進行型災害/突発型災害
掲載:2024年05月10日
用語集
災害発生までの現象が長時間にわたり、事前に災害や被害の規模などが想定される災害を「進行型災害」といいます。進行型災害としては、水災害、雪害、遠地津波災害、疫病などが挙げられます。一方、地震のように、短時間の現象で予測や準備が困難な災害を「突発型災害」といいます。事前に起こりうる状況が想定できる進行型災害はもちろん、突発型災害においても、防災・減災のためにはタイムライン(防災行動計画)の考え方が役に立ちます。
防災におけるタイムライン(防災行動計画)の考え方
台風や豪雨などの災害が頻発するわが国では、近年、タイムライン(防災行動計画)の策定が積極的に進められています。タイムラインとは、防災関係機関が連携して災害時に発生する状況をあらかじめ想定・共有した上で、「いつ」「誰が」「何をするか」を整理した計画を指します。
わが国の防災においては、以前から地震などの突発型災害の発生後の対応を強化してきたものの、災害発生前の早い段階で防災関係機関が連携して防災・減災を目指すタイムラインのような計画は策定されていない状況がありました。
一方、米国では早くから災害発生前の取り組みとしてタイムラインが活用されており、2012年にニュージャージー州・ニューヨーク州にハリケーン・サンディが上陸した際には、タイムラインに基づく住民避難などの対策により被害を最小限に抑えることができました。
これを受け、国土交通省は2013年に米国での現地調査とヒアリングを実施し、報告書において日本の実情に合ったタイムラインの策定・活用を提言しました。2014年には「国土交通省・水災害に関する防災・減災対策本部」を設置し、防災行動計画ワーキンググループにおいてタイムラインの考え方を生かした行動計画を検討しています。
進行型災害・突発型災害におけるタイムラインの活用
タイムラインの構築にあたっては、対象とする災害とともに、主な災害の発生時点となる時刻「ゼロ・アワー」を設定します。そして、ゼロ・アワーから時間をさかのぼり、防災行動を実施するタイミングと防災行動に必要な時間である「リードタイム」、さらにその事態の進行状況を整理します。
進行型災害の場合、災害発生の数日前から災害発生直後までの期間を対象としたタイムラインを策定し、発生後には災害発生後の対応に移行する必要があります。一方、突発型災害の場合は事前の防災行動の実施が困難であるものの、地震などが発生した際、人命救助において重要な「72時間」の間にとるべき行動を定めておくなど、発生後の対応でタイムラインの考え方を活用できます。
進行型災害・突発型災害の発生時に迅速かつ効率的な防災行動を行うために
基本的にタイムラインは進行型災害を対象としますが、突発型災害の発生後の対応でも役立てることができ、全ての自然災害に応用が可能であると考えられます。タイムラインを導入することで、先を見越した早めの行動がとれるだけでなく、防災関係機関間の関係構築や責任の明確化が可能となり、災害対応のふりかえり(検証)や改善も容易になります。
迅速かつ効率的な防災行動を行うために、タイムラインの策定には防災関係機関が広く参加することが望まれます。また、実際の災害においては想定通りに事態が進行するとは限らないため、あらかじめ最悪の状況も想定しておくほか、実際の事態の進行状況に応じた臨機応変な対応が求められます。