災害対策基本法とは?
掲載:2012年12月18日
改訂:2024年08月29日
コラム
災害対策基本法とは、国土並びに国民の生命、身体及び財産を災害から保護することを目的として、1959年紀伊半島に上陸した伊勢湾台風を契機に1961年に制定された法律です。
災害対策基本法の概要
この目的を達成するために、災害対策基本法では、以下の事項について規定しています。
- 防災に関する責務の明確化
- 防災に関する組織
- 防災計画
- 防災対策の推進
- 財政金融措置
- 災害緊急事態
条文には、国の責務、都道府県の責務、市町村の責務、および住民等の責務が記載されており、適用対象が広い一般法となっています。特定の職業に就く人や、特定の商業活動を対象とした法律ではなく、広く一般を対象とした法律です。
制定の背景
災害対策基本法は、1959年に犠牲者5,098人(死者4,697人・行方不明者401人)、負傷者38,921人の被害をもたらした伊勢湾台風を機に、1961年に制定された法律です。災害対策基本法制定以前にも、地方の災害復旧事業費を国庫で負担するための法律がありましたが、以下の点が課題となっていました。
- 制定に時間がかかる
- 措置内容に不公平が生じる
- 立法されるまで措置が不透明(1952年からの10年間に132の特別法が制定)
これらの問題を解決するために、それまでの災害関係法律を残しつつ、かつ、有機的に関連付け、調整して策定されたのが災害対策基本法になります。
他の防災関連法令との関連
国民の生命、身体及び財産を保護するための法律としては、他に「国民保護法」等がありますが、国民保護法は他国からの武力攻撃等による侵略などを対象としています。一方、災害対策基本法は、その名の通り「災害」から国土並びに国民の生命、身体及び財産を保護することを目的としており、国民保護法とは守備範囲が明確に分かれています。
この表からも分かるように、災害対策基本法は、予防・応急・復旧・復興といった、災害に対する広範囲の局面を守備範囲としています。一方、ニュースを聞いていると「・・・豪雨災害が激甚災害として指定された」といったフレーズを耳にすることがありますが、この表にあるように「激甚災害法」は、復旧・復興を守備範囲としているため、発災後に耳にすることが多くなります。
日常生活との関わり
「災害対策基本法」という名称から、日常生活とはあまり関わりがないと思われるかもしれませんが、身近なところでの関わりを以下に挙げました。
(1)住民等の責務
災害対策基本法は、災害予防に関しても規定しています。例えば、第七条では、"住民等の責務"が規定されており、住民等は国や自治体が実施する防災に関する施策に協力することが求められています。
(2)避難指示
災害がまさに発生しようとしている時、"避難指示"が自治体から発せられることがありますが、これも災害対策基本法に基づき行われるものです。
(3)地域防災計画との関係
各自治体では、災害対策基本法に基づき、地域防災計画が策定されており、それに基づいて避難所・避難場所等が指定されています。2021年の災害対策基本法の改正により、個別避難計画の作成が努力義務化され、高齢者や障がい者などの避難行動要支援者への対応が一層強化されました。この改正により、地域防災計画にも新たな取り組みが求められています。
(4)震災発生時の交通規制
東京では、震災発生時に交通規制(第一次交通規制および第二次交通規制)が実施されます。第一次交通規制は、人命救助・救出、消火活動を迅速に行うために実施されるもので、これは道路交通法に基づいて行われます。その後、復旧作業を円滑に進めるために第二次交通規制が実施されますが、これは災害対策基本法に基づいて実施されます。第二次交通規制で指定される緊急交通路を通行するために発行される緊急通行車両確認標章も、災害対策基本法に基づいて発行されます。
おわりに
「災害対策基本法」は、災害から国土、国民の生命・財産を守るための法律です。「被災したら法律に基づき国が守ってくれる」という点も災害対策基本法が持つ一面だと思います。被災した場合、個人の努力、地域社会の取り組みだけではどうしようもないことは多々あります。しかし、この法律でも規定されているように、住民等は常日頃から防災に努める必要があります。家庭内での初動体制の再確認、防災訓練等への積極的な参加などを通して、減災のための取り組みをできるところから始めてみることも必要かと思います。