【解説】DWATとは?災害派遣福祉チームの役割・活動内容・DMATとの違い
| 執筆者: | ニュートン・コンサルティング 編集部 |
| 改訂者: | ニュートン・コンサルティング 編集部 |
災害発生後の避難生活では、要配慮者への福祉支援が求められます。障がい者雇用の推進や共働き家庭が増える中、従業員が避難先でどのような環境に置かれ、何を必要とするのかを知ることは、企業のリスク管理においても非常に重要です。本記事では、DWATの役割や活動内容、他チームとの違い、能登半島地震における活動実績も併せてわかりやすく解説します。
災害派遣福祉チーム(DWAT)とは
DWAT(Disaster Welfare Assistance Team:災害派遣福祉チーム)とは、都道府県により組織された福祉専門職などで編成されるチームです。大規模災害の発生時に避難所などへ派遣され、高齢者や障がい者、乳幼児などの「災害時要配慮者」に対する福祉支援を行います。
DWATは、「災害時要配慮者の福祉ニーズに的確に対応し、その避難生活中における生活機能の低下防止を図りつつ、一日でも早く安定的な日常生活へと移行できるよう、必要な支援を行うチーム」と定義されています(※1)。
(※1)厚生労働省「災害時の福祉支援体制の整備に向けたガイドライン」
図1:災害派遣福祉チーム(DWAT)の構成と役割
図1の通り、DWATは、相談の援助を行う社会福祉士や、介護福祉士など、福祉の専門職員と事務職員で編成され、1チーム4~6名体制で活動します。
DWAT発足の背景
DWATは、2011年の東日本大震災を契機に、岩手県や京都府などで独自に始まった取り組みです。東日本大震災では、避難所における要配慮者への福祉支援が十分に行き届かず、心身の健康悪化による二次被害(災害関連死)が発生したことが大きな課題となりました。特に、障がい者の死亡率は高く、被災住民全体の割合と比較して2倍程度だったといわれています。
この教訓を踏まえ、厚生労働省は、全ての都道府県へのDWATの設置と、DWATの派遣体制を整備する「災害福祉支援ネットワーク」の構築を目指し、2018年5月に「災害時の福祉支援体制の整備に向けたガイドライン」を策定しました。このガイドラインに基づき、全国でDWATの整備が進められています。
なお、名称の似た組織にDMAT(災害派遣医療チーム)がありますが、支援のアプローチは大きく異なります。急性期の医療処置を主目的とするDMATに対し、DWATは避難所などでの「生活支援」や「福祉的ケア」を重視します。これにより、医療の枠組みだけでは防ぎきれない二次被害を防止し、生活の質の維持を担う点が大きな特徴です。
災害福祉支援ネットワークとの関係
DWATは、大規模災害が発生した場合に、都道府県ごとの災害福祉支援ネットワークにより組織され、避難所などへ派遣されます。
災害福祉支援ネットワークは、都道府県、社会福祉協議会、社会福祉施設を含む関係団体など、行政と民間組織により構築されるネットワークです。2023年3月までに全都道府県でのネットワーク構築が完了しています。
厚生労働省は「災害福祉支援ネットワーク構築推進等事業」を実施し、この災害福祉支援ネットワークの構築を支援しています。さらに、「災害時の福祉支援体制の整備に向けたガイドライン」において、各都道府県が、ネットワークの企画や運営を行う「ネットワーク主管部局」の選定と、ネットワークの運営に関わる事務処理を行う「ネットワーク事務局」の設置をするよう定めています。
ネットワーク事務局は、主管部局や関係団体などのネットワーク構成員を招集し、ネットワーク会議を開催します。会議では、災害発生時に円滑な活動が実施できるよう、協議や業務フローの整理を行い、有事に備えます。
以下は、災害福祉支援ネットワークの全体構造を示したものです。
図2:災害福祉支援ネットワークの体系図
図2のように、甚大な被害をもたらす局地的な災害や広域災害が発生した場合は、「災害福祉支援ネットワーク中央センター」が都道府県内だけでなく、隣接する都道府県などと連携し、ブロック単位でチーム派遣要請の仕組み作りを含む体制整備を進めていくことを推奨しています。
