災害レジリエンス
掲載:2024年02月05日
用語集
「災害レジリエンス」とは、災害に対する、社会や企業といったシステムのレジリエンス(=対応力+回復力)を指します。災害に備えて被害を最小化するだけでなく、被災後の速やかな復旧・復興力も併せた総合的な災害対応力を意味します。政府による「国土強靭化(ナショナル・レジリエンス)」も、事前防災・減災の考え方に基づいた災害レジリエンス向上のための取り組みです。
災害レジリエンスの定義とは
「復元力」や「再起力」、「強靭性」などと訳される「レジリエンス(resilience)」。元来、物理学や生態学などの専門分野で使われる概念でしたが、日本では2011年の東日本大震災をきっかけに災害リスクへの対応策として注目されています。
2015年3月、仙台で開催された国連防災世界会議にて採択された防災指針「仙台防災枠組2015-2030」では、災害レジリエンスを「災害に対するコミュニティや社会が、その基本構造や機能の維持・回復を通じて、災害の影響を適時にかつ効果的に防護・吸収し、対応するとともに、しなやかに回復する能力」と定義しています。履行期間の2030年までに、緊急対応および復旧への備えを強化することなどで災害レジリエンスを向上させ、新たな災害リスクの防止と既存の災害リスク削減を目指しています。
災害レジリエンスの重要性とは
気候変動の影響などにより、洪水や森林火災といった自然災害は激甚化、頻発化していますが、近い将来、高確率で発生すると言われる南海トラフ地震や首都直下型地震も、正確に予測することは不可能です。2024年の能登半島地震でも、メカニズムが不明で予測が難しい群発地震が最大震度7を観測した大地震につながったとされています。災害を完全にコントロールすることが難しい以上、災害レジリエンスのような概念が重要になっています。
「強靭な社会のイメージ」
出典:『国土強靱化進めよう!』内閣官房国土強靱化推進室(令和3年3月版)
災害に対してしなやかで強い社会にするには、上図のように、災害のダメージを少なくするショック耐性(=予防力)、および、早く立ち直るための回復力を同時に強化していく必要があります。ちなみに図中のBuild Back Better(より良い復興)とは、元の状態に戻すのではなく、災害から得た教訓を生かして、被災前よりもさらに災害に強靭な地域づくりを行う考え方のことです。
災害レジリエンスを高める取り組み
では、具体的には災害レジリエンス向上の取り組みとして、個人、企業、地域やコミュニティにはどのようなことが求められているのでしょうか。ここでは、政府が取り組みを進める国土強靭化策から抜粋して紹介します。
〈民間企業・団体〉
- 事業継続計画(BCP)の策定
- ハザードマップの確認、防災訓練の実施
- オフィスや工場の耐震化
〈個人・地域コミュニティ〉
- 食料や防災用品の備蓄
- 家屋の耐震化、家具の固定
- 防災情報の発信や防災教育の実施
- 地域の支援ネットワーク構築
〈国・地方自治体〉
- 堤防等の整備、強化
- 避難路や避難施設の整備
- 道路ネットワークの機能強化
- 社会インフラの老朽化対策
災害レジリエンスを高めるには、災害への包括的なアプローチが欠かせません。行政だけでなく、企業や地域、個人それぞれが災害に備える必要があります。また、道路や建物の耐震化といったハード面だけでなく、防災知識の普及や支援ネットワークづくりといったソフト面の取り組みも重要です。