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洪水キキクル/水害リスクライン

掲載:2024年05月13日

用語集

洪水キキクルとは、洪水の危険度を色分けし地図上に表示した情報です。洪水災害が発生または切迫している状況において一目で洪水危険度を確認できるため、避難に必要な情報として役立ちます。国土交通省の気候変動シナリオによると、洪水の発生頻度は気温が2℃上昇すると約2倍になり、4℃上昇すると約4倍になると試算されています。(※1)今後は気候変動による水害が激甚化し、さらに頻発化するでしょう。

この記事では水害対応に必要である洪水キキクルと、洪水キキクルと一体表示となった水害リスクラインについて、それぞれの特徴や違いについて説明します。

(※1)国土交通省「令和5年度 流域治水の推進に向けた関係省庁実務者会議」資料2-1 国土交通省の取組状況について(流域治水の概要とこれまでの取組)

洪水キキクルとは? 水害リスクラインを一体化し河川の洪水危険度を表示

2023年2月16日に気象庁と国土交通省は、気象庁が提供する洪水キキクル(洪水警報の危険度分布)に国土交通省が提供する水害リスクライン(国管理河川の洪水の危険度分布)の表示を一体化すると発表し、その運用を開始しました。

以前は洪水や水害が発生する可能性がある場合に、洪水キキクルと水害リスクラインを別々に確認する必要があり、自治体や住民の適切な避難判断、避難行動が遅れることが課題とされていました。この一体的表示により、河川の規模を問わず洪水の危険度を洪水キキクルでワンストップで確認できるようになりました。

洪水キキクルとは

洪水キキクルとは、洪水の危険度を5段階(黒、紫、赤、黄、水色)で色分けし、河川の流路に沿って約1km毎に地図上に表示する情報です。気象庁が提供し、洪水警報を補足する情報とされています。

水害リスクラインとは

水害リスクラインとは、河川の越水や溢水の危険度を4段階(黒、紫、赤、黄色)で色分けし、河川両岸約200m毎に地図上に表示する情報です。洪水キキクルへの一体表示後も、国土交通省のサイトでは「水害リスクライン」のみを確認することが可能で、2023年2月からは、6時間先までの毎時の危険度も表示されるようになりました。

洪水キキクルと水害リスクラインの違い

洪水キキクルと水害リスクラインは、どちらも洪水(越水や溢水を含む)の危険度を地図上に表示した情報ですが、それぞれ特徴が異なります。

1.対象となる河川が異なる
  • 洪水キキクルは、中小河川(水位周知河川やその他河川)が対象です。指定洪水予報河川は含みません。
  • 水害リスクラインは、国管理河川(指定洪水予報河川)が対象(2024年4月30日現在:429河川)です。
2.洪水危険度判定の指標が異なる
  • 洪水キキクルの危険度判定には、3時間先までの流域雨量指数の予測値を使用します。それを基に洪水危険度を10分毎に更新して地図上に表示します。
▼流域雨量指数とは
流域雨量指数とは、河川の上流域に降った雨により下流の対象地点の洪水危険度の高まりを数値化し示した指標です。値が大きいほど洪水危険度が高まることを示します。流域雨量指数を警報・注意報基準と掛け合わせることで、洪水キキクルを地図上に表示することが可能です。
  • 水害リスクラインの危険度判定は、観測水位などから両岸200mごとに現況の水位を推定し、上流から下流まで連続的に危険度を地図上に表示します。さらに、水害リスクラインが表示される河川は「指定河川洪水予報」が河川ごとに発表されます。
▼指定河川洪水予報とは
指定河川洪水予報とは、河川の増水や氾濫などに対し、国土交通省や都道府県があらかじめ指定した河川に対して発表される洪水警報または洪水注意報です。指定河川洪水予報の種類には、「氾濫注意情報」「氾濫警戒情報」「氾濫危険情報」「氾濫発生情報」があり、それぞれの情報に河川名を付して発表されます。(例:△△川氾濫注意情報)
指定河川洪水予報の種類 発表基準 市町村・住民に求める行動
氾濫発生情報 氾濫の発生 【警戒レベル5相当】
氾濫水への警戒
氾濫危険情報 ・急激な水位上昇により氾濫危険水位を超え、さらに水位の上昇が見込まれる
・氾濫危険水位に到達
【警戒レベル4相当】
いつ氾濫してもおかしくない状態で、避難など氾濫発生に対する対応を行う
氾濫警戒情報 ・一定時間後に氾濫危険水位に到達する見込みがある
・避難判断水位に到達し、さらに水位の上昇が見込まれる
【警戒レベル3相当】
氾濫発生の可能性があるため避難準備などの警戒が必要
氾濫注意情報 氾濫注意水位に到達し、さらに水位の上昇が見込まれる 【警戒レベル2相当】 氾濫の発生に対し注意する

