大地震発生時に東京都内で実施される交通規制について2012年3月に警視庁より新しいルールが発表、施行されました。
大地震発生時の新ルール
大地震(震度6弱以上)発生時における、東京都内の新しい交通ルールは次のとおりです。
- 大地震発生後は新たに自動車を乗り出さない
- 運転中に大地震が発生したら
→高速道路を通行中の場合は付近の出口から降りる
→環状7号線内側の道路を通行中の場合は速やかに道路外の場所か、環状7号線外に移動する
→緊急交通路(参照:表2「緊急交通路」)を通行中の場合は、速やかに道路外の場所か、その他の道路に移動する - 目的地に到着した後は移動しない
あわせて、震度や被害状況に応じて、次の3つのいずれかの措置がとられます。
(1)震度6弱以上の地震が発生した場合
第一次交通規制(地震発生直後) |
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第二次交通規制(被害状況確認後) |
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表1:緊急自動車専用路
国道 | 国道4号(日光街道 他) | 国道17号(中山道・白山通り 他) |
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国道20号(甲州街道 他) | 国道246号(青山通り・玉川通り) | |
都道 | 目白通り | 外堀通り |
高速道路 | 高速自動車国道・首都高速道路 |
表2:緊急交通路
第一京浜 | 蔵前橋通り | 芋窪街道 | 滝山街道 |
第二京浜 | 京葉道路 | 五日市街道 | 北野街道 |
中原街道 | 井の頭通り | 中央南北線 | 川崎街道 |
目黒通り | 三鷹通り | 八王子武蔵村山線 | 多摩ニュータウン通り |
青梅・新青梅街道 | 東八道路 | 三ツ木八王子線 | 鎌倉街道 |
川越街道 | 小金井街道 | 新奥多摩街道 | 町田街道 |
北本通り | 志木街道 | 小作北通り | 大和バイパス |
水戸街道 | 府中街道 | 吉野街道 |
(2)震度5強の地震が発生した場合
- 環状7号線内側への一般車両の通行禁止
- 環状8号線内側への一般車両の流入抑制
(3)都内に甚大な被害が発生した場合
被災状況により広範囲な車両の交通禁止
新しいルールで変更されたポイント
新旧のルールを比較すると大きく下記3点について変更されたことが分かります。総じて災害発生直後に、より柔軟な対応が可能になったと言えます。
(1)地震の大きさや被害の程度に応じた規制が設けられた
これまでは「震度6弱以上で規制を行う」というルールでしたが、「震度6弱以上」に満たない場合でも「震度5強の地震が発生した場合」や「都内に甚大な被害が発生した場合」でも交通規制が実施されるようになりました。
(2)規制が段階的に実施されるようになった
旧ルールでは大地震(震度6弱以上)発生後、各道路の規制が一斉に実施される想定でしたが、新ルールでは「第一次交通規制」、「第二次交通規制」の二段階に分けて実施されるようになりました。規制対象となる緊急自動車専用路、緊急交通路は先に掲載したとおりです。より詳細な情報については警視庁のホームページで確認することができています。
ちなみに、電車、車が使用できない場合、自転車での移動を検討されている方も多いと思いますが、自転車は緊急交通路以外では通行可とされています。
(3)地震発生時に運転中の場合、都心から郊外へ向けての移動が可能になった
旧ルールでは地震発生直後に下記の規制が適用されておりました。
- 多摩川、国道246号(玉川通り)及び環状7号線を結んだ内側の区域は、全面車両通行禁止
- 緊急交通路における車両の通行禁止
- 国道16号から東側の都県境では、車両の流入・流出とも通行禁止となり、国道16号から西側では都心方向への車両が進入禁止
例えば、旧ルールでは「環状7号線内を運転中に被災した場合、車はその場に止めて移動させない」というルールでしたが、新ルールでは「周囲の状況が安全であり、やむを得ない事情があれば、緊急交通路を使用しない経路を利用すること」というルールになりました。これにより都心から郊外への移動が可能になりました。
その他にも、国道16号より東側での都県境の車の流出入は禁止となっていましたが、新ルールになり、禁止が解除されています。


図:交通規制図の新旧比較
今回の新ルールが企業へもたらすインパクト
最後に、大地震発生時の交通規制(新ルール)に関して、宅配業者やタクシー会社、あるいは営業車両を多く配備しているような会社など、車両を運転する機会が多い企業において、平時に行うべき取り組みとしては以下の3点が考えられます。
- 交通規制のルールを社内に周知する
- 携帯用BCPに交通規制のルールを記載する
- 災害発生時の情報収集手段を確認する
まず、地震発生時に交通規制が実施されること、その規制内容(例:規制対象となる道路はどこか)、望ましい行動ルール(例:どのような条件に当てはまる場合は車両を移動させるのか)を教育・訓練を通して社内に周知する必要があります。また、防災手帳のような携帯用のBCP文書を配布しているのであれば、災害発生時に参照できるよう、そちらに規制の概要を記載することも有効な備えといえるでしょう。
そして、最後に、災害発生時に最新の道路情報を取得する手段についても平時の教育・訓練を通して理解を深めること必要です。なぜなら、実際の災害発生時には被害状況に応じて規制の適用範囲が変更されることは十分に予想されるからです。