広がる山火事から、できるだけ多くの命を守るためには、コミュニティで事前に避難や避難所に関する計画を立てることが重要です。その計画づくりに役立つためのガイドラインとして、過去の事例の教訓や科学的知見をもとに作成されたのがESCAPEレポートです。
このたび公開された最新版では、2023年の初版から、主に3つの情報が新たに追加されています。
1つ目に、新たに「一時避難区域(TFRAs)」の概念が導入されました。一時避難区域とは、避難が不可能になったときに生存確率を高めるために避難する安全で開けたスペースのことです。ESCAPEレポートによると、地方当局は「一時避難区域」となる場所を事前に検討・指定し、該当区域に標識などをつけておくことで、有事により多くの命を救える可能性が高まるとしています。
2つ目に、突発的なWUI火災に対する対応強化が示されました。これは、事前に通知や避難勧告が出る前に火が広がり、人々が避難できなかった例があったためです。対策としては、複数の避難経路・通信手段を確保し、一時避難区域と安全区域を事前に指定することなどが挙げられます。
3つ目に、火災が特定の境界を越えたときに避難を促す「トリガーゾーン」が「意思決定ゾーン」という名称に変更されました。山火事は予測不可能性が高く、変化する状況に応じて判断する必要があり、「この範囲まで火災が広がったら自動的に行動を促す」と機械的に判断するものではないため、「トリガー」という表現が適切ではないと判断されました。
ESCAPEレポートの全文は、NISTのサイト内に掲載されています。