※気象庁「指定河川洪水予報」をもとにニュートン・コンサルティングが作成

洪水キキクルと水害リスクラインは警戒レベル相当の情報

洪水キキクルと水害リスクラインは警戒レベル相当の情報

洪水キキクルと水害リスクラインは、警戒レベル相当の情報に該当します。 警戒レベル相当の情報とは、様々な防災気象情報(土砂災害や洪水、高潮など)のうち、避難情報などの発令基準に活用する情報を警戒レベルとの関連を明確にして伝えることで、住民の主体的な行動を促すものです。

警戒レベルとは
警戒レベルとは、区市町村が発令する避難情報等を住民らにより分かりやすく伝えるためのもので、レベル1~5の5段階を使用し、災害発生の危険度が高くなるほど数字が大きくなります。避難情報を伝える際に警戒レべルを用いることで、住民が危険度を直感的に理解しやすくし、適切なタイミングでの避難を促します。
洪水キキクルと水害リスクラインの配色は警戒レベルと同じ

警戒レベルの配色は、「レベル1:白」「レベル2:黄」「レベル3:赤」「レベル:4紫」「レベル5:黒」です。洪水キキクルと水害リスクラインの配色は、警戒レベルと同配色となっており、警戒レベルの配色とリンクさせることで危険度を一目で判断することが可能です。

洪水キキクルに表示される洪水キキクルと水害リスクラインの表示は以下の図を参考としてご覧ください。太田川・原野谷川、瀬戸川・朝比奈川は他の河川よりも太く表示されています。これは、指定河川洪水予報が発表されている河川です。太田川・原野谷川には赤の斜線が一部表示されており、増水によって内水氾濫が発生する可能性を示しています。さらに、水害リスクラインが適用される国管理河川では、両岸に危険度を示しており、どちらの岸で洪水リスクが高まっているかを判別することが可能です。このように、中小河川と国管理河川を一体表示にすることで、速やかな避難判断を行うことが可能となっています。

警戒レベル同様、洪水キキクルと水害リスクラインも紫までに必ず避難

警戒レベルは、警戒レベル4までに必ず避難するよう示しています。これは、警戒レベル相当の情報に該当する洪水キキクルと水害リスクラインも同様です。

特に、洪水キキクルが適用される中小河川は20,000を超えており、日本の至るところにあります。一般的に中小河川は流域面積が狭く、上流の降雨が河川に流れ込むまでの時間が短いとされ、短時間で急激な水位上昇が起こりやすいリスクがあります。

そのため、洪水や水害リスクが発生する可能性がある場合は、洪水キキクルを確認するだけでなく、気象庁が提供する「雨雲の動き」「河川の水位情報」などで現況を併せて確認し、最新の情報を踏まえて適切な避難行動を心がけましょう。

▼警戒レベルと洪水キキクル、水害リスクラインの早見表
警戒レベル 洪水キキクル 水害リスクライン
5 【緊急安全確保】
命の危険、直ちに安全確保!
【災害切迫】
流域雨量指数の実況値が大雨特別警報(浸水害)の基準値に到達
【氾濫発生情報】
氾濫している可能性
警戒レベル4までに必ず避難
4 【避難指示】
危険な場所から全員避難
【危険】
重大な洪水災害が発生する可能性が高い
【氾濫危険情報】
氾濫危険水位超過相当
3 【高齢者等避難】
危険な場所から高齢者等は避難
【警戒】
まもなく洪水災害が発生する可能性がある
【氾濫警戒情報】
避難判断水位超過相当
2 【大雨・洪水・高潮注意報】
自らの避難行動を確認
【注意】
避難行動の確認が必要
【氾濫注意情報】
氾濫注意水位超過
1 【早期注意情報】
災害への心構えを高める
水色 今後の情報などに留意   情報発表なし

※内閣府「避難情報に関するガイドライン」をもとにニュートン・コンサルティングが作成

気象庁は民間事業社と連携し、洪水の危険度が高まった場合などに洪水キキクルのスマートフォンプッシュ型通知サービスを提供しています。平時の際はハザードマップを確認するだけでなく、このようなサービスを従業員へ周知することも重要です。

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