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緊急地震速報

掲載:2016年07月19日

用語集

緊急地震速報とは、地震の発生直後に、震源に近い地震計でとらえた観測データを素早く解析して、震源や地震の規模(マグニチュード)を推定し、これに基づいて各地での主要動の到達時刻や震度を予想し、可能な限り素早く知らせるものです。

         

緊急地震速報の歴史

日本における緊急地震速報の開始は1992年に遡ります。20世紀終盤に入り、情報通信技術の発達と地震研究の進展を背景に、1989年に緊急地震速報の開発が始まりました。警報システムの考え方は1868年にはアメリカで既に存在していましたが、技術的に地震の波形を収集することができませんでした。
年月日 主な出来事
1989年 鉄道技術研究所が、ユレダスの試行を開始
1992年 東海道新幹線で全面採用
1996年 兵庫県南部地震を契機に高感度地震観測網の整備が決定
(2011年現在は700か所以上に設置)
2004年2月 行政機関、交通、報道、通信などで希望する機関に対し緊急地震速報の試験運用を開始
2007年10月1日 9:00から「一般向け」速報を導入
先行的に提供していた速報は「高度利用者向け」として区別。テレビ放送や一部の公共施設などでも速報が導入された
2007年12月1日 この日施行の気象業務法改正で、緊急地震速報が予報および警報として位置づけられた
2011年8月 同年3月11日東北地方太平洋沖地震後に誤報が多発したことを受けて、同時に発生した地震を区別し、弱い地震を計算から除外する修正プログラムの運用を開始
2014年7月 緊急地震速報の精度向上のため、今後5年以内を目途に以下の新配信方式を導入すると気象庁より発表。
・同時に複数の地震が発生した場合でも、震源を精度良く決定
→パーティクルフィルタを用いた統合震源決定手法(IPF法)の導入
・巨大地震発生の際に強く揺れる地域をより適切に予想
→近傍で観測されたリアルタイム震度から震度予想をする手法(PLUM法)の導入
2015年3月 熊野灘沖東南海震源域における地震・津波観測監視システム(DONET)、強震観測網(KiK-net)、多機能型地震の計67カ所のデータを利用することを発表。
これにより以下の点が改善。
・緊急地震速報(地震動警報)をより早く発表可能。
・南海トラフ沿いの巨大地震について海底に設置されている地震計で地震波をより早く検知することで、最大数秒早く発表することが可能。
・首都圏直下の地震では地中深くに設置されている地震計で検知することで、最大1秒程度早く発表することが可能。

仕組みと種類

【仕組み】

地震が発生すると、震源からは揺れが波となって地面を伝わっていきます(地震波)。地震波にはP波(Primary「最初の」の頭文字)とS波(Secondary「二番目の」の頭文字)があり、P波の方がS波より速く伝わる性質があります。一方、強い揺れによる被害をもたらすのは主に後から伝わってくるS波です。 このため、地震波の伝わる速度の差を利用して、先に伝わるP波を検知した段階でS波が伝わってくる前に危険が迫っていることを知らせることが可能になります。

【種類】

緊急地震速報の種類は、警報だけを扱う「一般者向け」と警報と予報の両方を扱う「高度利用者向け」の2つがあります。主な特徴を下記にまとめました。
  一般向け 高度利用者向け
法的位置付け 地震動警報 地震動予報
発表者 気象庁 気象庁および、地震動の予報業務許可事業者
発表内容
  • 発生時刻
  • 震源
  • 予測震度4以上の地域名
  • 発生時刻
  • 震源
  • 予測最大震度
  • 予測震度5弱以上の地域名と震度
  • 登録地点の主要動到達予測時刻
  • (計算処理により震度と到達時刻が分かる)
情報更新 震度3以下とされた地域が逐次予測で5弱以上に修正された場合に更新 数秒~数十秒間隔で逐次更新
発表基準 2つ以上の観測点で観測かつ、震度5弱以上を予測 100gal以上を観測または、震度3またはM3.5以上を予測
発表対象 広く一般に発表 (主にテレビ・ラジオ放送、防災行政無線、携帯電話速報メール等) 登録利用者に配信(広く一般に公表・再配信している事業者もある)
使用者 不特定多数の一般の方 鉄道会社、建設会社(特に建築中物件)、精密機器製造工場、病院(特に手術室)等

 【参考】チャイム音の作者
開発に携わった伊福部教授(北海道大学)で伊福部昭氏の甥にあたる。昭氏は、映画ゴジラシリーズの作曲者。制作上で決め手となったのは、「危険を知らせ、すぐに避難するよう促す音で、既に存在する各種の警報音と似ていないこと、耳の不自由な方にも聞き取れること」
※2013年7月より、携帯電話4社(ドコモ、KDDI、ソフトバンク、イー・アクセス)、ブザー音に加え声の警告音を導入

