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緊急通行車両

掲載:2014年01月31日

用語集

緊急通行車両とは、「大地震等の大災害が発生した際に、車両の通行が規制されている道路であっても通行を許可される車両」のことです。これは災害対策基本法(以下「災対法」といいます。)第76条で、定義されています。なぜ「緊急通行車両」が定められているのかと言うと、災害時の円滑な救助活動や社会インフラの復旧活動を実現するためです。具体的には、主要な幹線道路において、一般車両の交通量を制限し、一方で救助活動などに関わる緊急車両を優先的に通行させることで、渋滞の発生を抑え、緊急車両が迅速に行動できるようにします。

         

規制下でも優先的な通行が可能

2013年12月に内閣府が発表した、M7クラスの首都直下型地震が発生した場合の被害想定によると、首都圏の主要な道路では被災状況の把握などのため、少なくとも発災から1~2日間は閉鎖が見込まれるとしています。その後も数日間は人命救助を優先するため、おもな幹線道路は緊急通行路に指定され、交通規制がかけられることが予想されます。また、一般道においても、亀裂等の道路の損傷や倒壊した建物の瓦礫が原因で通行ができない区間が大量に発生し、復旧までに1ヶ月以上要することが見込まれています。緊急通行車両は、こうした規制下でも優先的な通行をすることができるのです。

緊急通行車両として認められるための条件

緊急通行車両として認められるためには、法律で定める以下の条件を満たしている必要があります。
①人命救助や火災対応等の急を要する業務に従事していること
②大災害が発生した際、社会秩序の維持、災害による被害の拡大防止や人命の保護に関わる活動に従事していること

具体的にはたとえば、以下のような車両が緊急通行車両として認められています。
  1. パトカー
  2. 消防車
  3. 救急車
  4. 警報の発令や避難勧告等を広報する車両
  5. 洪水や河川の氾濫を防ぐために派遣される車両
  6. 被災者を助けるために派遣される車両
  7. 破損したライフライン(電気・ガス・水道等)施設・設備の応急的な復旧作業のために派遣される車両
  8. 救援物資等の輸送をする車両
    …等

緊急通行車両として認められるための手続き

緊急通行車両として正式に認められると「緊急通行車両等の標章」及び「緊急通行車両確認証明書」(以下「標章等」と言います。)の交付を受け、緊急通行車両として交通規制が敷かれている道路を通行することができます。標章等の交付を受けるためには所定の手続きを取り、緊急通行車両か否かの審査を受ける必要があります。そして、手続きには2つの方法があります。
それは①災害発生前に申請を行う方法(事前届出制度)と②災害発生後に申請を行う方法です。それぞれの方法について、具体的な届け出先や申請に必要な書類、メリット/デメリットは以下のとおりです。
  災害発生前の申請(事前届出制度) 災害発生後の申請
申請者 災害応急対策の実施について、責任を有する者(代行者を含む。)
届出先 緊急通行車両として届け出る車両を使用する本拠を管轄する、都道府県警察本部もしくは警察署
例)東京都の場合は警視庁都市交通対策課もしくは届出車両を使用している本拠地を管轄している警察署
原則として最寄りの警察署
※実際には検問所等でも申請が可能
申請に
必要な
書類
  • 車検証(自動車検査証)
  • 届け出る車両を使用して実施する業務が確認できる資料(例:自治体等との協定書、契約書)
    ※資料が用意できない場合は上申書で代用とする
  • 緊急通行車両等事前届出書(2通)
  • 車検証(自動車検査証)
  • 届け出る車両を使用して実施する業務が確認できる資料(例:自治体等との協定書、契約書)
    ※資料が用意できない場合は上申書で代用とする
  • 緊急通行車両等確認申請書(1通)
交付される
書類
  • 緊急通行車両等事前届出済証
  • 緊急通行車両等の標章
  • 緊急通行車両確認証明書
メリット
  • 標章等の交付手続きが優先的に行われる
  • 標章等の交付申請時の審査が省略されるため、申請から標章の交付までの時間が短い
  • 標章等の交付の申請が1回の手続きで済む
デメリット
  • 検問所等で標章等の交付を受ける際に、改めて「緊急通行車両等の事前届出済証」と車検証の提出が必要(手続きが2段階)
  • 事前届出済の車両の手続きが優先されるため、交付が後回しにされる
  • 申請後、緊急通行車両か否かの審査が行われるため、申請から標章の交付までに時間がかかる
 
事前届出制度を利用した場合、事前届出を行っていない車両と比較して、短時間で、かつ優先的に標章等の交付を受けることができます。そのため、災害発生後速やかに復旧活動等に従事するためには、事前届出制度による緊急通行車両の申請を行っておくことが望ましいでしょう。

BCMSから見る「緊急交通車両」

緊急通行車両の考え方は、事業継続マネジメントシステム(BCMS)の国際規格であるISO22301:2012とも無関係ではありません。「緊急交通車両」は、ISO22301:2012の8章「運用」の中の8.3.2「資源に関する要求事項の設定」と深い関係があります。

8.3.2 資源に関する要求事項の設定
組織は,選択した戦略を導入するための資源に関する要求事項を決定しなければならない。考慮すべき資源の種類には次のようなものが含まれるが,これらだけに限らない。

a) 人
b) 情報及びデータ
c) 建物,作業環境及び関連ユーティリティ
d) 施設,設備及び消耗品
e) 情報通信技術 (ICT)システム
f) 交通機関
g) 資金
h) 取引先及びサプライヤ
(ISO22301:2012 8.3.2「 資源に関する要求事項の設定」より引用)

8.3.2「資源に関する要求事項の設定」をわかりやすく説明すると、「組織が対応策を考える際には、いきなり結論にとびつくのではなく、まずは対応策を考える上での留意事項を、資源という観点から整理しましょう」と言い換えることができます。そして、8.3.2「資源に関する要求事項の設定」では、その資源の1つとして「交通機関」を挙げています。

具体例を挙げてみましょう。たとえば、あなたの会社が「都内にあるマネジメント機能を別拠点に一時的に移す」という対応策を検討しているとします。この際、単に「マネジメントがどこに移動するか?」という議論にとどめるのではなく、「移動に関して、どのような制約が発生するか?」や「どうやって移動するか?」についても考えましょうということです。このように考えたとき、一例ではありますが※、「緊急通行車両」といった発想につながるわけです。

※但し、「緊急交通車両」は、「緊急通行車両として認められるための条件とは」に記載した条件に合致する場合にのみ認められるため、「緊急通行車両に認められるか」について、併せて検討する必要があります。
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