津波
掲載:2011年06月07日
用語集
津波は、大規模な水の移動によって引き起こされる連続した高波のうち、気象学的要因(例:台風や竜巻など)以外の原因により発生した現象を指します。「気象学的要因以外」には、たとえば地震や岩石の崩落、海底火山の噴火などといった事象が挙げられます。
地震による津波発生のメカニズム
前出のとおり、津波には、崩落や海底火山など様々な原因が考えられますが、最もメジャーな発生要因は地震です。地震による津波は、主に断層(地層や岩盤に力が加わって割れ、割れた面に沿ってずれて食い違いができること)による隆起・沈降が海底に発生し、その地形変化が海面に伝播することによって引き起こされます。
したがって、こうした津波の大きさは人や建物にもたらされる地震の揺れ(震度)の大きさではなく、海底の断層の隆起・沈降の大きさに、比例することになります。つまり、海底を震源地とする大きな地震が発生したとしても、そこで隆起・沈降が起きなければ津波自体は発生しません。
連続した高波=津波とは限らない
「大規模な水の移動によって引き起こされる連続した高波」には津波のほかに、その発生原因により、以下のようなものがあります。
こうした中にあって、とりわけ津波が注目されるのは、それがもたらす被害が、比較的大きいからです。津波は、言わば「水の塊」が高速で陸地へ押し寄せてくるようなものであり、この「水の塊」が持つ運動エネルギーは、想像を超える大きさです。
現象名 | 原因 |
---|---|
津波 | 海底の隆起・沈降により発生 |
風浪 | 通常の風により発生 |
潮汐 | 月や太陽の重力によって発生(いわゆる潮の満ち引き) |
高潮 | 台風の時に気圧の低下と風によって発生(水位の上昇) |
こうした中にあって、とりわけ津波が注目されるのは、それがもたらす被害が、比較的大きいからです。津波は、言わば「水の塊」が高速で陸地へ押し寄せてくるようなものであり、この「水の塊」が持つ運動エネルギーは、想像を超える大きさです。
津波伝播のメカニズム
2011年東北地方太平洋沖地震で引き起こされた津波の各地への予想到達時間。アメリカ海洋大気圏局 NOAAによる試算。(出典:Wikipedia)
伝播の速度は、浅い海域では海底との摩擦による抵抗が強く働くため、水深が浅いほど遅くなります。外洋で水深1,000メートルの場合、時速約360キロメートル、水深4,000メートルでは時速約720キロメートルとなります。湾内など浅い海の場合は、津波の速度が落ちると同時に、その高さも速度に影響を与えるようになります。水深75メートルで波の高さが15メートルとした場合、津波の速度は電車よりも速く、時速約108キロメートルとなります。
地形との関係
津波の高さは湾の地形に大きな影響を受けます。湾口が広く奥にいくほど狭くなっている湾(大船渡湾などが該当)に入ってきた場合は、幅が狭くなる分、逆に波の高さが増すことになります。逆に湾口が狭く湾内が拡がっているような場合(東京湾などが該当)は波の高さは低減されます。
先に述べたように、水深が浅くなると津波の速度は遅くなります。そのため沿岸に近づくに従い水深が浅くなっていくと、津波の先頭部分は減速していきます。ところが津波の後続部分は高速のままなので、後続部分が先頭部分に近づいて圧縮される形となり波の高さが増す結果となります。
大船渡湾(Googleマップから) |
東京湾(Googleマップから)
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先に述べたように、水深が浅くなると津波の速度は遅くなります。そのため沿岸に近づくに従い水深が浅くなっていくと、津波の先頭部分は減速していきます。ところが津波の後続部分は高速のままなので、後続部分が先頭部分に近づいて圧縮される形となり波の高さが増す結果となります。
歴史上の大きな津波
津波は、どんな高さに到達したかの痕跡が残らないため、海上での津波の正確な波の高さを測ることは困難です。そこで過去に発生した大津波の高さは、波の到達高度(地上に押し寄せた津波が海抜何メートルの地点まで達したか)により評価されたものが大部分です。
以下大きな津波の例を挙げます。
以下大きな津波の例を挙げます。
発生年 | 場所 | 到達高度 | 原因 |
---|---|---|---|
1958年 | 米国のアラスカ州・リツヤ湾 | 520メートル | 岩石の崩落による |
1896年 | 日本の岩手県・綾里湾(日本) | 38.2メートル | 明治三陸沖地震 |
1933年 | 日本の岩手県大船渡市三陸町 | 28.7メートル | 昭和三陸沖地震 |
2011年 | 日本の岩手・重茂半島 | 38.9メートル | 東日本大震災 |
津波に関する気象庁からの情報
地震発生後、安全確保の観点から、気象庁は津波が発生する可能性のある場合には、その旨を速やかに公表することになっています。公表にあたっては津波の高さに応じて以下に示す5段階に分けた用語が使用されます。
名称 | 発令される状況 | 内容 |
---|---|---|
大津波警報 | 高いところで3m以上の津波が予測される場合 | 予想される津波の高さ |
津波警報 | 高いところで2m程度の津波が予測される場合 | 予想される津波の高さ |
津波注意報 | 高いところで0.5m程度の津波が予測される場合 | 予想される津波の高さ |
津波予報 | 地震後に津波による災害の恐れがない(高いところでも0.2m未満の海面変動)の場合 | 災害の恐れがないこと |
津波情報 | 大津波警報、津波警報・注意報を発表した場合 | 津波の到達予想時刻や予想される津波の高さなど |
対策
津波については、下記のような対策が考えられます。2011年の東日本大震災の被害状況を見ると、単独の対策よりも複数の対策を組み合わせ有効性や費用対効果を高めることが重要と考えられます。
対策 | 問題点 |
---|---|
防潮堤の設置 | コストが高く、想定より大規模な津波の場合には効果が薄い |
海岸線や河口付近を避け、高台などに建物を設ける | 漁業関係者などは生活上の利便が妨げられる場合がある |
注意報や警報などに基づく迅速な避難 | 日常の訓練と早期の情報受信が必要。また避難時には不動産などは当然ながら放棄する必要がある |