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消防白書

掲載:2010年11月24日

執筆者:取締役副社長 兼 プリンシパルコンサルタント 勝俣 良介

コラム

消防白書は、火災をはじめとする各種災害の実態、消防防災行政について、豊富なデータとともに現況や課題を解説する年次報告書(※)です。消防活動について、日本国民の理解を求めることを目的として年1回(おおよそ11~12月頃)総務省消防庁より発行されています。

この白書は、WEB上で誰でも自由に閲覧することができ(記事末尾関連リンク参照)、また、紙媒体の形でも行政オンラインなどから入手することができます(インターネット上での閲覧はフリーですが、紙媒体の場合は約3,000円の費用がかかります)。

※定義は行政オンラインより引用。

         

その年度の消防活動に関わるデータが満載

消防白書には、基本的に「どのような活動を行ってきたか?」「その結果どのように結果(数値)が変化したか?」といった、消防活動それ自体と、その活動から得られたデータ(例:火災件数、発生災害別件数・・・)について、数多くまとめられています。白書には、主として次のような項目が含まれます。

  • 災害の現況と課題
  • 消防防災の組織と活動
  • 国民保護への取り組み
  • 自主的な防災活動と災害に強い地域作り
  • 国際的課題への対応
  • 消防防災の科学技術の研究・開発など

なお「消防活動」とは、消防法に規定されている災害対策活動のことで、主として災害防止・人命救出に関わる活動全般を指します。したがって火災だけが対象になるわけではありません。具体的に白書の中でカバーされているものとしては、「石油コンビナート災害対策」「林野火災対策」「風水害対策」「震災対策」「原子力災害対策」「雪害対策」「火山災害対策」「地下施設などの災害対策」「ガス災害対策」「毒物・劇物などの災害対策」「海上災害対策」「航空災害対策」など、があります。これら対策ごとに、事故データや課題、現状や将来に向けての取り組みについて解説されています。

消防白書には、上記項目に加え、その年のホットな話題に焦点を当てた特集記事も組まれることが一般的です。

【平成12年~平成21年度の特集テーマの歴史】

21年:  消防と医療の連携の推進 ~消防と医療の連携による救急搬送の円滑化~
20年:  地域総合防災力の強化 ~消防と住民が連携した活動の重要性~
19年:  切迫する大地震 ~それに立ち向かう施策とは
18年:  消防組織の体制強化 -国民の安心・安全を確保する消防防災体制の確立-
17年:  消防防災協力強化戦略 -安心・安全な社会の確立に向けて-
16年:  緊急消防援助隊と国民保護法制 -国家的視野にたった消防の新たな構築-
15年:  消防組織法・消防法の改正と新たな消防行政の展開
14年:  新たな火災予防対策の推進 ~新宿区歌舞伎町ビル火災の教訓を踏まえて~
13年:  新たな住宅防火対策の推進 -連携と実践-
12年:  阪神・淡路大震災から5年 -新たな地震防災対策を目指して-

防災白書との違いは何か?

政府からは、消防白書だけではなく、警察白書、原子力安全白書、防衛白書、防災白書など、多種多様な白書が毎年、公開されています。中でも、防災白書は、消防白書と視点が似ており、目次構成上も似た言葉が数多く見受けられます。

さて、この防災白書と消防白書については、どのような違いがあるのでしょうか?

1点目の違いは、白書を作成する目的にあります。防災白書は、法の求めにより(防災活動について国会への報告を行うため)作成されているものであるのに対し、消防白書は、消防庁が、消防活動に対する国民の理解を求めるために行う自主的な活動に基づくものです。

2点目の違いは、カバー範囲や情報量の違いです。防災白書は、国内の防災活動全てを対象とした報告書であるため、カバーする範囲が消防白書よりも広く、また、1つ1つの項目に対する情報量も比較的多い傾向があります。しかしながら、実際に消防活動の現場で得られるデータ(たとえば、火災件数であるとか、実際に死亡者数、発生傾向など)や事故事例の具体性という点では、消防白書のほうが、情報を多く掲載している場合が見受けられます。たとえば、H21年度の原子力災害対策については、消防白書では、防災白書で取り上げていない事故例について言及しています。

3点目の違いは、同じ災害でも、”火災”と関連性の強い災害(林野火災、石油コンビナート災害、原子力災害・・・など)については、やはり消防白書の方がデータが豊富です。

結論として、防災白書と消防白書、それぞれで得意な部分があり、両者は補完関係にあるということができます。

BCM・BCPの取り組みにも役立つ消防白書

消防白書は、災害の事例を多く取り扱っていること、そして、災害に対する最新の取り組みについても詳しく触れていることから、BCMにおいて「リスクアセスメント」を実施する際のデータの1つとして活用することができますし、現場スタッフのBCP意識向上研修の資料として役立てることもできるのではないでしょうか。

先に触れた防災白書とあわせ、消防白書を上図に活用することは企業に役立ちこそすれ、決して損にはならないはずです。ぜひ、まだ見たことない方もある方も、そういった情報があるということを頭の片隅においておいてください。

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