緊急地震速報時の対応

緊急地震速報を見聞きした場合、周りの人にも声をかけながら「あわてず、まず身の安全を!」心がけましょう。
また、緊急地震速報を見聞きした場所での対応も変わってきます。

 
場所 対応
家庭、職場、学校等の屋内
  • 窓や戸をあけて避難経路確保
  • 身の安全確保
  • 台所の火の始末は揺れが収まってから(ガスメーターで自動停止する)
商業施設、イベント会場等の混雑する場所
  • 屋内と同様に身の安全確保
  • 混乱を防ぐため、出入り口に押し掛けないこと
  • 係員などの指示があればそれに従う
屋外
  • 転倒物や看板・照明や窓ガラスなどの落下物から離れる
  • できれば耐震性の高い建物の中に避難する
  • 加えて崖などの近くでは、崖崩れや落石のおそれがあるため、できるだけ崖などから離れること
  • 海岸に近い場合は、津波に備えて速やかに高台や建物の高層階に避難する
自動車の運転中
  • まずハザードランプの点灯などで警告を行う
  • ゆっくりと減速
  • 道路の左側に車を寄せて停止する
バスや電車の中
  • つり革・手すりなどにつかまってしっかりと体を支えられるようにする
エレベーター内
  • 最寄り階のボタンを押す
  • ドアが空いたら、すばやくエレベーターから出る

緊急地震速報の技術的限界

緊急地震速報は短い時間でのデータ解析を行う特性上、推定震度と実際の震度に誤差が生じるなどの技術的限界があります。緊急地震速報の特性を十分に理解した上での使用が必要となります。
・直下型地震など震源地が近い場合や内陸の浅い場所で地震が発生した場合は、緊急地震速 報の情報配信が間に合わないことがあります。
・短時間で得られたデータから推定を行うため推定精度には限界があり、推定震度が実際の震度 階級と異なる場合があります。
・複数の地震が同時に発生した場合、地震情報を区別することが困難となり、複数の地震情報を 1つの地震情報と捉え実際の揺れよりも過大もしくは過小評価する場合があります。
・深発地震の推定精度が十分でない場合があります。
(※深発地震:震源の深さが100km程度より深い場所で発生した地震を指し、震源が通常の地震よりも深い場所であることから揺れを感じない場合も多いですが、沈み込むプレートに沿って地震波が伝わりやすい性質が顕著に現れることにより、稀に震源から遠く離れた場所で揺れが大きくなることがあります。)
なお、深発地震においては、現在の震度推定に用いる計算式を深発地震に適応すると実際よりも大きく計算され推定精度が十分でないことから、一般向け緊急地震速報(地震動警報)は発表されません。

東日本大震災からの教訓と現在の対応状況

【発災時の速報状況】

①異なる場所でほぼ同時に地震が発生したため、処理が間に合わなかった
②停電、通信手段途絶のため、地震計のデータ取得ができなかった

【現在の状況】

①気象庁は、ほぼ同時に起きた地震のうち緊急地震速報(警報)の発表対象としていない小規模の地震を計算の対象から外すことにより、2つの地震を誤って結びつける頻度を減らすシステム改修を行った
②観測点の機能を強化した
・電源の強化(バッテリー72時間化)
・通信回線の強化(衛星回線によるバックアップ)

【2013年8月8日16:56発生の誤報について】

近畿地方を中心に広範囲な地震発生の誤報がありました。原因は、和歌山県北部で実際に起きたマグニチュード(M)2.3の地震と、三重県南東沖に設置している海底地震計のノイズ異常が重なったことです。午後4時56分ごろ、和歌山県北部で地震が発生したのとほぼ同時刻、海底地震計の1つで、常時観測していたノイズ約2秒弱途切れました。

システムは、ノイズが途切れた後、再び検知したノイズを地震の揺れだと誤って観測し、和歌山県北部の揺れと同じ地震が原因だと判断。「大きな地震が原因で、和歌山県北部と三重県南東沖でほぼ同時に揺れた」と解析し、奈良県でM7.8・最大震度7の地震が起きたと「過大な推計」をしてしまった。現在は、この地震計を緊急地震速報に使う地震計から外しノイズが途切れた原因は調査中です。この地震計では、同日午前3時ごろから断続的にノイズが途切れており、機器の故障や通信回線の異常などが考えられるという。再発防止策として、地震計に異常があった場合、即座にその地震計を緊急地震速報用から外す運用を徹底することを挙げています。

今回は誤報でしたが、緊急地震速報が鳴った場合、まずは前述した「緊急地震速報時の対応」を行っていただきたいと思います。

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