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津波

掲載:2011年06月07日

改訂:2024年11月22日

用語集

津波とは、大規模な地震によって震源に近い海底に上下方向のずれ(断層)が現れ、それにより生じる海水面の盛り上がりや落ち込みによって起こる波のことをいいます。海底で発生する地震によって起きることが一般的ですが、海底火山の噴火や、海岸付近の火山による土砂の大規模崩落も津波の原因になります。大規模な水の移動によって引き起こされる連続した高波のうち、気象学的要因(例:台風や竜巻など)以外の原因により発生した現象を指します。「気象学的要因以外」には、地震や岩石の崩落、海底火山の噴火などの事象が挙げられます。

         

地震による津波発生のメカニズム

前述のとおり、津波には、海底火山の爆発や土砂の崩落など様々な原因が考えられますが、最もメジャーな発生要因は地震です。地震による津波は、主に断層(地層や岩盤に力が加わって割れ、割れた面に沿ってずれて食い違いができること)による隆起・沈降が海底に発生し、その地形変化が海面に伝播することによって引き起こされます。

したがって、こうした津波の大きさは人や建物にもたらされる地震の揺れ(震度)の大きさではなく、海底の断層の隆起・沈降の大きさに比例することになります。つまり、海底を震源地とする大きな地震が発生したとしても、そこで隆起・沈降が起きなければ津波自体は発生しません。

津波伝播のメカニズム

津波は、地震断層のずれ方や海底の地形の影響を受けながら四方に伝播していきます。

伝播の速度は、水深によって異なり、海が深いほど速く伝わる性質があります。その速度は、沖合では時速約800kmでジェット機に相当するとも言われています。海が浅い場所では速度が遅くなるため、後から来る波が前の波に追いついて、津波の高さが高くなります。

浅くなるにつれて伝播の速度が落ちるとはいえ、水深10mの場合でも時速約36km。人が走って逃げ切れるものではありません。

出典:気象庁「津波発生と伝播のしくみ」

地形との関係

津波の高さは、湾の形状に大きく影響されます。湾口が広く奥にいくほど狭くなっている湾では、幅が狭くなる分、波の高さが増します。一方、湾口が狭く湾内が拡がっている場合は波の高さは低減します。

波の形を、V字型、U字型、直線海岸、袋型の4つに大別すると、袋型→直線海岸→U字型→V字型の順に波の高さが高くなります。日本では例えば、三陸地方の海岸がV字型に該当します。

歴史上の大きな津波

津波は、どの高さまで到達したかの痕跡が残らないため、海上での津波の正確な波の高さを測ることは困難です。そこで過去に発生した大津波の多くは、波の到達高度(地上に押し寄せた津波が海抜何メートルの地点まで達したか)により評価されています。以下に、大きな津波の例を挙げます。

発生年 場所 到達高度 原因
1958年 米国のアラスカ州・リツヤ湾 520メートル 岩石の崩落による
1896年 日本の岩手県・綾里湾(日本) 38.2メートル 明治三陸沖地震
1933年 日本の岩手県大船渡市三陸町 28.7メートル 昭和三陸沖地震
2011年 日本の岩手・重茂半島 38.9メートル 東日本大震災

津波に関する気象庁からの情報

地震発生後、安全確保の観点から、気象庁は津波が発生する可能性のある場合には、その旨を速やかに公表することになっています。公表にあたっては、予想される津波の高さは5段階の数字で発表されます。

ただし、地震の規模(マグニチュード)が8を超えるような巨大地震では、すぐに精度の高い地震規模を求められないため、その海域での最大津波想定などをもとに津波警報・注意報が発表されます。その場合、最初の津波警報・注意報では、予想される津波の高さは数値ではなく、「巨大」や「高い」といった言葉で表されます。地震の規模が正しく求められるようになってから、津波警報・注意報を更新し、予想される津波の高さも数値で発表されます。

種類 発表基準 発表される津波の高さ 想定される被害と取るべき行動
数値での発表
(予想される津波の高さ区分)
巨大地震の場合の発表
大津波警報 予想される津波の最大波の高さが高いところで3mを超える場合 10m超 巨大 巨大な津波が襲い、木造家屋が全壊・流失し、人は津波による流れに巻き込まれます。
沿岸部や川沿いにいる人は、ただちに高台や避難ビルなど安全な場所へ避難してください。
10m
5m
津波警報 予想される津波の最大波の高さが高いところで1m以上3m以下の場合 3m 高い 標高の低いところでは津波が襲い、浸水被害が発生します。人は津波による流れに巻き込まれます。
沿岸部や川沿いにいる人は、ただちに高台や避難ビルなど安全な場所へ避難してください。
津波注意報 予想される津波の最大波の高さが高いところで0.2m以上1m以下の場合であって、津波による災害のおそれがある場合 1m 表記しない 海の中では人は速い流れに巻き込まれ、また、養殖いかだが流失し小型船舶が転覆します。
海の中にいる人はただちに海から上がって、海岸から離れてください。

※気象庁「津波警報・注意報の種類」をもとにニュートン・コンサルティングが作成

対策

津波については、下記のような対策が考えられます。2011年の東日本大震災の被害状況を見ると、単独の対策よりも複数の対策を組み合わせ、有効性や費用対効果を高めることが重要と考えられます。

対策 問題点
防潮堤の設置 コストが高く、想定より大規模な津波の場合には効果が薄い
海岸線や河口付近を避け、高台などに建物を設ける 漁業関係者などは生活上の利便が妨げられる場合がある
注意報や警報などに基づく迅速な避難 日常の訓練と早期の情報入手が必要。また避難時には不動産などは当然ながら放棄する必要がある

また、日頃からの備えも重要です。危険な場所をハザードマップなどで確認しておく、避難場所・経路を確認する、訓練に参加するなど、さまざまな場面を想定した防災活動が、津波から身を守るために必要だといえます。