警戒レベルとは?2026年5月運用開始の新たな防災気象情報との関係・変更点・各レベルの意味を解説
| 執筆者: | チーフコンサルタント 中村 大七 |
| 改訂者: | ニュートン・コンサルティング 編集部 |
警戒レベルとは、災害時に住民が取るべき避難行動を5段階で示す区分です。大雨や土砂災害の危険度に応じて防災気象情報や避難情報に付され、住民の避難判断に活用されます。2026年5月には、防災気象情報の体系整理・名称変更に伴い、警戒レベルとの対応も変化しました。本記事では、新たな防災気象情報と警戒レベルとの関係や変更点、各レベルの意味をわかりやすく解説します。
1. 警戒レベルとは?
警戒レベルとは、災害時に「住民が取るべき避難行動」を直感的にわかりやすく確認できるよう、災害の危険度を5段階に整理したもので、気象庁や自治体が発信する防災情報(避難情報など)に用いられます。危険度に応じて、災害への心構えを高める段階の「警戒レベル1」から、命の危険が差し迫っている「警戒レベル5」までが定められています。
図1:警戒レベルと避難行動
2018年7月に発生した西日本豪雨では、気象警報や自治体による避難情報など様々な情報が発信されましたが、情報がわかりにくく、住民の避難行動に結びつかなかったため多くの方が犠牲となりました。この教訓を踏まえ、2019年6月より、内閣府が5段階の警戒レベルを防災情報に追加しました。
2021年5月には「避難情報に関するガイドライン」(内閣府)が改定され、警戒レベル4にあたる避難勧告と避難指示が「避難指示」に一本化されました。またこの見直しと併せて、「警戒レベル4で必ず避難する」という原則が明確に示されるようになりました。
警戒レベルは、災害時に住民がとるべき行動を5段階で示す区分です。気象庁が発表する「防災気象情報」や、市区町村が発令する「避難情報」と対応しており、「高齢者等避難」(警戒レベル3)や「避難指示」(警戒レベル4)、「緊急安全確保」(警戒レベル5)などの行動を段階的に促します。警戒レベル4にあたる「避難指示」が発令された場合、住民はこの段階までに危険な場所から避難する必要があります。
一方、気象庁が発表する「防災気象情報」は、住民の避難判断や市区町村による避難情報の発令判断に活用される情報です。大雨・土砂災害・河川氾濫・高潮に関する防災気象情報は「レベル2(災害名)注意報」、「レベル3(災害名)警報」、「レベル4(災害名)危険警報」、「レベル5(災害名)特別警報」と、レベルの数字を情報の名称に直接付した形で発表されます。なお、レベル1に相当するものには「早期注意情報(警報級の可能性)」が位置付けられており、災害リスクが高まる前の早期注意や警戒を促します。
これらの情報は、住民にとっては、市区町村からの避難情報の発令を待たずに避難を検討するための判断材料であり、市区町村にとっては避難情報を発令する際の重要な目安となります。そのため、避難情報と防災気象情報が同時に発表されるとは限らない点に留意が必要です。
図2:避難情報(警戒レベル)と河川や雨等の情報(警戒レベル相当情報)
2. 警戒レベル1~5の意味と取るべき行動
警戒レベルは1~5の5段階に分かれ、数字が大きくなるほど危険な状況であることを示します。各段階によって取るべき避難行動が変わってくるため、各レベルでの危険度を正確に把握し、災害発生時に速やかに対応できるよう備えておくことが防災上重要です。
警戒レベル1は「災害への心構えを高める」段階で、警戒レベル3になると「避難に時間を要する人(高齢者など)は早めの避難・避難の準備」をすることが求められます。警戒レベル4では「危険な場所から全員避難」することが求められ、自治体が避難指示を発令する段階です。警戒レベル5は既に災害が発生・切迫しており、命を守るための「緊急安全確保」を行う段階です。
なお、警戒レベルが適用される災害のうち、「河川氾濫」と「大雨」、「土砂災害」、「高潮」については、2026年5月から運用が一部変更され、情報名に警戒レベル1~5の数字が明記された注意報や警報が発表されることになりました。例えば、河川氾濫については「氾濫発生情報」が「レベル5氾濫特別警報」に変更されました。災害の種類と警戒レベルおよび防災気象情報との対応は下図の通りです。
図3:新しい防災気象情報の情報体系とその名称
警戒レベル1:災害への心構えを高める
警戒レベル1は、現時点で災害は顕在化していないものの、数日後に警報級の現象が発生する可能性を踏まえ、災害への心構えを高める段階です。気象庁が発表する防災気象情報では「早期注意情報」に相当します。
