
「災害ケースマネジメント」とは、行政が支援メニューを用意し、被災者の申請に基づき支援を提供するという従来の被災者支援とは異なり、一人ひとりの被災者の状況を把握し、関係者が連携して、被災者に対するきめ細やかな支援を継続的に実施する取り組みです。日本では東日本大震災の被災者支援において導入されて以降、各地の地方公共団体で普及が進んでいます。
災害ケースマネジメントとは
内閣府による『災害ケースマネジメント実施の手引き』では、災害ケースマネジメントを「被災者一人ひとりの被災状況や生活状況の課題等を個別の相談等により把握した上で、必要に応じ専門的な能力をもつ関係者と連携しながら、当該課題等の解消に向けて継続的に支援することにより、被災者の自立・生活再建が進むようマネジメントする取組」と定義しています。
災害ケースマネジメントは、2005年、アメリカ合衆国で甚大な被害をもたらしたハリケーン・カトリーナの被災者支援において初めて実施されたとされています。日本では、2011年に発生した東日本大震災により大きな被害を受けた宮城県仙台市で導入されて以降、各地における地震や豪雨等の被災者支援で実施されています。
災害ケースマネジメントの普及・啓発に取り組む内閣府は、2022年3月に『災害ケースマネジメントに関する取組事例集』、2023年3月に『災害ケースマネジメント実施の手引き』(以下、『手引き』)を作成・公表。また、2023年5月の防災基本計画の見直しにおいて、「災害ケースマネジメント」の位置付けを明確化しました。
災害ケースマネジメントの効果
『手引き』によると、災害ケースマネジメントの特徴として、「アウトリーチによる被災者の発見、状況把握」「官民連携による被災者支援」「被災者の個々の課題に応じた支援の検討・つなぎ」「支援の継続的な実施」の4点が挙げられます。
このような支援を実施することで、避難生活による体調悪化や過労などによって引き起こされる災害関連死の防止や、避難所以外への避難者への対応、支援漏れの防止につなげられるほか、被災者の自立・生活再建の早期実現、地域社会の活力維持への貢献なども期待できると考えられています。
災害ケースマネジメントの準備と実施
災害ケースマネジメントを適切に実施するためには、平時からの備えが欠かせません。『手引き』では、平時から地方公共団体内の各部局における体制を構築して取り組みの実施主体を確認しておくとともに、関係する機関・民間団体との連携体制を構築するよう求めています。さらに、災害ケースマネジメントの実施や体制については地域防災計画等への位置付けを行い、取り組みの根拠を明らかにしておくことが望ましいとしています。
また、災害ケースマネジメントの実施にあたっては、発災後の段階に応じて取り組み方法やポイントが異なると考えられます。そのため、『手引き』では、「発災直後~避難所運営段階」「避難所閉所検討~応急仮設住宅供与段階」「応急仮設住宅供与段階以降」の3つのフェーズに区切り、各段階における対応のポイントや留意点を解説しています。