このネットワークを構成する各機関は、平時・有事で異なる役割を担っています。表1は、主要な機関の立ち位置と活動内容を整理したものです。
【表1】災害福祉支援ネットワークにおける各組織の役割と活動内容
| 組織・機能名 | 立ち位置・役割 | 平時における活動内容 | 有事における活動内容 |
|---|---|---|---|
| 災害福祉支援ネットワーク中央センター | 広域災害が発生した場合に、隣接する都道府県に対し調整を行う機関 | 会議などを活用し、ブロック単位で非被災都道府県に対するチーム派遣要請の仕組み作りを含む体制整備を行う |
|
| 災害福祉支援ネットワーク主管部局 |
|
|
|
| 災害福祉支援ネットワーク事務局 |
|
|
|
| ネットワーク本部 |
|
ー |
|
厚生労働省「災害時における福祉支援体制の構築について」を基にニュートン・コンサルティングが作成
表に記載の通り、災害発生時には、都道府県が「災害福祉支援ネットワーク本部」を設置し、現地のニーズに応じてDWATの派遣を決定します。なお、DWATのチーム員名簿の作成は事務局が行います。実働部隊であるDWATは、こうした多層的なバックアップと指揮命令を受けることで、避難所などの最前線において要配慮者への確実な福祉支援を展開できる仕組みとなっています。
DWATの役割と活動内容とは
DWATの役割は、大規模災害の発生時に、避難所などで生活する「災害時要配慮者」へ福祉的な支援を行い、生活機能の低下や要介護度の重度化などの二次被害を防止することです。被災者が一日も早く安定的な日常生活へ移行できるよう支援します。
高齢者、障がい者、乳幼児、傷病者といった、災害時に特別な配慮を必要とする要配慮者は、避難による環境の変化や支援不足により、心身の健康を損なうリスクが高まります。DWATは、こうした災害時要配慮者の避難生活の福祉ニーズに的確に対応し、単なる介護支援にとどまらない、避難所全体を「生活の場」として機能させるための多岐にわたる専門的アプローチを担います。
具体的な活動としては、避難所内を巡回して要配慮者を発見するスクリーニングやアセスメントを実施し、食事や排泄、入浴といった日常生活上の介助を行います。加えて、生活相談への対応や、環境整備、一般の避難所での生活が困難な人を福祉避難所へつなぐ調整も重要な任務です。
チームの福祉専門職員は、要配慮者に対して安心感を与えるため、「災害派遣福祉チーム」などの名称を記したビブスなどを着用して活動します。現地ではDMATなどの他職種と連携しながら支援にあたり、活動終了時には後続チームや地域の支援機関へ確実に業務を引き継ぎます。
以下の図は、災害発生後にDWATが派遣される流れを示しています。
図3:災害発生後のDWAT派遣フロー
この図のように、発災後は災害福祉支援ネットワーク本部の判断を経て派遣され、在宅避難者の支援や避難所・社会福祉施設などで要配慮者支援にあたります。
DWATの主な活動内容は以下の通りです。
-
- 要配慮者情報の収集とアセスメント
- 避難所や在宅、車中泊をしている被災者を巡回し、高齢者や障がい者、妊産婦といった支援が必要な人々を早期に発見するスクリーニングを行います。その際、家族構成や既往歴、現在の要介護度や服薬状況などを聞き取るアセスメントを実施して、個々のニーズを的確に把握します。
-
- 生活支援と環境整備
- 食事・排泄・入浴などの介助を行います。併せて、生活不活発病やエコノミークラス症候群を予防するための健康体操の実施や、段ボールベッドの設置、バリアフリー化や衛生環境の改善にも取り組みます。
-
- 関係機関との連携
- DWATは状況に応じて多職種と連携し、支援にあたります。対応が困難な福祉ニーズがある場合にはネットワーク本部を通じて都道府県災害対策本部へ対応依頼を行います。また、要配慮者の情報を共有するため、会議の出席や会議開催の呼びかけを行います。
-
- 心理的・社会的支援
- 被災者の不安を軽減し、生活再建を後押しするために、DWATは避難所内に「なんでも福祉相談コーナー」などの窓口を設置したり、訪問を行うなど相談支援を実施します。不安や生活上の困りごとなどの相談に応じ、各種申請手続きの支援を行うほか、避難所内で被災者が孤立しないよう支援します。
