リスク管理Navi
リスク管理Naviは、リスクマネジメント(Risk Management)に関しての情報サイトです。
i-PRO 様
お客様 |
テクノロジーパートナー&システムプロダクトマネジメント ディレクター 山畠 利彦 様 PSIRT & DevOps マネージャー 石川 誠 様 PSIRT & DevOps シニアエンジニア 松本 和也 様 |
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ニュートン・コンサルティング |
取締役副社長 兼 プリンシパルコンサルタント 勝俣 良介 アソシエイトシニアコンサルタント 井本 龍彦 コンサルタント 近藤 駿輔 コンサルタント 千葉 悠椰 |
i-PRO様は、パナソニックから独立したセキュリティ、セーフティ、医療用エッジコンピューティングカメラの世界的リーディングカンパニーです。60年超におよび培われた高品質で信頼性の高いハードウェアを用い、画像を意思決定の現場で活用する最先端技術を開発しています。責任あるAI開発とコンプライアンス遵守の取り組みを推進し、堅固なサイバーセキュリティを備えた持続可能なテクノロジーを提供しています。2023年からは国連グローバル・コンパクトの参加企業です。
この度、「AIマネジメントシステム(ISO/IEC42001)構築支援サービス」を導入いただいた経緯と成果について、テクノロジーパートナー&システムプロダクトマネジメント ディレクター 山畠 利彦 様、PSIRT & DevOps マネージャー 石川 誠 様、PSIRT & DevOps シニアエンジニア 松本 和也 様の3名にお話を伺いました。
山畠:私たちi-PRO株式会社は、2019年にパナソニックから独立し、主に映像セキュリティおよびメディカルビジョン分野で事業を展開しています。映像セキュリティ事業では、セキュリティカメラやレコーダー、それらを管理するソフトウェアの開発・製造・販売を行っており、メディカルビジョン事業では、医療用カメラの開発・製造・販売を手がけています。
なかでも映像セキュリティ分野においては、早くからAIの活用に取り組み、現在ではほぼすべてのカメラ製品にAI機能を搭載しています。これにより、パートナー企業やお客様に対して最新のAIソリューションを提供しています。AIによるセキュリティ機能に加え、人数カウントなどの機能はマーケティング用途にも活用可能であり、当社製品の大きな強みとなっています。
山畠:元々当社ではAIの倫理的な活用を意識しており、2023年12月に「AI倫理原則」を定め、「AI倫理原則委員会」を設立しました。この「AI倫理原則」は、政府から出されたガイドラインなどを参考にしつつ、我々の組織に合うよう独自で作成しました。日頃の業務においては、AI倫理に関するチェックプロセスを定義して、運用しています。
AIを強みにグローバルで販売を広げる中で、自分たちが「責任あるAI活用をしている」ことをお客様に客観的に評価いただき信頼していただきたい、そして組織の取り組みをさらにブラッシュアップしたいと考え、ISO/IEC 42001(正式名称:ISO/IEC 42001 情報技術-人工知能-マネジメントシステム、通称AIMS)の取得に踏み切りました。
松本:ISO/IEC 42001は2023年12月に発行されたばかりのまだ新しい規格で知見も少なく、どのあたりが勘どころかという部分についても不安がありました。ですので、コンサルティング会社の協力を得ながら取り組んだ方が効率的に取得できると思い、御社にお願いすることにしました。
松本:いくつかコンサルティング会社を調べたのですが、相談すると「まだ準備ができていない」、「もう少し待ってほしい」というようなお返事が返ってきました。そのような中、「できますよ」と言ってくださったのはニュートン・コンサルティングさんだけだったのです。ニュートン・コンサルティングさんは早くからAIリスクについての研究も進めていらっしゃり、他の規格の支援経験も豊富だったので、安心してお願いすることにしました。
石川:今回のプロジェクトでは、AIMS認証取得に向けて、構築から審査までニュートン・コンサルティングさんと伴走して取り組みました。
