【解説】レベル4土砂災害危険警報とは?警戒区域・発表基準・土砂キキクルの活用・企業の対策
| 執筆者: | ニュートン・コンサルティング 編集部 |
| 改訂者: | ニュートン・コンサルティング 編集部 |
レベル4土砂災害危険警報は、土砂災害の発生により命に危険を及ぼす可能性が高まった場合に発表される防災情報です。「立ち退き避難」が原則とされますが、気づいた時には避難困難な状況に陥るケースが課題となっています。本記事では、レベル4土砂災害危険警報の発表基準やキキクルの活用法、警戒区域などを踏まえ、適切に避難するための対策をわかりやすく解説します。
1.レベル4土砂災害危険警報とは?
「レベル4土砂災害危険警報」とは、命に危険を及ぼすような土砂災害が発生するおそれが非常に高まった場合に、気象庁と都道府県が共同で発表する防災気象情報です。市町村長の避難指示の発令や住民の自主避難の判断を支援するため、対象となる市町村を特定して警戒を呼び掛けます。レベル4土砂災害危険警報が発表されたときは、命の危険を伴う土砂災害がいつ発生してもおかしくない状況であるため、危険な場所からの避難が必要です。
従来の「土砂災害警戒情報」との違い
レベル4土砂災害危険警報は、従来の「土砂災害警戒情報」に代わって2026年5月29日から運用が開始されました。気象庁が同日から「新たな防災気象情報」の運用を開始しており、その一環としてスタートした形です。発表基準や法的位置づけは従来の土砂災害警戒情報と変わりませんが、警戒レベルの数字を冒頭につけて発表することで、取るべき行動が直感的にわかるようにしています。なお、警戒レベル4で取るべき行動は「危険な場所から全員が避難」することです。
警戒すべき土砂災害とは
レベル4土砂災害危険警報が発生の警戒を呼び掛ける「土砂災害」とは、主に「急激ながけ崩れ」「土石流」「地すべり」の3つを指します。
図1:土砂災害の種類(がけ崩れ・土石流・地すべり)
「がけ崩れ」とは大雨や地震などで急な斜面が崩れ落ちる現象です。がけの近くに人家がある場合、逃げ遅れなどにより巻き込まれ、家が倒壊するなど甚大な被害が生じるおそれがあります。一方、「土石流」は、大雨で崩れた土石が川に流れ込み、水と一体となって一気に下流へ押し寄せる現象です。流下の速度が非常に速いため、土石流が発生してからの避難は困難といわれています。
「地すべり」は、大雨や融雪、地震などにより生じる、山の斜面が広範囲で塊となり滑り落ちる現象です。一般的に移動する土砂の量が大きく、ゆっくりと動くことが多いですが、家屋や田畑ごと移動するため、電線の切断による停電や道路の寸断、家屋・工場の倒壊など被害が広範囲にわたるという特徴があります。
近年、土砂災害を引き起こした「平成30年7月豪雨」や「令和元年東日本台風」では、従来の想定を超える雨量による急激な状況悪化が、避難の遅れや被害の拡大を招きました。レベル4土砂災害危険警報が発表された際、対象地域の従業員や住民は、安全が確保できる土砂災害警戒区域等の外へ速やかに避難する必要があります。気象庁は「警戒レベル4までに必ず避難」を推奨しているため、すぐに避難行動を開始することが不可欠です。
土砂災害警戒区域の確認方法
レベル4土砂災害危険警報は、危険が高まっている「土砂災害警戒区域」から避難することを呼び掛ける防災情報です。土砂災害警戒区域とは、土砂災害が発生した場合に、住民の生命や身体に危害が生じるおそれがある土地の区域で、特に警戒避難体制を整備すべき区域として都道府県が指定するものです(※1)。
(※1)土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(平成十二年法律第五十七号)
土砂災害警戒区域の中でもさらに危険性が高い場所として、「土砂災害特別警戒区域」があります。これは、土砂災害が発生した場合に、災害時に建築物に損壊が生じ、住民の生命や身体に著しい危害が生じるおそれがある区域を指します。土砂災害警戒区域との違いは、特定の開発行為に対する制限や、居室を有する建造物の構造に関する厳しい規制が設けられている点にあります。
