気象庁はこのほど、台風情報の改善について検討を重ねてきた有識者会議「台風情報の高度化に関する検討会」の報告書を公表しました。報告書では、利用者ニーズを踏まえた台風発生前の「早めの備えを促す情報」と台風発生後の「台風の特徴を伝えるきめ細かな情報」について改善策が提示されました。気象庁は技術開発やシステム整備を進め、2030年ごろから改善策を反映した情報提供を始める方針です。
台風発生前の「早めの備えを促す情報」は、住民の防災への備えや事業者による早めの事業計画策定などを支援するものとなっています。これまで発表していなかった新しい情報として、台風発生数の見通しを数か月前から提供し、1か月前までに台風が存在する可能性の高い領域を示す情報を発信します。また、1週間前までに熱帯低気圧が台風に発達する可能性を提供します。
提供方法は、▽確率や地図形式の情報に加えて、わかりやすい見出しや解説を提供▽実況情報の提供により状況の変化を伝えることで理解を助ける▽台風発生後も含め様々な時間スケールの情報をシームレスに提供する、と明記しました。
具体的には、台風が来る前から気象台の担当者や気象防災アドバイザーは、自治体や公共交通機関に対して台風の見通しに関する情報を早期に共有し、わかりやすい解説を提供して防災対応を支援します。また、気象庁は報道機関や気象予報士など情報の「伝え手」と連携し、「伝え手」は早い段階から台風の見通しを住民向けにわかりやすく解説します。さらに、SNSなども活用して、台風情報の見方や基本的な知識を効果的なタイミングで発信し、住民の正しい情報理解と防災行動を促します。
一方、台風発生後の「台風の特徴を伝えるきめ細かな情報」は、より実態に近い風分布などに応じた住民の主体的な行動や公共交通機関の計画運休、事業者の事業計画運用、自治体の避難情報発令の判断などを支援するものとなっています。
台風の接近や上陸が予想されたとき、5日先までの台風進路予報を現状の24時間刻みからより細かい6時間刻みで提供し、暴風と強風の予報は警戒などすべき範囲・期間をより適確に提供、高潮・波浪は予報期間を現状の2日先から5日先に延長し、台風情報と整合した分布情報(※1)を提供するとしています。
提供方法は、▽気象庁ホームページで既存の様々な防災気象情報等と一体的に表示▽文字情報や電文でも重ね合わせや加工がしやすいデータ形式で提供▽温帯低気圧化後の低気圧の情報も元の台風と結び付けられる形で提供すると記しています。
具体的には、台風の個々の特徴や予報の不確実性の大きさ、ほかの予報シナリオなどについてより詳細でわかりやすい解説を行い、必要に応じて予報の根拠となるデータも併せて活用することが望ましいとしています。
このほか、新たな台風情報の利活用に向けた普及啓発施策などがまとめられています。
※1 現状、分布情報を提供できているのは波浪のみで予報期間は2日先まで。高潮の分布情報は提供できていない。新たな情報では5日先までの高潮・波浪の分布情報を発表する。