激甚災害制度
掲載:2024年09月20日
用語集
激甚災害制度とは、「国民経済に著しい影響を及ぼし、かつ、当該災害による地方財政の負担を緩和し、又は被災者に対する特別の助成を行なうことが特に必要と認められる災害が発生した場合」に、中央防災会議の意見をきいた上で、当該災害を「激甚災害」として政令で指定するというものです。激甚災害の指定にあたっては、その激甚災害に対して適用すべき財政支援などの措置も併せて指定されます。
激甚災害制度とは
激甚災害制度は、昭和36年(1961年)に災害対策基本法によって創設が規定されたもので、翌年に制定された「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」(以下、「激甚災害法」)に基づいて激甚災害の指定が行われます。
激甚災害制度ができる以前は、被害が激甚な災害が起きるたびに災害特例法が立法されていましたが、制度の創設により、立法措置をとることなく政府が基準に従い特例措置を適用できるようになりました。しかし、制度の創設時に設けられた「激甚災害指定基準」は全国を単位とした被害額を基準としているため、局地的に多大な被害をもたらした災害は基準を超えず、激甚災害に指定されないケースがありました。
このような状況を受け、昭和43年(1968年)に発生したえびの地震を契機に創設されたのが、市町村単位の被害額を基準とする「局地激甚災害指定基準」です。これにより、特定地域で発生した甚大な災害に対しても、各種の特例措置が適用されるようになりました。
「本激」と「局激」の違いとは
俗称として、「激甚災害指定基準」によって指定される全国レベルの激甚災害は「本激」、「局地激甚災害指定基準」によって指定される局地的な激甚災害は「局激」と呼ばれています。本激は対象区域を全国として対象災害と適用措置を指定するのに対し、局激は対象災害と適用措置に加え、対象区域となる市町村を明示して指定するのが特徴です。
激甚災害指定の基本的な流れとしては、災害の発生後、市町村・都道府県による被害状況の調査や各省庁による査定見込額の算定が行われ、本激の指定基準に該当するかどうかが判断されます。そして、本激の指定基準を満たさなかった災害については、引き続き局激指定の可否が判断されることになります。
なお、局激の指定については、年末から年始にかけて都道府県経由で各市町村が当該年の各災害復旧事業等にかかる査定事業費を提出する必要があり、従来は3月中旬頃に政令が公布・施行されてきました。しかしながら、平成19年(2007年)の能登半島地震を機に、政府全体で対応する必要が特に高く、査定見込額が指定基準の2倍超に当たる災害等については、「早期局激」として年度途中に指定できるようになりました。
激甚災害法に基づく適用措置
本激または局激に指定されると、公共土木施設災害復旧事業等に関する財政援助や農林水産業に関する助成、中小企業事業者への保証の特例など、特別な財政援助や助成措置が適用されます。局激よりも本激のほうが適用すべき特例措置の種類が多いものの、いずれも同じ激甚災害法に基づく特例措置が適用されるため、同種の措置については内容は同じとなります。
局激は本激の指定基準を満たさなかった場合に指定の可否を判断するため、一つの災害が本激に指定され何らかの特例措置が適用された場合、同じ措置が局激でも適用されるということはありません。しかしながら、本激で適用されたものとは別の特例措置について当該災害が局激に指定された場合は、それが局激の特例措置として適用されることがあります。例えば、本激として公共土木施設等関係および農地等関係の特例措置が適用され、局激として中小企業関係の特例措置が適用されるようなケースがこれに当たります。
近年の激甚災害の指定状況
過去3年の激甚災害の指定状況は、以下の通りとなっています。
(内閣府 防災情報のページ「過去5年の激甚災害の指定状況一覧」より抜粋 ※2024年9月15日時点)
政令名 | 災害名 | 主な被災地※1 |
---|---|---|
令和四年等における特定地域に係る激甚災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令 | 令和4年等局激 | ― |
令和五年五月五日の地震による石川県珠洲市の区域に係る災害についての激甚災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令 | 令和5年5月5日の地震 | 石川県 |
令和五年五月二十八日から七月二十日までの間の豪雨及び暴風雨による災害についての激甚災害並びにこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令 | 梅雨前線・台風第2号 | 青森県・秋田県・茨城県・埼玉県・富山県・石川県・静岡県・和歌山県・島根県・山口県・福岡県・佐賀県・大分県 |
令和五年八月十二日から同月十七日までの間の暴風雨による災害についての激甚災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令 | 台風第7号 | 京都府・兵庫県・鳥取県 |
令和五年九月四日から同月九日までの間の豪雨及び暴風雨による千葉県夷隅郡大多喜町等の区域に係る災害についての激甚災害並びにこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令 | 台風第12号・第13号(熱帯低気圧を含む) | 茨城県・千葉県 |
令和六年能登半島地震による災害についての激甚災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令 | 令和6年能登半島地震 | 石川県・富山県・新潟県・福井県 |
令和五年等における特定地域に係る激甚災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令 | 令和5年等局激 | ― |
令和六年六月八日から七月三十日までの間の豪雨による災害についての激甚災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令 | 梅雨前線 | 秋田県・山形県・島根県 |
※1 主な被災地域について、都道府県単位で記載