内閣府は13日、令和7年版の防災白書を公表しました。巻頭に掲載される特集は今年も能登半島地震を取り上げています。半島という特性のある地域で2024年元日に起きた災害は、過疎化や高齢化なども影響して対応が非常に困難な災害であったと整理した上で、近い将来の発生が懸念される南海トラフ巨大地震や首都直下地震などを見据えて「それらの事情を言い訳にすることはできない」と、防災庁の設置などで本気の事前防災に徹底的に取り組む姿勢が示されています。
白書によると、能登半島地震でのプッシュ型支援は熊本地震の約3倍の期間(82日)において実施され、支援額も熊本地震のほぼ倍の額となりました。支援物資の第1便は発災翌日の2日には石川県の広域物資輸送拠点に到着しました。坂井学防災相も13日の会見で過去最大規模のプッシュ型支援だったと言及したと紹介されています。
プッシュ型支援はこれまでの災害を教訓とした対応です。能登半島地震における支援物資は食料や乳児用粉ミルク、毛布、携帯トイレといったもののほかに、支援物資では初となる暖房器具の燃料や、防寒着、弾性ストッキング、簡易洗濯キットなども供給しました。一方で、品目によっては一度に全員に行き渡る量を確保できず、公平性の観点から物資を配布できなかったという事例も紹介されています。
内閣府はプッシュ型支援をさらに強化する方針です。備蓄物資の分散備蓄に着手し、全国で8つの地域において段ボールベッドやパーティション、簡易トイレ、温かい食事を提供するための資機材などを購入しています。
能登半島地震の課題と教訓を踏まえて法改正が行われたことも記されています。災害対策基本法等の一部を改正する法律が5月28日に成立しました。
改正法によって例えば、被災者支援で自治体などと連携するNPO・ボランティア団体の事前登録制度が創設されたほか、物資の備蓄状況を地方公共団体が公表する義務が課されるようになりました。
令和8年度中の防災庁設置に向けて令和7年度は内閣府防災担当の体制を強化していることも記されています。予算は倍増の約146億円、人員についても定員を前年度の2倍の220人に拡充されました。避難生活環境の抜本的改善、官民連携による人材育成の推進、防災DXの推進に取り組むとされています。
また、今年4月から運用を開始している新物資システム「B-PLo(Busshi Procurement and Logistics support system)」に関する研修や訓練を行ったり、新総合防災情報システム(SOBO-WEB)を活用した机上演習を推進したりするとしています。「B-PLo」は令和2年度から運用している「物資調達・輸送調整等支援システム」を改良したシステムです。2次元コードも採用し、直感的に操作できるようになりました。
白書はこのほか、防災に関する施策の取り組み状況と令和6年度に発生した主な災害、令和7年度施策の推進計画などについて、本編3部構成でまとめられています。