南海トラフ地震臨時情報
掲載:2023年11月10日
改訂:2024年08月15日
用語集
南海トラフ沿いで異常現象が観測され、巨大地震が起きる可能性が平常時より高まると、気象庁から発表されるのが「南海トラフ地震臨時情報(以下、臨時情報)」です。地震が発生した後の避難では津波から逃げきれない地域では、事前に避難することなどが求められます。東日本大震災並みの大規模な地震、マグニチュード8~9クラスが予想されているのが南海トラフ地震です。被害を少なくするために、臨時情報の種類や必要な防災対応について、日頃からよく理解しておきましょう。
※2024年8月8日、九州・日向灘を震源とする地震により、気象庁は2019年に運用を始めた「南海トラフ地震臨時情報」を初めて発表しました。南海トラフ地震臨時情報「調査中」を発表したのち、気象庁の専門家会合での評価を経て南海トラフ地震臨時情報「巨大地震注意」へと切り替えました。発災後、1週間経過し、通常と異なる地殻変動等が見られないことから、「巨大地震注意」呼びかけ終了となりました。(2024年8月15日現在)
南海トラフ地震と被害想定
南海トラフ地震は駿河湾から日向灘沖を震源域とする地震で、これまで100~150年の周期で発生してきました。今後30年以内に発生する確率は70~80%、その規模はマグニチュード8~9クラスと予想されています。(東日本大震災はマグニチュード9.0)
国や各自治体からはこの大規模地震に関連する甚大な被害想定が発表されており、なかでも津波による死者は国の被害想定(2019年6月公表)で、最大15万4000人にものぼります。(東日本大震災は約1万6000人)しかし、津波情報の伝達や避難の呼びかけが想定よりも効果的に行われ、迅速な避難が実現すれば、約7割の被害が軽減できるとも推計されています。
臨時情報のキーワードと付される条件
臨時情報は東日本大震災を予知できなかったことなどが教訓となり、2017年11月に導入されました。現在の科学技術では予知は困難なので、地震の発生確率が高まったことを伝えて防災対応につなげるのが臨時情報です。
1944年の昭和東南海地震の2年後に昭和南海地震が起きた事例などから、想定震源域内で巨大地震や地殻変動など異常現象が観測された場合に発表され、後発地震や津波に備えます。2019年5月に現在の「南海トラフ地震臨時情報」という名称になり、どんな防災対応をとるべきか伝わりやすいように「巨大地震警戒」や「巨大地震注意」など、4種類のキーワードを付けて発表されることになりました。
各キーワードと付される条件は以下のとおりです。
いつ発表され、どんな防災対応が必要か
南海トラフ地震の想定震源域内またはその周辺でマグニチュード6.8以上の地震などの異常な現象を観測した後、5~30分後に「南海トラフ地震臨時情報(調査中)」が発表されます。次に専門家による評価検討会の調査結果を受けて、該当するキーワードを付した臨時情報が出されます。
【臨時情報発表までのフロー】
「巨大地震警戒」の場合、国のガイドラインによると、地震発生後では明らかに津波避難が完了できない地域、事前避難対象地域の住民は1週間の事前避難といった防災対応が示されています。事前避難対象地域は市町村によって事前に設定されますので、対象地域に住んでいる場合は浸水想定区域外の避難所や知人宅といった避難先を確認しておくことが大切です。もうひとつ覚えておきたいキーワードが「巨大地震注意」です。プレートの境界や想定震源域の周辺でマグニチュード7.0以上の地震(詳細は上図)などが確認されると発表されるため、日頃からの備えを再確認し、必要に応じて自主的に避難することが必要です。また、同じ「巨大地震注意」でも“ゆっくりすべり”が観測された場合は、避難場所や家具の固定を確かめるなど、日頃からの備えの再確認という防災対応が求められます。
不確実性のある情報、注意することは
臨時情報は本格導入の時期とコロナ禍が重なったこともあり、周知が不十分だとされています。南海トラフ地震の想定震源域にある高知県でも、臨時情報を「知っている」と意識調査に回答したのは全体の約2割にとどまっています(2022年)。
さらに臨時情報は不確実なものであり、発表されても地震が起きずに空振りになったり、事前避難の期間が明けてから巨大地震が発生するという可能性もあります。地震による被害を軽減するには大前提として、個人であれば避難場所の確認や家具の固定、企業であればBCP策定や訓練といった普段からの備えが大切になります。
参考文献
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