早期注意情報では、警報級の大雨、土砂災害、大雪、暴風、暴風雪、波浪、高潮の気象現象が、5日先までに発生する可能性が示されるため、先を見越して避難の準備などを進めることができます。具体的には、ハザードマップで今いる場所の危険度を確認しておく、テレビやラジオの天気予報、気象庁のホームページなどで最新情報に注意を払うといった対応が挙げられます。
警戒レベル2:避難行動の確認
警戒レベル2は、自らの避難行動を確認する段階です。防災気象情報では「注意報」に相当し、ハザードマップ上で自宅の災害リスク、指定緊急避難場所や避難経路、避難のタイミングなどを再確認することが必要です。状況を注視するため、情報収集も欠かせません。テレビやラジオ、気象庁のホームページを通じて河川氾濫や大雨、高潮などの情報を確認し、危険度をリアルタイムで把握することが重要です。
なお、非常持ち出し品の準備などは平時に済ませておくことが望ましいですが、準備ができていない場合は、実際に避難を始める目安となる警戒レベル3(高齢者等避難)・警戒レベル4(全員避難)が発表される前までに完了させておきます。
警戒レベル3:避難に時間を要する人は避難
警戒レベル3は災害のおそれがある状況で、防災気象情報では「警報」に相当します。警戒レベル3が発令されると、高齢者や障がい者、妊産婦、乳幼児など避難に時間を要する人は危険な場所から避難することが求められます。一般の人も出勤などの外出を控えるなど普段の行動を見合わせたり、避難の準備をしたり、危険を感じたら自主的に避難を開始するタイミングです。土砂災害や河川氾濫が発生しやすい地域などでは、この段階での早めの自主避難が望ましいとされています。
警戒レベル4:全員避難
警戒レベル4では「危険な場所から全員避難」が求められます。防災気象情報では「危険警報」に相当し、避難指示が発令される段階です。次の警戒レベル5では命の危険がある切迫した状況になるため、警戒レベル4までに全員が危険な場所からの避難を完了させる必要があります。具体的に取るべき避難行動は以下の通りです。
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- 立退き避難:
- 大雨や河川氾濫などの災害で自宅にとどまることが危険な場合、指定緊急避難場所や安全な親戚・知人宅、ホテルなどへ移動します。特に土砂災害の危険がある場所では、原則としてこの立退き避難が必要です。
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- 屋内安全確保:
- 避難行動は「立退き避難」が原則ですが、洪水や高潮の危険がある場合で、ハザードマップなどを確認し「自宅が倒壊するおそれがない」「浸水する深さよりも高い場所にいる」などの条件を満たしていれば、「屋内安全確保」を選択することも可能です。屋内安全確保には、自宅の安全な上階へ移動する「垂直避難」や、浸水しない堅固な建物へ移動する「退避」があります。
警戒レベル5:ただちに安全確保
警戒レベル5の段階では「災害発生または切迫」という極めて危険な状況になっています。防災気象情報では「特別警報」に相当しますが、既に災害が発生・切迫している状況のため、必ずしも警報が発令されるとは限りません。
この段階で避難が完了できていない場合は、命を守るために「緊急安全確保」の行動を取る必要があります。緊急安全確保とは、その時点でいる場所よりも相対的に安全な場所へただちに移動することです。建物の中にいる場合、水害(河川氾濫、洪水、高潮、津波など)では建物の上階へ、土砂災害では崖から少しでも離れた部屋へ移動します。近隣の高い頑丈な建物へ緊急的に移動することも可能です。ただし、これらの行動でも確実に安全が確保できるとは限らないため、警戒レベル4までに避難を完了することが大原則となります。
3. 2026年5月の変更で何が変わったのか
警戒レベルとの対応がわかりにくいという課題があった「河川氾濫」「大雨」「土砂災害」「高潮」に関する防災気象情報は、2026年5月の変更により、住民が避難の判断をしやすい名称へと整理されました。加えて、「警戒レベル4相当」の情報は、新設された「危険警報」という名称で運用されます。
今回の変更は、気象庁や自治体が発表する防災気象情報・避難情報をわかりやすく伝え、スムーズな避難行動につなげることが目的です。主な変更内容は以下の通りです。
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- 情報に警戒レベルを付記:
