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災害派遣福祉チーム(DWAT)

掲載:2024年06月06日

用語集

「災害派遣福祉チーム(DWAT:Disaster Welfare Assistance Team)」は、一定期間にわたり避難所を設置するような規模の災害が発生した際、災害時要配慮者(高齢者や障がい者、子ども、傷病者等)の生活機能の低下や災害関連死などの二次被害を防止するため、避難所で福祉支援を行う福祉専門職(介護福祉士、介護支援専門員、社会福祉士等)を中心とするチームです。
DWATは、施設関係団体や職能団体、社会福祉協議会等によって都道府県単位で組織される「災害福祉支援ネットワーク」から派遣された職員で編成されます。近年では、令和2年7月豪雨(熊本県球磨地域)や令和3年7月豪雨(静岡県熱海市)、令和6年能登半島地震などの災害においてDWATが派遣されています。

         

DWATが誕生した背景・経緯

近年、日本は、東日本大震災をはじめとする地震や台風による土砂災害など、甚大な被害をもたらす多くの自然災害に見舞われてきました。このような災害においては、高齢者や障がい者、子ども、傷病者などの災害時要配慮者も長期間の避難生活を強いられ、生活機能の低下や要介護度の重度化という二次被害につながることが少なくありません。そのため、これらの人々に対する支援体制の構築が重要な課題となっていました。

このような状況から、厚生労働省は2018年に「災害時の福祉支援体制の整備に向けたガイドライン」(以下、災害福祉ガイドライン)を策定しました。災害福祉ガイドラインは、災害派遣福祉チーム(DWAT)の組成や必要な支援体制の確保のために、各都道府県が取り組むべき基本的な内容を示したものです。

災害福祉ガイドラインの策定を受け、各都道府県では災害時における福祉支援体制の整備を進めてきました。2023年3月に公表された調査報告書(「災害福祉支援ネットワーク、DWATの実態把握、課題分析及び運営の標準化に関する調査研究事業報告書」)によれば、災害時の福祉支援体制は、2022年度末でほぼ全ての都道府県で構築されています。

災害福祉支援ネットワークの役割とDWAT派遣の流れ

災害福祉ガイドラインには、各都道府県は「災害福祉支援ネットワーク主管部局」を定める必要があること、主管部局は「ネットワーク事務局」を設置すべきことなどが記されています。ネットワーク事務局は、災害発生時に円滑な活動が行えるよう、平時からDWATの組成方法や活動内容などについて協議を行い、業務フローを整理しておく必要があります。

一定期間にわたり避難所を設置する規模の災害が発生した際、主管部局は事務局と調整し、「ネットワーク本部」を立ち上げます。そして、被災市区町村からの依頼や本部が把握した情報に基づきDWAT派遣の必要性が認められた場合、所定の手順に従って派遣を決定します。DWATの活動期間中、本部は必要な指揮命令を行うとともに、情報や物資の提供などの後方支援を行います。そして、チームからの報告や地域の社会資源(社会福祉の支援過程で用いられる資源)の復旧状況等を勘案し、被災市区町村や避難所の管理者等と協議の上、派遣終了を決定します。

DWATの活動内容

DWATは、避難所において、福祉避難所等への誘導やアセスメント(要配慮者のニーズ・情報を集めて分析し、課題を明確にすること)、食事やトイレなどの日常生活上の支援、相談支援など、災害時要配慮者に対するさまざまな福祉支援を実施します。さらに、避難所内の環境整備や本部・都道府県との連絡調整および状況等の報告、後続のチームへの引継ぎ等も任務に含まれます。活動にあたっては、被災市区町村や避難所管理者、他職種、被災地域の社会福祉施設等など、さまざまな人々との連携が求められます。これらの活動により、DWATは災害時要配慮者の二次被害を防止し、避難生活終了後の安定的な日常生活への移行を支援します。