気象庁はこのほど、「線状降水帯予測精度向上ワーキンググループ」の第10回会合を開き、線状降水帯の予測精度向上に向けた学官連携の方策や今年度の取り組み状況などを示した資料をWebサイトに公表しました。
気象庁は線状降水帯の予測精度の向上を喫緊の課題と捉えています。「線状降水帯予測精度向上ワーキンググループ」は2020年12月に設置され、おおむね年に2回(6月前後と12月)開催されています。大学や研究機関と協力して線状降水帯の発生・停滞・維持といった機構の解明などを進めています。あわせて発生に関する情報提供を行い、改善に取り組んでいます。
線状降水帯の発生を予測するには、観測の充実が欠かせません。水蒸気は線状降水帯が形成されるもととなります。水蒸気の観測を強化するため、アメダスへの湿度観測の追加▽二重偏波レーダーへの更新▽日本海での機動的な観測▽次期静止気象衛星「ひまわり」の整備――を進めます。
予報の強化に向けては、すでに数値予報モデル(メソモデル)が水平解像度5km格子まで細分化されたほか、大雨発生確率ガイダンスの改良も行われました。解像度が上がれば、再現性も高まります。今年度末には数値予報モデル(局地モデル)の水平解像度が2km格子から1km格子になるほか、水平解像度が2km格子となる局地アンサンブル予報システムの運用を開始する予定としています。
水平解像度が2km格子となる局地アンサンブル予報システムの開発のため、スーパーコンピュータ「富岳」を活用しています。膨大な計算を必要とする「21メンバーの局地アンサンブル予報システム」(水平解像度2km)を用いたリアルタイムシミュレーション実験を、6月2日から10月にかけて実施します。
線状降水帯の発生について気象庁では半日程度前から呼びかけ(発生予測)の情報を提供しています。昨年の予測に対する「適中」と「捕捉」について結果が公表されました。なお、「適中」とは、呼びかけを行ったうち、実際に線状降水帯が発生したもの。「捕捉」とは、線状降水帯が発生した際に呼びかけを行っていたかどうか、となります。
昨年の的中率は約10%で81回の呼びかけのうち、実際に線状降水帯が発生したのは8回でした。運用開始前の想定に比べて15ポイント低い結果となりました。想定では適中率を25%程度(4回に1回程度)と見込んでいました。
捕捉率は約38%で線状降水帯が21回発生したうち、呼びかけを行っていたのは8回でした。想定では50%程度を見込んでいました。