リスク管理Naviリスクマネジメントの情報サイト

やらされ感の強い全社的リスクマネジメント(ERM)を劇的に変える方法

掲載:2022年07月20日

執筆者:取締役副社長 兼 プリンシパルコンサルタント 勝俣 良介

メルマガコラム・バックナンバー

         
目次

こんにちは。勝俣です。

職業柄、たくさんの企業関係者とリスクマネジメントの話をする機会があります。そこでよく聞く悩みの一つが、「どうしたらリスクマネジメントの関係者、特に役員や部門長を“前のめり”にさせることができるのか」というご相談です。

どうして“前のめり”になってくれないのでしょうか。そこには色々な要因があります。やっている内容が面白くない、やった・あるいはやらなかったところでそれが自分にどういう影響があるかわからない、本質的に何を期待されているかがわからない、そもそも頑張ったところで評価との結びつきが不明である等々、さまざまな理由があるでしょう。全てについてここで触れることはできませんが、一つには「リスクマネジメントは結局、誰のためにどういう目的で行うものなのか。そこへの自分の関与はどうあるべきなのか」という至極当たり前の命題について、関係者の方々に正しく理解いただいているようで、実は理解いただけていないためではないのかなと思います。

では、リスクマネジメントは誰のためにどういう目的で行うものでしょうか。答えから先にお伝えしておくと、リスクマネジメントは、リーダーが、リーダー自身の目標達成のために行う活動です。リスクマネジメントは、いわばリーダーの目的・目標達成支援ツールなのです。そしてここでいうリーダーとは、達成すべき目的・目標を抱えるあらゆるリーダーのことです。つまり、対象が会社組織全体の目標であれば、そのリーダーは社長になりますし、事業部の目標であれば、そのリーダーは事業部長です。目標は階層ごとにあるでしょうから、それぞれに対して部門長、課長、係長とリーダーは変わっていくことでしょう。もちろん、対象がプロジェクト目標であれば、リーダーはそのプロジェクトリーダーです。ちなみに、個人でも目標を掲げることがあるでしょうが、その際のリーダーはその人(あなた)自身ということになります。

「え?リーダーのため?」「リスクマネジメントが目標達成を支援する?」と疑問に思った方のために、身近な事例を使ってその理由を説明しておきます。

ものすごく卑近な例で恐縮ですが、私の例を挙げます。昔、私は個人的に「年間50冊の本を読む」という目標を立てたことがあります。その際に単に「50冊読む」と決めて臨んだのですが、1~3月こそ順調に読書が進んだものの、4月以降はずるずるとペースが落ちて、蓋を開けてみればその年の読書数は目標に大きく届きませんでした。原因を振り返ってみると、次のようなものでした。

  • 仕事が忙しい時期に本に手が出なくなった
  • いざ読み始めた本が面白くなかった時、そこでスタックしてしまった
  • 理由もなく、ただただ活字を見たくないという時期があった
  • 分厚い本を買った時、持ち歩けないので隙間時間ができても読めなかった
  • 動画アプリなどに誘惑され、読む時間を失ってしまった 等々

お気づきかと思いますが、どれも容易に想像できる落とし穴です。もし、私が本気で目標達成をしたければ、こうしたリスクをあらかじめ想定し手を打っておくべきでした。そう、私が本気だったなら、です。「つまり本気じゃなかったのかな」と反省もしました。そこで翌年は、同様の目標を達成するために一捻りを加えることにしました。

  • どんなに忙しくても毎晩寝る前に10分は読む時間をとる。それで読みたくなければそれ以上は読まない
  • 面白くない本に捕まった時は固執せず、次の本に進む
  • 分厚い本の場合は電子書籍で購入し、外出先でも気軽に読めるようにする

結果はと言えば、おかげで50冊の本を読むことができました。ちなみに、これらの対策のうち、特に一番目の対策が有効に機能しました。活字を見たくなくても、いざ10分でも読み始めてみると、その後も読み続けたくなることが多かったのです。意外な発見でした。

この事例は私個人の例ですが、このように「リスクマネジメント」が、私自身の(人生の)リーダーである私が掲げた目標達成を明らかに助けてくれました。これはビジネスにおけるリスクマネジメントでも同じことです。組織が大きいとか業務が複雑だとかは関係ありません。本質的には同じことです。リーダーが自らの目標を「本気で達成したい」と思うなら、当然使うべきツールです。私の事例からもおわかりいただける通り、リスクマネジメントを使わない、または中途半端な使い方をするなら、「本気度は所詮その程度のもの」ということです。だからもう一度言います。リスクマネジメントは、リーダー自身のためのツールであり、リーダー自身が自らの本気度に合わせて、率先してリスクマネジメントリーダーシップを発揮するべきなのです。

先の役員や部門長は、このようなことを理解してリスクマネジメント活動に従事していらっしゃいますでしょうか?「事件は現場で起きている!」なんて某映画のセリフがありますが、現場主義を意識するあまり、短絡的に「リスクマネジメントも現場主導でやればいい。経営は現場から上がってきたものを見て口を出すだけでいい」と勘違いしていらっしゃる方はいないでしょうか?リスクマネジメントを通じて「部門長や役員が登りたいと思っている山」は、何ですか?それを一番達成したいと思っている方は誰ですか?本気で達成したいですか?リスク洗い出しをされる方はその「リーダーの目指す山」を理解して手伝っていますか?リーダーが本気でその山に登りたいなら、それに見合ったリーダーシップを発揮していますか?いや、発揮しなければいけないことを理解していますか?

「なるほど。理解はできる。でも、リスクマネジメントリーダーシップってなんだ!?」と思った方がいらっしゃるかもしれません。その疑問に答えようと思うと、コラムではいくら余白があっても足りません。一方で、私としても広く多くの方に、この問題や解決のための勘どころをお伝えしたいと思っています。こうした事情から、この度、このテーマについて本を執筆しました。

もし、このコラムに少しでも興味が湧いたという方がいらっしゃいましたら、ぜひ、この本をご覧になっていただきたいです。また、リーダーの方々にもお伝えいただければと思います。組織の各階層のお一人お一人が正しいリスクマネジメントの知識を持ち、正しい使い方をすれば、間違いなく組織の目標達成確度は向上するはずです。

「なぜリスクマネジメントは組織を救うのか リーダーのための実践ガイド」(ダイヤモンド社) 勝俣良介 ニュートン・コンサルティング社監修 7月27日発行

 

当社のWebサイトでは、サイト閲覧時の利便性やサイト運用および分析のため、Cookieを使用しています。こちらで同意をして閉じるか、Cookieを無効化せずに当サイトを継続してご利用いただくことにより、当社のプライバシーポリシーに同意いただいたものとみなされます。
同意して閉じる