
防災気象情報は、大きく分けて「対応や行動が必要な状況であることを伝える簡潔な情報」と「対応や行動が必要な状況であることの背景や根拠を丁寧に解説する情報」 の2種類に分類できると考えられます。
後者については、2024年6月に公表された「防災気象情報に関する検討会」の最終とりまとめにおいて、さらに「極端な現象を速報的に伝える情報」(気象防災速報)と「網羅的に解説する情報」(気象解説情報)に分けられることとなりました。
防災気象情報の伝え方の改善をめぐる検討の経緯
防災気象情報とは、国や都道府県等が大雨や暴風等とそれにより引き起こされる災害への警戒を呼び掛けるために発表する、注意報や警報、特別警報、土砂災害警戒情報、指定河川洪水予報等の情報を指します。防災気象情報には市区町村の防災対応や住民の主体的な避難行動を支援する役割があり、その内容や伝え方にはさまざまな自然災害の経験を踏まえた改善が加えられてきました。
平成30年(2018年)7月豪雨では、気象庁は防災気象情報の発表に加えて市区町村への支援や記者会見等も行い、早い段階から厳重な警戒を呼び掛けたものの、必ずしも住民の避難活動につながらなかった実態がありました。これを受け、気象庁と水管理・国土保全局は、2018年から2021年にかけて有識者による「防災気象情報の伝え方に関する検討会」を開催し、防災気象情報の伝え方について改善方策を検討しました。
また、同じく気象庁と水管理・国土保全局は2021年に「洪水及び土砂災害の予測のあり方に関する検討会」を開催し、洪水予測の実施や土砂災害警戒情報等の精度向上などの取り組みについて一層緊密に連携・協働し、具体的な制度設計を進めることとしています。
これらの過去の議論を引き継ぐものとして、2022年1月から2024年5月まで「防災気象情報に関する検討会」が開催されました。2024年6月には、検討内容の最終とりまとめが公表されています。
「防災気象情報に関する検討会」による情報の体系整理
「防災気象情報に関する検討会」では、シンプルで分かりやすい防災気象情報の再構築に向け、防災気象情報全体の体系整理や、受け手側の立場に立った情報への改善が検討されました。
検討会の中間とりまとめでは、防災気象情報の役割について、気象現象の正確な観測や予測だけでなく「『いま何が起きているのか』、『今後どうなるのか』、『いつからいつまで危険なのか』、そして『どの程度の確からしさでそのようなことが言えるのか』という情報を科学的に、迅速に伝えることで、情報の受け手の主体的な判断や対応を支援すること」であるとしています。さらに、防災気象情報は「対応や行動が必要な状況であることを伝える簡潔な情報」(以下、「簡潔な情報」)と「対応や行動が必要な状況であることの背景や根拠を丁寧に解説する情報」(以下、「丁寧に解説する情報」)の2種類に分類されるとしています。
最終とりまとめではさらに詳しい検討結果がまとめられ、「簡潔な情報」については警戒レベル相当情報およびそれ以外の警報・注意報の体系整理がなされました。また、「丁寧に解説する情報」については、情報の性質を把握できるよう「極端な現象を速報的に伝える情報」と「網羅的に解説する情報」に分類して提供することが定められ、前者の名称は「気象防災速報」、後者の名称は「気象解説情報」とされました。

「気象防災速報」の内容と伝え方
気象防災速報は、「災害発生の危険度が高まっている状況で、警戒感を一段高めて速やかな防災対応や行動の判断を後押しする情報」であり、極端な現象が発生または発生しつつある場合に、警戒レベル相当情報をはじめとする「簡潔な情報」を補足するものとして発表されます。
気象防災速報は、大雨、大雪、暴風や高潮、竜巻等の突風について、顕著な現象が観測された際に発表されます。大雨については、従来の「記録的短時間大雨情報」「顕著な大雨に関する気象情報」のような短時間における顕著な大雨情報だけでなく、24時間降水量や 48時間降水量等が記録的となった場合にも気象防災速報として発表することとしています。
発表の際には、「気象防災速報」という名称に情報内容を把握できるキーワードを付すことが望ましいとされ、例えば線状降水帯による大雨情報の場合には「気象防災速報(線状降水帯発生)」、竜巻注意情報の場合には「気象防災速報(竜巻注意/竜巻目撃)」などと表記されます。
「気象解説情報」の内容と伝え方
気象解説情報は、「現在の気象状況と今後の見込みを伝え、災害への備えや今後の防災対応の検討・判断を後押しする情報」であり、気象情報や危険度の見通しを網羅的に伝えるために発表されます。
最終とりまとめによると、気象解説情報は「『地域に根差した』内容で情報を発信することが重要」であるとされ、現象や災害のイメージを正しく伝えられるよう、地元自治体や報道機関等の意見を仰ぎ、より効果的な内容を検討することが求められています。
情報の発表にあたっては、例えば従来の「全般台風情報」は「気象解説情報(台風第〇号)」とされるなど、気象防災速報と同様にキーワードを付す形で表記されます。