内閣府は6月25日、「南海トラフ地震臨時情報発表に伴う防災対応事例集」を公表しました。昨年8月8日の「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」発表を受けて地方公共団体や事業者などがどのような防災対応したのか、また、今後の改善策をどのように考えているのかといったことなどがまとめられています。
南海トラフ地震臨時情報は昨年8月8日、日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生したことを受け、2019年の運用開始から初めて発表されました。そのため地方公共団体や事業者、国民にもどのように対応すべきか戸惑いがありました。このことを教訓に防災計画や臨時情報発表時の防災対応を充実させ、かつ具体化していくために事例集は作成されました。
収録されている事例は、11の地方公共団体と1団体、5つの事業者です。地方公共団体では、阿波おどりのイベントが計画されていた徳島市や、花火大会を予定していた香川県、海水浴場のある静岡県下田市などの当時の対応および今後の方針が記載されています。
徳島市で開催される阿波おどりは、毎年8月11日から15日に開催され、5日間の人出は100万人を超える同市最大の夏のイベントです。徳島市では南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表された場合でも、「中止の要請は行わない」こととしていました。
開催3日前に南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表されたことで、徳島市は開催地域の時間あたりの最大人数(約7万人)を約40分で避難させることを目標とした津波避難計画を作成し、イベントの実行委員会と共有しました。警戒態勢を強化し、避難計画を徹底するとした上で開催。避難マップを会場内に貼り付けたり、各メディアに広報を依頼したり、会場スタッフなどに誘導要領を徹底しました。緊急避難場所には非常用電源や誘導灯も設置しました。
徳島市ではもしも開催直前に南海トラフ臨時情報が発表されていたら十分な対応はできなかったと考えられるとし、引き続き必要な避難予行などを行うとしています。
事業者の事例には、品薄や混乱を防ぐため、販売制限や出荷調整の実施をした小売事業者の取り組みが掲載されています。南海トラフ地震臨時情報の発表によって消費者の購買行動が高まり、買い占めなどが懸念されました。
事例にある小売事業者では、これまでの災害発生時における教訓から、災害発生時の対応計画やマニュアルを作成していました。店舗商品が枯渇しないよう、店舗別に計画的に割り振った納品をする出荷調整や顧客向けには販売制限を行うことを決めていました。
南海トラフ臨時情報発表後は、商品の格納拠点や輸送拠点も含めた出荷調整を行うとともに、店舗においても販売制限を実施しました。出荷調整の対象となったものは、水2リットル、カップめん、パックごはん、お餅でした。販売制限では、水2リットルは1家族2ケースまで、500ミリリットルは1家族12本までというものでした。この取り組みは奏功し、各店舗において大きな混乱はなく、8月15日の呼びかけ終了を迎えることができたと記されています。
消費者の買い占めなどは日頃から家庭でローリングストックなどの備蓄を実践していれば防ぐことができます。小売業界の主要各社(※)は2025年1月からローリングストックを啓発するキャンペーンを開始しました。
※セイコーマート、セブン-イレブン、デイリーヤマザキ、ファミリーマート、ポプラ、ミニストップ、ローソンの7社