DWATの活動は、災害初期の救命支援から、被災後の生活支援・再建支援まで、各フェーズを通じて継続的に展開されるのが特徴です。なお、原則として、社会福祉施設などにおいて、福祉各法によるサービス提供を行う職員の代替としての支援は想定されていないことに、留意が必要です。
DWATの活動実績と課題とは
DWATは、近年の大規模災害において重要な役割を果たしています。2016年の熊本地震での初派遣以降、多くの大規模災害で活動を展開しています。
【表2】DWATの活動実績
| 発生年 | 災害名 | 主な活動地域 | 活動内容・特徴 |
|---|---|---|---|
| 2016年 | 平成28年熊本地震 | 熊本県ほか | DWATとして初めて災害派遣が実施された事例。熊本県・岩手県・京都府のDWATが活動 |
| 2018年 | 平成30年7月豪雨 | 岡山県倉敷市真備町など | 避難所において福祉ニーズの聞き取り、要配慮者リストの作成、相談支援を実施 |
| 2019年 | 令和元年度東日本台風第19号 | 長野県・福島県など | 広域災害に対応し、被災地の避難所支援や福祉ニーズの把握を実施 |
| 2021年 | 熱海市土石流災害 | 静岡県熱海市 | ホテル避難所という特殊な避難環境における生活支援・福祉的支援を実施 |
| 2024年 | 令和6年能登半島地震 | 石川県 | 初めて全47都道府県のDWATが被災地へ派遣 |
千葉県「令和6年能登半島地震におけるDWAT活動 災害福祉支援ネットワーク中央センター」、静岡県社会福祉協議会「社会福祉3月号_0203特集 静岡DWAT令和3年7月伊豆山土石流災害での活動報告」を基にニュートン・コンサルティングが作成
2024年1月に発生した能登半島地震では、全都道府県のDWATチームが初めて一斉に展開した活動を行いました。石川県DWATが1月2日から初動対応を開始し、避難所の巡回、要配慮者支援、社会福祉施設との連携などを実施しました。1月6日から6月30日までの約半年間で、延べ1,573名が石川県内の避難所などで活動しました(※2)。
現場では、ADL(日常生活動作)の低下が懸念される高齢者への福祉用具導入や、保育士による子どものストレス緩和、さらにはDMATなどと連携した複雑な虐待ケースへの介入など、多職種連携による高度な支援が展開されました。
一方で、福祉施設の慢性的な人手不足による派遣継続の難しさや、宿泊拠点の確保、在宅・車中泊避難者への支援の遅れといった課題も浮き彫りとなりました。
これらを踏まえ、2025年7月1日に施行された災害救助法と災害対策基本法の改正により、救助の種類に「福祉サービスの提供」が追加され、災害時において福祉サービスの提供に努めることが定められました。今後は在宅・車中泊避難者など個々の避難状況に応じたきめ細やかな支援や登録員の拡大を通じて、保健・医療・福祉が一体となった、より強固な災害リスクマネジメント体制の構築が期待されます。
(※2)千葉県「令和6年能登半島地震におけるDWAT活動 災害福祉支援ネットワーク中央センター」
各都道府県におけるDWATの導入状況
DWATは全国的に整備が進んでおり、2024年の能登半島地震の時点において、全47都道府県での導入(組成)が完了しています。厚生労働省は「災害福祉支援ネットワーク構築推進等事業」の一環として、平時の訓練・研修を支援しています。主に各都道府県の社会福祉協議会などがDWATの合同養成研修や訓練を実施し、派遣体制の強化を進めています。
2018年に厚生労働省が策定した「災害時の福祉支援体制の整備に向けたガイドライン」を契機に体制整備が加速し、2023年度末時点での登録者数は約10,000名に達しています。一方で、地域によって登録人数に大きな差があり、2024年3月末時点のデータでは、熊本県が715名、山口県が25名と、人口規模だけでなく、過去の被災経験や組織化の進度によって差が生じています(※3)。派遣訓練や応援協定が未整備の自治体もあり、今後は都道府県間の連携強化が求められます。
災害発生時に派遣されるDWAT以外のチームとは
