地域防災計画
掲載:2011年08月18日
改訂:2024年11月01日
執筆者:執行役員 兼 プリンシパルコンサルタント 内海 良
改訂者:ニュートン・コンサルティング 編集部
用語集
地域防災計画とは、各都道府県および市町村などの地方自治体がそれぞれの地域特性を考慮して作成する防災計画のことです。災害時に住民の生命、身体および財産を保護することを目的として、行政が住民にどのような社会サービスを提供するのか、についての計画が記述されています。
地域特性を考慮し、国の防災基本計画と連携した防災計画
地域防災計画の策定については、災害対策基本法(第40条)にて、国が策定する防災基本計画に準じて作成することが規定されています。国家レベルで策定が必要な防災基本計画を最上位の計画とすれば、指定行政機関および指定公共機関が策定する「防災業務計画」は中位、地方自治体が策定する「地域防災計画」は行政機関が策定する下位の防災計画と言えます。
災害の種類毎に作成
地域防災計画の内容は、震災対策編や風水害対策編など、災害の種類毎に作成されることが一般的であり、それぞれの計画は災害発生後の時間経過に合わせて、災害予防、災害応急対策、災害復旧・復興の3つの対応段階から構成されます。
例えば東京都では、「震災編」、「風水害編」、「火山編」、「大規模事故編」、「原子力災害編」が作成されており、例えば「震災編」は、以下のような内容となっています。
# | 構成 | 内容 |
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1 | 東京都の防災力の高度化に向けて |
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2 | 施策ごとの具体的計画 (予防・応急・復旧計画) |
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3 | 災害復興計画 |
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4 | 南海トラフ地震等防災対策 |
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平成25年には災害対策基本法の改正が行われ、地区居住者などが市町村と連携しながら、「自助・共助」によって地域の防災力を高めることを目的とした「地区防災計画」の制度が新たに施行されました。令和5年4月1日時点で、43都道府県216市区町村の2,428地区の地区防災計画が地域防災計画に定められ、さらに46都道府県389市区町村の6,510地区で地区防災計画の策定に向けた活動が行われています。
見直し・改訂については都度実施
各自治体の防災会議が毎年見直しの検討を行い、必要があると認めるときに計画を修正します。
大規模な見直しとしては過去、阪神大震災を契機に全国規模で見直しが行われ、翌年の平成17年4月1日までに、都道府県においては全団体が見直しを完了しています。また、東日本大震災後にも、地震・津波対策が強化されました。
東京都では、令和5年に「東京都地域防災計画 震災編」の改定が行われました。大幅な修正は平成24年11月から約10年ぶりとなります。主な修正のポイントは以下の3点です。
- 10年間の変化等を踏まえた課題と解決に向けた基本認識
- 3つの視点と分野横断的視点に基づく減災目標の設定
- 減災目標とその達成に向けた指標及び主な取組
令和4年に公表された首都直下型地震の新たな被害想定を踏まえ、自助・共助の備えを促進すること、応急対応力を一層強化すること、被災者の生活の早期復旧を目指すことが新たな方針として取り決められました。
2で示される「3つの視点」とは、「家庭や地域における防災・減災対策の推進」、「都民の生命と首都機能を守る応急体制の強化」、「すべての被災者の安全で質の高い生活環境と早期の日常生活の回復」のことをいいます。こうした視点に基づき、「2030年度までに、首都直下地震等による人的・物的被害を概ね半減」するという減災目標の達成を目指しています。
地域防災計画は各地方自治体のウェブサイトで閲覧が可能ですが、平成17年7月より各都道府県の地域防災計画をデータベース化した「地域防災計画データベース」の運用も開始されています。詳しくは以下のリンクを参照ください。
企業のリスク管理には必須の情報源
計画のなかには過去に発生した災害や被害想定がまとめられており、リスク管理やBCPを策定するうえで、確認すべき内容が数多く含まれています。自社の地域では過去どのような災害があり、今後災害の発生が想定されているのか、その際の行政の対応はどうなっているのか、また基本的な項目として近くの避難場所や医療機関の場所など有益な情報が盛り込まれており、一度確認されることを強くお勧めいたします。