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リスクマネジメントコンサルタントの作り方 ~パート2~ リスクマネジメントの必要性を身をもって学んだ日

掲載:2023年03月29日

執筆者:取締役副社長 兼 プリンシパルコンサルタント 勝俣 良介

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目次

こんにちは、勝俣です。

リスクマネジメントコンサルタントという職業にはどんな道のりで辿り着くものなのか。昨年、その例をご紹介するために私個人の体験談をベースにした「リスクマネジメントコンサルタントの作り方 ~パート1~」を書きました。そこでは、当初、リスクマネジメントコンサルタントになるなんて夢にも思わなかったこと、ただ漠然と「将来は絶対にイギリスで働く」という想いを軸に、社会人人生をスタートさせたことをお伝えしました。イギリスでの就活に有利なスキルはなんだろうと考え、ITセキュリティの会社に入り、その時に学習したことがなぜか今の自分に役立っていることも述べましたね。今回はその続きです。

社会人2年目を過ぎたころ、辞めた元上司から声をかけられました。「地元奈良でインターネットサービスプロバイダー(ISP)を立ち上げたい。ついては技術責任者を探しているが、全てを任せるから、うちの会社に来ないか」という誘いでした。社員はたったの5人。見知らぬ土地。不確実性しかない会社。しかし、全てを任せてもらえるなら、無茶苦茶、良い経験になるんじゃないか。何よりも、会社を立ち上げるなんて面白そうだ。という短絡的な発想で迷うことなく元上司の誘いに乗りました。ちなみに「一応、給与は前職と同じくらいを絶対に保証するから」といった言葉も、少し私の背中を押してくれました。

私にとっては社会人人生第2章。当初の約束通り、ありとあらゆることを任せてもらえました。ネットワークからサーバ構築・運用、アプリ開発・・・全てです。社会人1年目に「スキルの身につけ方」は学んでいたので、独学は全然苦になりませんでした。毎日が新鮮で楽しかったことを覚えています。

さて、この時に何を学んだのか。それが、リスクマネジメントコンサルタントという職業にどうつながったのか、どう役に立っているのか、当時を少し振り返ってみたいと思います。

ISP立ち上げに加わって、一番の収穫は「あらゆる失敗を経験できたこと」です(ただし、ITセキュリティだけは社会人1年目から身につけていたので「セキュリティ事故以外は全て経験できた」という表現のほうが正しいかもしれません)。「おいおい、リスクマネジメントを推進するコンサルタントが、そんなこと言ってていいの!?」という声が聞こえてきそうです。実際、当時の私はリスクマネジメントとは無縁の世界にいたと思います。

どんな失敗を起こしたかというと、たとえばサーバの設計・構築での失敗です。自分の腕さえあればどうとでもカバーできると思い、とにかく安い部品を仕入れて費用対効果の高いマシンを組み上げることに専念。しかし「安かろう悪かろう」とはよく言ったもの。自宅でたまに使う私用パソコンならまだしも、24時間365日ずっと稼働し続けなければいけない機械は、遠慮なしにバンバン壊れていきました。

「自分の腕さえあれば」とイキっていたことも事態を悪化させたと思います。マシン環境がそんな状態なのに、極度の属人化を突き進んでいました。結果、トラブルがあれば真夜中であっても休祝日であっても叩き起こされ、対応するのは自分一人。まるで見えない鎖に繋がれている囚人です。こんな状態でしたから、「自分一人が障害対応に困らないように準備できればそれでいい」となり、いよいよ悪循環です。業務標準化なんて露ほども思いませんでした。極め付けが、真夜中にサーバ全台が一瞬にして一斉ダウンするという最悪の事態。過労もあったのだと思います。メンテナンス中に、サーバと電源供給装置をつなぐ電源タップのスイッチに、自分の膝がぶつかりました。スイッチは無情にもパチリという音をたて「オフ」に。このように、やれるミスは一通り経験したように思います。

同時に、どんなに立派な対策を講じようが「絶対はない」ということも学びました。安価なマシンで大火傷をした私は、今度はビジネス向けのプロ仕様のハードウェアを購入。ネットワーク装置や20台あまりのサーバーが、ピカピカでおニューのハードウェアに入れ替わりました。だいぶマシにはなりましたが、地獄から解放されるまではいきませんでした。システム障害はどうやったってゼロにはならないのです。

「どんなものでも、動くものはいつかは壊れる・止まる」「物事に絶対はない」。そんなごくごく当たり前の摂理に気づくまでどれほどの時間を要したことか。ハードウェアやソフトウェアが何らかの問題を起こさずに1ヶ月動いたという記憶はありません。余談ですが、「絶対に保証するから」と言われていた私の給与も、会社が資本金を食い潰し、入社3ヶ月後からいきなり半分になりました。今では笑い話ですが、ここでも「絶対はない」を噛み締めた瞬間でした。

このように振り返ってみますと、社会人3~4年目は「リスクマネジメントを一切やらずに業務をしたらどうなるか?」という実証実験を自ら行っていたような気がします。当時、リスクマネジメントという言葉自体を知りませんでしたから、明確にリスクマネジメントという観点から反省したわけではありません。が、少なくとも「世の中で推奨されているような備え(ベストプラクティス)の検討・実践」は、遠回りのようで近道なんだな、ということを強く自分の体に刻み込んだのはこの時です。

「この経験があったので、私はリスクマネジメントコンサルタントになることを決意しました」と言えればわかりやすいのですが、先述の通り、当時はまだリスクマネジメントのリの字も知りませんでした。むしろ、大火傷はたくさんしたので十分に学んだ。もうこれで大丈夫。怖いものは何もない。海外でも絶対にやっていける。そう思って意気揚々とイギリスに向かったのでした。

その話は次回以降にさせていただきたいと思います。お楽しみに!

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