災害現場ではDWAT以外にも、医療や衛生など各分野の専門チームが活動しています。これらは主に厚生労働省の管轄下で整備されており、互いに連携することで包括的な支援体制を築いています。
各チームの正式名称と主な活動領域は以下の通りです。
図4:災害発生時に派遣される医療・健康に関する主なチーム
- 災害派遣医療チーム「DMAT」
- DMAT(Disaster Medical Assistance Team:災害派遣医療チーム)とは、厚生労働省が管轄する医療チームで、災害発生直後の急性期(概ね48時間以内)から活動し、トリアージや救命処置、医療搬送などの初動対応を行います。災害拠点病院などの医療機関に所属する、専門的な研修・訓練を受けた医師、看護師などで編成されます。これに対して、DWATは高齢者や障がい者など「災害時要配慮者」の生活機能の低下や二次被害を防止するために活動する福祉チームです。DWATとDMATの違いは、対象分野と活動時期、目的にあり、それぞれのフェーズに最適な支援を行い、災害医療体制を支えています。
- 災害派遣精神医療チーム「DPAT」
- DPAT(Disaster Psychiatric Assistance Team:災害派遣精神医療チーム)は、自然災害や犯罪事件、航空機・列車事故などの集団災害発生時において、メンタルヘルス支援や心理的応急処置を行う、専門的な研修・訓練を受けた精神科医、看護師などで編成された精神科医療チームです。DPATには、厚生労働省が管轄する日本DPATと、各都道府県が管轄する都道府県DPATがあり、日本DPATは、急性期の精神科医療ニーズに対応するため、発災から概ね48時間以内に被災地で活動を開始し、被災者のメンタルケアを行います。
- 災害時健康危機管理支援チーム「DHEAT」
- DHEAT(Disaster Health Emergency Assistance Team:災害時健康危機管理支援チーム)とは、被災した自治体の本庁や保健所に設置される健康危機管理組織に派遣され、情報の収集・分析や全体調整といった指揮調整機能(マネジメント)を支援するため活動します。専門的な研修・訓練を受けた都道府県や指定都市の職員(医師、保健師、管理栄養士など)によって編成された支援チームで、「防ぎ得た死」や二次的な健康被害を最小化することを目指しています。
- 災害時感染制御支援チーム「DICT」
- DICT(Disaster Infection Control Team:災害時感染制御支援チーム)とは、大規模災害時に避難所などの衛生環境の維持や、集団感染症の制御・抑制を目的として活動する、感染症対策の実務経験者で編成された専門チームです。能登半島地震において初めて本格的に投入され、DMATなどの医療チームや保健師などと連携しながら、感染リスクの高い避難所に対して感染対策の指導を行うなど重要な役割を果たしています。
また、医療・福祉系以外では、国土交通省が創設した、河川や道路、港湾などの復旧支援を担う「TEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)」などが活動しています。
DWATと上記の各チームは「被災地への派遣と専門支援」という共通点を持つ一方、その役割は明確に分かれています。医療や精神ケア、感染症対策が「命を守る支援」であるのに対し、DWATは、専門チームの中でも「生活を支える福祉的ケア」に特化した役割を担っているのが特徴です。
実際の災害現場では、DMATが救命措置を行い、その後の避難生活においてDWATが要配慮者のADL低下を防ぎ、保健師やDICTが衛生環境を管理するといった「医療・福祉・衛生の連携」が不可欠です。
DWATは、災害医療や精神支援を担当するDMAT・DPATなどと連携しながら、避難所や在宅避難者の生活を支えます。
BCP担当者にとって、これら多様なチームの役割把握は、従業員や住民の命と生活を守る体制構築に欠かせません。災害時、企業は地域社会を支える「共助」の拠点となり得ます。医療だけでなく福祉の視点も取り入れた多角的な備えを取り入れることが、地域の防災力強化につながります。