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イーロン・マスクに学ぶ

掲載:2022年11月29日

執筆者:取締役副社長 兼 プリンシパルコンサルタント 勝俣 良介

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Twitter社の買収で、世界中を騒がせているイーロン・マスク氏。メディアで彼の名前を見かけない日はありません。

先日、YouTubeで、2017年に公開されたイーロン・マスク氏のTED動画を視聴しました。はじめは心半分といった感じで見ていたのですが、気がついたら引き込まれていました。特に動画の終盤の内容が強烈に印象に残ったので、すぐにメモを取りました。

“……in 1969, we were able to send somebody to the moon. 1969. Then we had the Space Shuttle. The Space Shuttle could only take people to low earth orbit. Then the Space Shuttle retired, and the United States could take no one to orbit. So that’s the trend. The trend is like down to nothing. People are mistaken when they think that technology just automatically improves. It does not automatically improve. It only improves if a lot of people work very hard to make it better. And actually it will, I think, by itself degrade actually. You look at great civilizations like ancient Egypt and they were able to make the pyramids, and they forgot how to do that. And the Romans, they built these incredible aqueducts. They forgot how to do it.”

訳すとこんな感じです。

「……1969年、私たちは誰かを月に送ることができました。1969年です。その後、スペースシャトルが登場しました。スペースシャトルは地球の低軌道にしか人を送ることができませんでした。その後、スペースシャトルは引退し、アメリカは誰も軌道に乗せることができなくなりました。これがトレンドです。無に帰すようなトレンドです。人々は、技術が自動的に向上すると誤解しています。技術は自動的に向上するものではありません。多くの人々がより良いものにしようと懸命に努力することによってのみ、技術は向上するのです。そして、実際には、それ自体で劣化していくのです。古代エジプトのような偉大な文明を見ると、彼らはピラミッドを作ることができましたが、その方法を忘れてしまったのです。古代ローマでは、信じられないような水道橋を作りましたが、その方法を忘れてしまいました。」

イーロン・マスク氏は「技術」に対して発言していましたが、私はこれを聞いて、「技術」といってもメカニカルなモノやモノ作りのノウハウだけの話ではなく、プロセスや仕組みなど幅広く当てはまる発言だと感じました。具体的には例えば、ERM(全社的リスクマネジメント)です。内部統制もそう、CSIRTもそう。危機管理やBCPもそう。

イーロン・マスク氏が、技術それ自体は劣化していく性質を持っている、と語っていますが、「意志」がないプロセスや仕組みも徐々に形骸化していくのでしょう。あの偉大なピラミッドやスペースシャトルのノウハウですら消え去っていくのですから、「より良いものにしたい」という「人の強い意志」がなければ、組織の中で作るプロセスや仕組みなんて、それこそあっという間に形骸化していくのではないでしょうか。

よく考えてみれば、とても当たり前のことですよね。私たちは仕組みを通じて何を実現したいのか。そのためにどんな仕組みであるべきなのか。どういう仕組みにしたいのか。それらを組織の多くの人が「より良いものにしたい」という想いが存在しているのか――それらが大事だと言うことは。

ERMと言う仕組みを一度入れたからあとは大丈夫。。。BCP文書を整備したからあとは大丈夫。。。

そんなことになっていないか。

動画をみて、そんなことを思いました。

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