- これまでの「土砂災害警戒情報」が「レベル4土砂災害危険警報」に変わるなど、情報名称に警戒レベルの数字が付記される運用になりました。情報と住民が取るべき行動の対応をよりわかりやすくするためです。
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- 「河川氾濫」に特別警報を新設:
- これまで河川氾濫において最も危険度の高い警戒レベル5に相当する名称は「氾濫発生情報」でしたが、今回の運用見直しにより「特別警報」が新設され、「レベル5氾濫特別警報」に変更されました。なお、「河川氾濫」の発表対象となるのは洪水予報河川のみです。
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- 情報と警戒レベルの整合:
- 災害種別(土砂災害、大雨、河川氾濫、高潮)ごとにバラバラだった情報名称や体系が整理され、5段階の警戒レベルと整合する形式に統一されました。情報は「レベル2(災害名)注意報」「レベル3(災害名)警報」「レベル4(災害名)危険警報」「レベル5(災害名)特別警報」のように表記されます。「レベル4(災害名)危険警報」は今回の変更で新設されました。
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- 気象情報の2分類化:
- これまで「気象情報」として発表されていた様々な情報が大きく2つに分類されました。線状降水帯による大雨発生など、極端な現象を速報的に伝える情報が「気象防災速報」、気象状況等を網羅的に解説する情報は「気象解説情報」となっています。
4. 警戒レベルを踏まえた企業の防災対策
災害時に企業が従業員の安全を守り、事業を継続するためには、警戒レベルの段階に応じた対策を明確にし、BCPへ反映させた防災体制を平時から構築しておくことが不可欠です。
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- 情報収集による迅速な避難・初期対応
- 気象庁により早期注意情報(警戒レベル1)や大雨・洪水などの注意報(警戒レベル2)が発表された段階から、同庁や自治体の防災情報を随時収集し、事業所周辺の状況把握を行います。それらの情報を基に、従業員の安全確保を最優先とした、迅速な避難判断と初期対応に努めます。
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- 警戒レベルに連動した避難計画
- 事業継続計画(BCP)を策定し、警戒レベルごとの具体的な避難行動をあらかじめ共有しておくことが重要です。台風や豪雨などの進行型災害に対しては、「いつ」「誰が」「何をするか」を時系列で整理するタイムライン(防災行動計画)の策定が有効です。例えば、警戒レベル3が発表された段階で、遠方から通勤している従業員や帰宅困難になるおそれのある従業員に対して、帰宅指示を出すといった明確な基準を定めておくことが、有事の混乱を防ぎ、円滑な防災対応を可能にします。
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- ハザードマップの活用と安否確認
- 平時からハザードマップを活用して各拠点や周辺地域にどのような水害・土砂災害リスクがあるのかを把握し、従業員には事業所と自宅、両方の避難先を確認するよう周知しましょう。併せて、安否確認体制を構築し、有事の際には従業員の安否を速やかに把握します。安否確認訓練を定期的に実施することも有効です。
5. まとめ:警戒レベルを理解し、早めの避難行動につなげることが重要
警戒レベルは、自然災害から命を守るため、取るべき避難行動を5段階で示す情報です。防災気象情報や避難情報に用いられ、危険度が一目で伝わるよう発信されています。2026年5月の見直しでは、これまで複雑だった一部の防災気象情報について、情報名称に警戒レベルの数字を付記し、災害種別ごとの体系を統一することで、より直感的に理解できる運用へと変更されました。
災害時には早めの避難行動を取れるかどうかが生死を分けることもあります。既に災害が発生・切迫している段階の「警戒レベル5」では確実に安全を確保できるとは限らないため、警戒レベル4の「危険な場所から全員避難」までに行動を完了することが大原則です。命を守るため、住民や企業は平時からハザードマップなどを確認し、訓練やBCP策定などの備えを進めておくことが重要です。