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対口支援(応急対策職員派遣制度)

掲載:2024年02月02日

用語集

「対口(たいこう)支援」とは、大規模災害で被災した自治体と支援側の自治体がパートナーとなり、復興における各種支援をするための手法です。2008年に中国の四川大地震で用いられた復興促進策がもとになっており、中国語で「対口」はペアを意味しています。一対一で向き合えるため、被災地のニーズに応じた支援が迅速に行えるという特徴があります。

大規模な地震や津波、台風などの災害が発生したとき、被災自治体を支える広域連携の取り組みが重要になります。なかでも被災自治体の機能補完という点で大きな役割を果たしているのが、東日本大震災で初めて本格的に導入された、対口支援です。

         

中国の復興促進策を参考、2018年に制度化

中国では1970年代末から政府により行われていた対口支援ですが、日本で注目されるようになったのは2008年の四川大地震です。中国政府は復興にあたり、被災した市町村と、被災せず経済発展の進んだ市や省などをペアにして支援の責任を負わせることで、大きな成果を出しました。

日本における対口支援の本格的な実施は2011年、東日本大震災です。関西広域連合は阪神・淡路大震災の際に全国から派遣された職員を活用しきれなかったことから対口支援を提案し、東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島の3県を割り振り、担当制にして支援しました。

2018年に対口支援は国により、「応急対策職員派遣制度」として制度化されています。大規模災害発生時には総務省が主管となり、支援にあたる都道府県または政令指定都市を、原則として一対一で被災市区町村に割り当てることとなっています。同年に発災した北海道胆振東部地震、2019年の房総半島台風、2020年の熊本豪雨のときなどにも実施され、割り当てられた自治体は避難所の運営や罹災証明書の交付など災害対応業務を支援しています。

対口支援のメリットは、迅速な初動対応と一貫支援

2024年元旦に発生し、最大震度7を観測した能登半島地震では、現在も安否不明者の捜索や避難所の運営、インフラ復旧作業が続いています。今回の災害でも対口支援を通じ、1月4日には浜松市が珠洲市、1月5日には京都市が七尾市、大阪市や堺市が輪島市など、それぞれが応援職員を派遣しています。その後も発災から数日で全国の自治体から職員が派遣され、被災地での支援に従事しており、従来にはない迅速な初動対応となっています。

被災自治体の業務は平時の数十倍に膨れ上がるとされています。現地の職員自身も被災しているなかで、避難所の開設や家屋の被害調査、罹災証明書の交付といった発災直後の業務から、仮設住宅の建設や復興計画の策定など中長期的な業務も回していかなければなりません。

対口支援では被災自治体と支援自治体がペアを組むことで、初動を早くするだけでなく、どんな復旧・復興のステージにあるかを見極めて、ニーズに合わせたきめ細やかな支援をすることができます。また、ペアとなった自治体が発災直後から復興まで一貫した支援ができるというメリットもあります。なお、問題点として、過去の災害では、被災自治体の人的リソースがあまりにも足りず、応援職員の適材適所な人材配置を行う調整役の不足などが挙げられています。

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