総務省は8月29日、「令和8年度総務省所管予算 概算要求の概要」と来年度に重点分野として積極的に取り組むべき施策をまとめた「総務省重点施策2026」を公表しました。2026年度の重点施策の方針が予算とともに示されています。
それによると、2026年度の重点施策の柱は、活力ある地域社会の実現と健全で持続可能な地方行財政基盤の確立▽信頼できる情報通信環境の整備▽防災・減災、国土強靱化の推進による安全・安心なくらしの実現▽国際競争力の強化・経済安全保障の確保▽国の土台となる社会基盤の確保――の5つです。このうち「防災・減災、国土強靱化の推進による安全・安心なくらしの実現」は「林野火災や大規模災害に備えるための消防防災力・地域防災力の充実強化」と「通信・放送インフラの強靱化」が柱となっており、前者に関連する予算は114億円を求めています。
林野火災や大規模災害に備えるための消防防災力の充実強化は、2025年2月に岩手県大船渡市で発生した大規模な林野火災などを踏まえて掲げられています。最も予算が大きいものは「緊急消防援助隊の充実強化」に関連するもので、67.6億円を盛り込んでいます。
緊急消防援助隊とは、1995年6月に創設された消防機関相互の援助体制です。同年1月17日に発生した阪神・淡路大震災の教訓を踏まえたもので、被災した都道府県内の消防力では対応が困難な場合に全国の消防機関が連携して出動し、人命救助や災害対応にあたります。登録隊数は2025年4月1日現在、6,731隊となっています。
この援助体制を強化する目的で車両や資機材などを新規に配備する計画です。車両や資機材などは総務省予算で地方公共団体へ配備し、地方公共団体は無償で使用できます(無償使用制度)。
被災地域が広域となることが想定される南海トラフ地震などに備え、緊急消防援助隊が出動する際に情報収集・映像送信の任務を行う消防庁ヘリコプターも増機する計画です。
林野火災への備えも充実させる計画です。夜間監視や熱源探査用のドローンといった資機材を充実させ、見通しの悪い山林での火災の早期発見や状況把握を向上させます。狭くて急な傾斜の林道でも進出可能な機動性を持つ車両(林野火災対応ユニット車)も配備し、通常の大型消防車が入りにくい場所へも柔軟に対応できるようにします。
林野火災に限らず、水源の確保が難しい地域で重宝される車両として「スーパーポンパー」(海や河川の水を約2キロメートル先まで送水できる)や、山間部のように消火栓や川が近くにない場所でも大量の水を現場に持ち込める、大型水槽付き放水車も配備します。このような車両・資機材の整備で新たに4.4億円を求めています。林野火災の予防については広報・啓発を目的としたモデル事業も実施する計画です。
このほか、総務省の所管は放送・デジタルインフラの整備やサイバーセキュリティ・AIガバナンスなども含まれるため、それらの施策および予算が記されています。