各都道府県は「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(平成十二年法律第五十七号)」に基づき、この「土砂災害警戒区域」と「土砂災害特別警戒区域」2種類の区域を指定しています。警戒区域を「イエローゾーン」、特別警戒区域を「レッドゾーン」と呼び、ハザードマップ上でもすぐに視認できるよう名称に沿った色での表示が行われています。
図2:土砂災害警戒区域と特別警戒区域(イエローゾーンとレッドゾーン)の違い
企業のリスク管理担当者や経営層は、自治体が発行する「土砂災害ハザードマップ」を確認し、自社の拠点がこれらの区域に含まれているかを把握しておくことが重要です。さらに、実際の大雨の際には、気象庁の「土砂キキクル」を併せて活用することで、現在地の危険度をリアルタイムで判断することが可能になります。
以下の図3は、国土交通省と国土地理院が提供している「ハザードマップポータルサイト」内のコンテンツ「重ねるハザードマップ」を表示した状態を示しています。ここでは、土砂災害警戒区域などの確認方法を説明します。
図3:土砂災害警戒区域などの確認方法
この「重ねるハザードマップ」の「地図を見る」をクリックすると、図3の右側の画面が表示されます。①に調べたい地域の住所を入力し、②の災害種別で「土砂災害」を選択します。すると、地図上に「警戒区域」は黄色、「特別警戒区域」は赤色で表示されます。このいずれかをクリックすると、③のように、選択した地点とその周辺で最も危険な災害リスク情報が表示されます。
④をクリックすると、土砂災害の種類別に危険な箇所をマップ上に表示させることが可能です。「急傾斜地の崩壊」や「土石流」、「地すべり」といった表示させたい箇所をそれぞれ選択し、調べたい地域にどのような土砂災害のリスクがあるのかを確認することが大切です。
ただし、「重ねるハザードマップ」は避難に必要な情報が網羅されているわけではなく、実際に避難行動をとる際は、必ず市町村の作成するハザードマップを確認することが必須だとして、国土交通省と国土地理院は正しい利用方法について注意を促しています。
企業がこれらの情報を活用する際、確認の対象を事業所の敷地内だけにとどめるべきではありません。従業員の通勤経路や、重要な物流ルート上の危険箇所を事前に把握しておくことで、有事の際の帰宅指示や配送停止の判断を、客観的な根拠に基づいて迅速に行えるようになります。
2.レベル4土砂災害危険警報の発表基準と発表後
レベル4土砂災害危険警報の発表基準を正しく理解しておくことは、企業が避難のタイミングや事業中断の判断を下すために不可欠です。以下では、レベル4土砂災害危険警報の発表基準と発表後の対応について解説します。
レベル4土砂災害危険警報の発表基準
レベル4土砂災害危険警報は、2時間先までに土砂災害発生の危険性が極めて高まった(基準値を超えた)と判断されたタイミングで発表されます。基準値となるのは以下の二つの指標です。
- 土壌雨量指数:降った雨が土壌中に水分量としてどれだけ溜まっているかを示す数値。長期降雨指標として用いられる
- 60分雨量:直近の60分間に降った雨の量を指す数値。短期降雨指標として用いられる
これらの指標が「土砂災害発生危険基準線(CL:Critical Line)」を超えると予測された場合に、レベル4土砂災害危険警報が発表されます。なお、土砂災害発生危険基準線は、大雨時に土砂災害が発生しやすい降雨水準と、そうでない水準を分ける境界線のことです。過去の災害データを基に都道府県と気象台が設定しています。
レベル4土砂災害危険警報は、雨が降り始めてからではなく、地盤が水分を保持できる限界を予測して気象庁と都道府県が発表します。警報が出た時点で、すでに土砂災害がいつ発生してもおかしくなく、避難が必要な「警戒レベル4相当」の状況にあることを意味します。このため、レベル4土砂災害危険警報が出た時点で避難行動を開始している必要があります。
発表後も土砂キキクルの活用を
レベル4土砂災害危険警報は市町村単位の広域的な情報です。より局所的な危険度を把握するためには、気象庁が提供する「土砂キキクル」の活用が欠かせません。
