平成26年度中小企業事業継続計画(BCP)に関する調査 調査結果レポート

調査概要

中小企業庁が「平成25年度中小企業事業継続計画(BCP)に関する調査」において作成した「儲かるBCPにするための自己チェックシート」に基づき、アンケート調査とヒアリング調査を実施しました。

調査の目的は、以下の2つです。

  • BCPに取り組むことで、どの様な経営上の効果(儲かる)があるのか
  • 経営上の効果を生むため、どの様な取組が必要なのか

調査の流れは、以下の通りです。

調査の流れ

アンケート調査

(1) 調査概要

調査方法: Webによるアンケート調査
調査対象: BCP策定済みの中小企業の経営者もしくはBCP担当事務局
調査項目: 下記の通り「調査票」を作成
アンケート調査 調査項目

(2) 回答結果

173社から回答を得ることができました。

業種および従業員数

回答した企業の中でも、「製造業」が突出して多く、次いで「卸売業」「建設業」からも多くの回答を得ることができました。 従業員数別に回答企業を分類すると、「51人~100人」規模の企業からの回答が多く、次いで「101~300人」「21~50人」と続きます。

業種および従業員数

集計結果

「儲かり度チェック」のチェック項目ごとのチェック数を集計した結果、BCPの取組による効果の実感として、「災害対応力の向上」に対するチェック数が最も多く、続いて、「環境整備・業務改善」「取引先の信頼向上」「人材育成・雇用改善」の効果を実感していると回答した企業が多く見られました。

このことからも、BCPへの取組が経営上の効果に繋がることが改めて立証されました。

更に、「売上高・取引先増」「資金繰り改善」などの効果を実感できている企業が見られることは、今後BCP策定を目指している企業、現在BCPの取組を進めている企業にとって、BCPに取り組む良い刺激となるでしょう。

儲かり度チェック

(3) 分析結果

「儲かり度チェック」と「儲かるための手段チェック」の結果を分析した結果、効果に繋がったと思われる主な「儲かるための手段チェック」項目を下記の通り抽出しました。

  「儲かり度チェック」項目
1 2 3 4 5 6
人材育成・雇用改善 環境整備・業務改善 売上高・取引先増 資金繰り改善 取引先の信頼向上 災害対応力の向上
83社 106社 20社 55社 106社 146社





























1 各従業員が実施できる業務とそのレベルを一覧化し、教育計画と効果の把握方法を見直す 34社 20社 1社 2社 18社 45社
2 誰もが業務を実施できるよう業務行程を簡素化する 31社 21社 3社 2社 22社 46社
3 選び出した中核となる事業別の特定業務や人、物、金、情報、相互支援の現状を把握し、効果的に活動できているか確認する 26社 41社 10社 8社 40社 60社
4 設備の固定に当たり、工場内全体のレイアウトを点検し、把握された問題点を改善する 20社 50社 2社 4社 20社 59社
5 基本方針を従業員に説明し、平時でも有事でも自らが行動できる従業員を育成する 20社 53社 10社 6社 59社 92社
6 基本方針に沿った事業計画を展開する 11社 32社 10社 6社 40社 50社
7 財務診断の過程の中で把握された問題点を改善する 10社 24社 4社 25社 20社 41社
8 取引先等に自社のBCPへの取組をアピールする 16社 31社 8社 5社 50社 53社
9 自社ホームページに基本方針を開示する 7社 20社 7社 3社 23社 22社
10 中核となる事業の検討過程で把握された業務上の問題点を改善する 25社 30社 7社 7社 27社 35社

ヒアリング調査

(1) 調査概要

アンケート調査では、どの「儲かるための手段チェック」がどの「儲かり度チェック」に対して効果を上げたのか特定することが困難であることから、アンケート調査で抽出した効果につながると思われる手段に対して、ヒアリング調査を実施しました。

調査対象: 「儲かり度チェック」に対するチェック数が多い企業50
調査項目: チェックを入れた「儲かり度チェック」項目につながった具体的な手段

(2) ヒアリング結果

BCP取組企業における、経営上プラスの効果があった平時の具体的な取組内容として、数多くの声を集める事ができました。

ヒアリング結果

① 各従業員が実施できる業務とそのレベルを一覧化し、教育計画と効果の把握方法を見直す
  • BCP策定をきっかけに誰もが理解できる業務マニュアルを改訂し、新入社員教育等で活用することで人材育成につながった
  • 業務の優先順位を定め対応したことで、平時のちょっとしたトラブルにも作業が円滑に進むようになり、環境整備と業務効率の改善につながった
  • 従業員が実施できる業務とそのレベルの一覧化教育計画/効果把握の見直しによる業務効率改善につながった。
② 誰もが業務を実施できるよう業務行程を簡素化する
  • 多技能オペレータの育成につながり突発的な大量注文に対して作業時間を大幅に短縮して納入ができた
③ 選び出した中核となる事業別の特定業務や人、物、金、情報、相互支援の現状を把握し、効果的に活動できているか確認する
  • 自社の業務分析を行ったことで、今まで無関心だった工場内の業務でも災害時には優先的に復旧させる必要があることを理解でき、業務効率の改善につながった
④ 設備の固定に当たり、工場内全体のレイアウトを点検し、把握された問題点を改善する
  • 危険個所を見直ししたことで、日ごろからの整理整頓につながり、環境整備につながった
  • 重要な設備の保護のため、電源やガスの緊急遮断装置を取り付け環境整備を強化した
⑤ 基本方針を従業員に説明し、平時でも有事でも自らが行動できる従業員を育成する
  • 教育、訓練により担当者以外でも作業フローを頼りに代行を務めなければならないという意識が生まれ、個別対応からグループ対応へシフトする効果が生まれ、人材育成につながった
  • 携帯するサバイバルカードを作成したことで災害対応力の向上につながっている
  • 朝礼等で基本方針を従業員に説明することで人材育成につながっている
⑥ 基本方針に沿った事業計画を展開する
  • 安定供給する、という経営理念を具現化でき、顧客に責任をもって営業活動ができるようになったことで新規案件の獲得につながった
⑦ 財務診断の過程の中で把握された問題点を改善する
  • 地震対策(破損落下防止)のために照明をすべてLED化し光熱費をさげることで資金繰りや設備投資の効率化ができた
⑧ 取引先等に自社のBCPへの取組をアピールする
  • 新規案件の獲得に際してBCPの取組を説明することで会社の姿勢を評価いただき、売上高の増加につながった
  • 取引条件の中にBCP策定という項目があるため、BCPに取り組んでいることを報告することで取引が継続している
  • BCPの取組に関する調査票が送られてきており、取り組んでいることを即答できることで、信頼と受注の維持につながっている
  • 請求書送付時に自社BCP活動資料を同封してアピールし、信頼を得た
⑨ 自社ホームページに基本方針を開示する
  • BCPの取組をホームページでアピールすることで取引先からの信頼向上につながった
⑩ 中核となる事業の検討過程で把握された業務上の問題点を改善する
  • 業務の洗い出しをすることで、業務の棚卸ができ、業務効率の改善につながった
  • 多能工化の必要性を認識でき、人材育成につながった

まとめ

これまでBCPは平時の活動にも効果があると定性的な感覚値として言われていましたが、今回アンケートを通して定量的な数値として確認できたことは大いに価値のある結果だと言えます。

今後BCP策定に取り組む中小企業・小規模事業者は、BCP策定初期の目標設定段階から、有事対応のみならず平時の効果も視野に入れて取り組むことで、災害対応力強化と共に経営上の効果を高めることが期待できます。

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