災害拠点病院や避難所、防災拠点に接続する上下水道の管路耐震化率は約15%、上下水道システムの耐震化について緊急点検を実施 国交省
掲載:2024年11月15日
リスクマネジメント速報
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国土交通省は11月1日、2023年度末時点における全国の上下水道施設の耐震化状況について緊急点検をした結果を公表しました。緊急点検は能登半島地震での被害を踏まえて実施され、国内施設の耐震化率は全体的に低い水準にとどまっていることが分かりました。国土交通省は9月、すべての水道事業者および下水道管理者向けに「上下水道耐震化計画」策定を要請しており、計画に基づく上下水道施設の耐震化を推進していくとしました。
能登半島地震では、上下水道システムの耐震化が遅れていたために断水が長引いた箇所がありました。具体的には、浄水場や配水池、下水道処理場に直結する管路といった上下水道システムの基幹施設において耐震化が進んでおらず、広範囲で断水や下水道管内の滞水が発生しました。他方、耐震化されていた浄水場や下水道処理場などでは施設機能に重大な影響を及ぼすような被害はなく、改めて事前防災の重要性が浮き彫りになりました。
耐震化率の緊急点検を実施した結果は、取水施設では約46%、取水施設から浄水施設へとつなぐ導水管では約34%、浄水施設は約43%、浄水施設から配水池までつなぐ送水管は約47%、配水池は約67%でした(以上、水道システム)。一方、下水道システムでは、下水処理場が約48%、ポンプ場へとつながる下水道管路が約72%、ポンプ場は約46%でした。これら施設は上下水道システムの急所であり、ここが機能を失えばシステム全体が機能不全となります。
災害時においても災害拠点病院や避難所では水が使えることが求められています。しかし、災害拠点病院や避難所、防災拠点といった重要施設において、接続する水道および下水道の管路の両方が耐震化されている割合は約15%にとどまることが分かりました。水道と下水道の管路別でみると、水道管路(配水本管と配水子管)の耐震適合率は約39%、下水道管路(重要施設から下水処理場直前の合流地点まで)は約51%でした(値はいずれも全国値)。
耐震化率の低さは総じて人口規模に比例する結果となりました。例えば、避難所などの重要施設に接続する下水道管路について市町村の人口規模別で耐震化率を見ると、政令指定都市では約70%であるのに対し、1万人未満の市町村では約42%となりました。
国土交通省は2025年1月末をめどに「上下水道耐震化計画」策定を水道事業者および下水道管理者向けに要請しました。この計画に基づく耐震化の取り組み状況についてはフォローアップを行うとともに結果を公表します。また、人口減少を踏まえた施設規模の適正化や、広域連携・官民連携による事業の運営基盤の強化を推進するとしました。
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