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なぜ、ポジティブリスクが出てこないのか?

掲載:2022年05月20日

執筆者:取締役副社長 兼 プリンシパルコンサルタント 勝俣 良介

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目次

皆さん、こんにちは。
新型コロナの感染拡大も少し落ち着いてきましたね。前向きなニュースが増えるといいですね。

「前向き」と言えば、リスクマネジメントは企業価値を向上させるツールだとよく言われます。それは、「向かい風だけでなく、追い風もまた不確実性なのだから、捕まえてコントロールしない手はないよね」という発想があるからです。しかし、実際はどうでしょう。おそらく、話題に上るのはネガティブなリスクばかりではないでしょうか。どうしたら、ポジティブなリスクが出てくるのでしょうか。

答えを先に言っておくと、これは意識の問題です。身近な例で考えてみましょう。
例えば、F1カーレースで「優勝」を狙うドライバーの気持ちになってみてください。
前を走っている敵もプロ。でも、人間ですからミスもあります。路面や天候がどう変わるかわからない不確実性もあります。あなただったら、レースに勝つために何を考えますか?

この場合の選択肢としては、以下のような考え方が挙げられそうです。
選択肢A)よし、少しでもカーブで隙間が空いたら、多少危険を冒してでもアクセルをふかしてオーバーテイクしよう(抜かそう)。
選択肢B)自分がミスをしてレースを棄権するなんて事にならないように、カーブでは安全に運転しよう。雨が降ってきたら、すぐにタイヤを変えよう。

さて、どちらが追い風(ポジティブリスク)を捕まえられそうな意識の持ち方だと思いますか?どこでブレーキを踏むか等を考えるBよりも、どこでアクセルをふかすかを考えているAの方が、少なくとも「優勝」するチャンスは大きそうですよね。

ビジネスでも一緒です。例えば、「コスト削減」という目的があったとします。この時「どうやって品質を落とさずコスト削減を実現するか」よりも、「コスト削減をするために、何を犠牲にしてもいいのか」という意識で考えたほうが、追い風(ポジティブリスク)を捕まえられそうだと思いませんか?

同様の考え方を、私たちニュートン・コンサルティングに当てはめてみます。私たちの目的は、お客様に対して「実効性あるBCP支援」を行うことです。この目的を実現するために、「ご支援にあたってはまずトップインタビューをさせていただき、トップや当事者をガンガン巻き込んだBCP策定ワークショップを提案しよう」と私たちは考えます。結果的にハードルの高さから事務局の賛同をえられず、仕事を受注できなくなる可能性があっても、です。私たちは「トップインタビュー」を目的達成のための追い風だと考えているため、失注の危険を冒してでも、あえてお客様にご提案するのです。

これらの事例、いかがでしたでしょうか。いずれにも共通しているのは、目的達成のために、「どうやって守るか」ではなく、「どこで危険を冒して攻めるか」を考えているところです。「どうやって守るか」「どうやって事故を起こさないようにするか」「どうやってコンプライアンス違反を犯さないようにするか」……という目線だけで考えていれば、ネガティブリスクばかりが出てくるのは当然です。繰り返します。「目的達成のためにどういうリスクを取るか」を考えることがカギです。ちなみに専門家は、この考え方をリスクアペタイト(リスク選好)と呼びます。

皆さん、追い風を捕まえるために、明日から意識の持ち方を変えてみてはいかがでしょうか。

 

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