緊急時避難場所
掲載:2013年05月16日
執筆者:エグゼクティブコンサルタント 伊藤 隆
用語集
災害発生への備えを検討する際先ず考えるのは最寄りの緊急時避難場所ですが、一口に緊急時避難場所といっても、区市町村の防災ページを見ますといろいろな呼び名、説明があり混乱することがあります。それらをその目的・用途で整理してみると、幾つかの例外を除いて以下の四つに集約できます。
1.避難所(地域防災拠点)
2.福祉避難所
3.一時集合場所
4.広域避難場所
先ずはそれらの一般的な目的・用途について説明します。
避難所(地域防災拠点)
地震や水害などの災害により住居が倒壊・焼失するなどの被害を受けた住民の方々を、一定期間受け入れ、宿泊、給食などを提供するための施設のことです。具体的には、区市町村により小中学校や公民館などの公共施設が指定されており、一次避難所と呼ばれることもあります。
また避難所は地域防災拠点としての機能を持つ場合が多く、その場合は以下のような役割を持ちます。
また避難所は地域防災拠点としての機能を持つ場合が多く、その場合は以下のような役割を持ちます。
- 地元住民の安否確認等の情報の提供
- 避難者の把握・避難者名簿の作成
- 炊き出しや、ろ水機操作等の給食・給水活動
- 防災資機材を使った救助・救出活動拠点
- 医療相談・応急手当・簡単な処置対応
- 備蓄物資・義援物資の配布
福祉避難所
避難所での生活が困難で、介護などのサービスを必要とする高齢者や障害者の一時的な生活場所の事を言います。具体的には、地域の介護・福祉センターなどが指定されており、二次避難所と呼ばれる場合もあります。東京都では対象者を「災害時要援護者」と定義付け、区市町村に対し対象者の事前把握、平常時お呼び発災時の支援体制整を指導しています。
いっとき集合場所
地震などの災害が発生した際、住民が緊急避難場所へ避難する前に一時的に集合して様子を見たり、避難のために集団を形成したりする場所のことです。避難は集団を作って移動する方法が有効なため、一般的には町会、自治会単位で一つ或いは複数ヶ所の一時集合場所を選定しています。具体的には、集合した人々の安全が確保されるスペースを有する、地域の児童公園や広場等が指定されています。一時集合場所は東京都区内や大阪市などの大都市圏で定められることが多く、それ以外では直接避難所への避難を指示しています。また一時集合場所の設定・運用は、町会や自治会に任される場合もあり、区・市などの防災ページに記載されていないことがありますので注意が必要です。
広域避難場所
大地震などにより発生した火災が延焼拡大し、地域全体が危険になったときに避難する場所のことです。その大きさは火災の輻射熱から身体を守るために、概ね10ヘクタール(東京ドーム約2個分)以上が必要だとされています。具体的には大規模な公園や団地、大学などが指定されており、通常町会・自治会などの単位で地区割当があるのが一般的です。
以下に東京都及び首都圏の主要な区・市と大阪市の事例を一覧にしておきますが、区市町村によって緊急時避難場所それぞれの目的・用途、提供可能サービスが異なりますので、必ず最寄り自治体が提供する情報を確認することをお勧めします。
以下に東京都及び首都圏の主要な区・市と大阪市の事例を一覧にしておきますが、区市町村によって緊急時避難場所それぞれの目的・用途、提供可能サービスが異なりますので、必ず最寄り自治体が提供する情報を確認することをお勧めします。
避難所 | 一時避難場所 | (広域)避難場所 | 福祉避難場所 | |
---|---|---|---|---|
東京都 | 避難所 | 一時集合場所 | (広域)避難場所 | 二次避難所 |
千代田区 | 避難所 | ―(区内全域が「地区内残留地区」に指定) | 二次避難所 | |
中央区 | 防災拠点 | 一時集合場所 | 広域避難場所 | 福祉避難所 |
※一部「地区内残留地区」に指定 | ||||
台東区 | 避難所 | 一時集合場所 | 広域避難場所 | ― |
※一部「地区内残留地区」に指定 | ||||
足立区 | 一時避難所 | 一時集合場所 | 広域避難場所 | 二次避難所 |
練馬区 | 避難拠点 | ― | 広域避難場所 | ― |
立川市 | 一時避難所 | ― | 広域避難場所 | 福祉避難所 |
横浜市 | 地域防災拠点 | ― | 広域避難場所 | 特別避難場所 |
さいたま市 | 避難場所 (指定避難所) |
一時集合場所 | 広域避難場所 | 福祉避難所 |
大阪市 | 収容避難所 | 一時避難所 | 広域避難場所 | 福祉避難所 |
参考情報
① 区内残留地区:
火災が発生した際、周囲に延焼しにくいと想定される地域が指定されています。東京都によって定められており、都内中心部の千代田区全域、中央区、港区、台東区の一部などが指定されています。これらの地域では原則自宅やビルの内部に留まっていただくため、一時集合場所や広域避難場所などは指定されていません。
② (帰宅困難者用)一時滞在施設、災害時帰宅支援ステーション:
従来東京都内に拠点を置く企業で働く社員の方々は発災時社内に留まることが原則とされ、特別な支援施設の整備は遅れていました。しかし、東日本大震災の際500万人以上の帰宅困難者が発生したことにより、東京都は「東京都帰宅困難者対策条例」を制定し、帰宅困難者のための一時滞在施設、災害時帰宅支援ステーションの整備を区市町村に指示しました。