土砂キキクルは、全国を1km四方の正方形(メッシュ)に区切り、2時間先までの予測値を示します。データは10分ごとに更新され、リアルタイムで危険度分布を確認できます。各地点の危険度に応じて、黒(災害切迫・警戒レベル5相当)、紫(危険・警戒レベル4相当)、赤(警戒)、黄(注意)、無色(今後の情報等に留意)の5色で色分けされ、紫(警戒レベル4相当)や赤(警戒レベル3相当)など、それぞれ警戒レベルに対応しています。
図4:土砂キキクルの確認と色の意味
企業は土砂キキクルのメッシュ情報を活用して、事業所周辺や従業員の通勤経路の安全を細やかに把握し、避難判断などにつなげることができます。レベル4土砂災害危険警報の発表後は状況が数十分単位で変化する可能性もあるため、警報の発表状況と併せて土砂キキクルのメッシュ情報を継続的に確認することが必要です。
レベル4土砂災害危険警報が解除された後も、企業には慎重な対応が求められます。警報解除は、警戒レベル4相当の状況が緩和されたことを示すものであり、安全の保証を意味するわけではないためです。安全に事業を継続するためには、事業所周辺や通勤経路の状況を、現地点検やキキクルのメッシュ情報で改めて確認することが重要です。
3.企業が取るべき土砂災害対策とは
企業の平時からの備えとしては、自社の所在地が「土砂災害警戒区域」や「土砂災害特別警戒区域」に該当するかどうかを把握し、有事の際の避難経路などを確認しておくことが挙げられます。情報収集の体制を整えておくことも大切です。台風接近などの際には、気象庁や自治体が発表する情報を注視するとともに、土砂キキクルで局所的な危険の把握に努めます。
また、事業継続計画(BCP)に土砂災害を想定した初動対応や安全対策を組み込むことも検討しましょう。土砂災害対策に適した「タイムライン防災」を取り入れるなど、災害の性質を考慮した対応が有効です。
土砂災害は突発的に起きる震災などに比べ、気象情報を事前に確認することで一定程度の備えができる場合があります。前述の「新たな防災気象情報」など最新の動向も踏まえ、平時から自社や従業員を守るための対策を講じることが求められます。
参考情報
- 国交省「土砂災害警戒情報の基準設定及び検証の考え方」
- 気象庁「土砂災害警戒情報・土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)」
- 気象庁「リーフレット『土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)の活用 ~土砂災害から命を守るために~』」
- 国土交通省「土砂災害警戒情報」
- 国土交通省「"土砂災害防止対策のさらなる取組強化を進めます~「土砂災害防止対策推進検討会」の提言を公表します~"」
- 国土交通省「近年の土砂災害における課題等を踏まえた土砂災害防止対策のさらなる取組強化に向けて」
- 国土交通省「土砂災害警戒情関係各種マニュアル」
- 気象庁「特別警報(気象)について」
- e-Gov「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」
- 内閣府「洪水災害から命を守ろう!さらに便利になった「洪水キキクル」活用法」
- 国土交通省・気象庁「都道府県と気象庁が共同して土砂災害警戒情報を作成・発表するための手引き」
- 内閣府「避難情報に関するガイドラインの改定(令和3年5月)」
- 国土交通省「土砂災害防止法の概要」
- e-Gov「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律 平成十二年法律第五十七号」
- 国土交通省「防災用語ウェブサイト(水害・土砂災害)」
- 国土交通省「防災用語ウェブサイト(水害・土砂災害)がけ崩れ」
- 国土交通省「防災用語ウェブサイト(水害・土砂災害)土石流」
- 国土交通省「防災用語ウェブサイト(水害・土砂災害)地すべり」
- 福井県砂防防災課「土砂災害警戒区域・特別警戒区域」
- 国土交通省「土砂災害防止法の概要」
- 国土交通省「土砂災害に関する情報の改善」
- 国土交通省「新たな防災気象情報の運用について~令和8年の大雨時期から防災気象情報が生まれ変わります~」
- 気象庁「新たな防災気象情報について(令和8年~)」
- 内閣府「避難情報に関するガイドラインの改定(令和8年3月)」
- 気象庁「土壌雨量指数」
- 国土交通省「土砂災害警戒情報の基準設定及び検証の考え方」