Phase 1の構築フェーズでは、AIMSの一般要求事項と附属書Aに基づき、徹底した準備をしました。具体的には、トップインタビューやAI方針の策定、AI運用ルールブックの作成、AIリスクアセスメントの実施などです。従業員への教育活動、内部監査の実施、マネジメントレビューの確認なども行いました。
Phase 2の審査サポートフェーズでは、Phase 1で構築した基盤を活かし、審査を円滑に進めるための対策を行いました。一次審査では質問対応や資料準備などを、二次審査に向けては一次審査で指摘された事項への対応と最終確認を進めました。審査当日のサポートや調整、審査後の是正対応についても迅速かつ的確なアドバイスがあり、最後まで私たちの認証取得を支えてもらいました。
松本:既存のQMS(品質マネジメントシステム)との整合性を確保するのが、難しかったと思います。今回、AIMSとして定義すべきプロセスの多くは従来QMSで管理している業務に関わるものでした。そのため、ISO/IEC 42001 の要求事項を理解しながら、既存のQMSにAIのエッセンスを組み込むかたちで拡張していく必要がありました。特に、QMSとAIMSの両方に共通して求められる事項については、それぞれの規格で整合的に管理する必要があり、どちらにどの項目を持っていくかなど、ニュートン・コンサルティングさんのアドバイスが非常に役に立ちました。あわせてISMSとの整合性も考えなくてはならなかったので、全体の設計には相応の工夫と労力を要しました。
松本:やはり、お客様やステークホルダーに対して「弊社の中にはきちんとしたAIMSがある」と証明できるようになったのが成果だと思います。また、AIに関するマネジメントシステムを系統立てて構築できたのも良かったです。
石川:今回AIMSを取得したことについて、特に北米や欧州のステークホルダーから高い評価を得ています。欧州の販売拠点を担当している社内の者からも「AIMSの取得を販売に活かしていきたい」という反応がありました。そこも非常に良い成果だと感じています。
山畠:先ほどもお話しましたが、既存のQMSなどの弊社の状況を踏まえながら、ISO/IEC 42001の要求事項に対して必要なところを根気強く、厳しく指導していただけたのが良かったと思います。監査についてのサポートも心強かったです。
石川:勝俣さんや井本さんから「リスクとの付き合い方」を教えていただいたのも勉強になりました。ISO/IEC 42001を読み込んで、一つひとつの事項について「ここはこう考えなくちゃいけない」と専門家の観点からアドバイスを頂けたのは、なるほどと理解が深まり、納得感のある学びを得ることができました。
松本:今回、AIMSを構築してスタート地点に立ったところなので、運用を継続しながらプロセスの改善をしていくことがまずは必要だと考えています。欧州AI法や各国の法規も出てきていますので、そのあたりにも目を配りながら必要な対応を取り、ブラッシュアップしていきたいと思います。
※インタビュー内容および所属先は取材当時のものです。
名称 | i-PRO株式会社 |
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所在地 | 東京都港区港南二丁目15番1号 品川インターシティA棟14F |
設立 | 2019年 |
事業内容 | セキュリティ・医療・産業分野向け機器・モジュールの開発、製造、販売 システムインテグレーション、施工、保守、メンテナンス及びこれらに関するサービスを含む各種ソリューションの提供 |
利用サービス | AIマネジメントシステム(ISO/IEC42001)構築支援サービス |
アソシエイトシニアコンサルタント
井本 龍彦
国内ファーストグループを切り拓く強い意志と、未来を見据えたAIガバナンス構築
i-PRO様は国内で前例のない中、短期間でのAIMSの構築、そして認証取得という快挙を達成されました。i-PRO様のAIMS取得に向けた強い意志と、困難に屈しない実行力の賜物と深く感銘を受けております。
今回の認証取得では数々の重要な局面がありましたが、i-PRO様と密接に連携し進めることができました。特に、既存のISMSやQMSといった他のマネジメントシステムとの整合性を図り、文書体系の整理を通じた効率的な構築を実現できたこと、そしてAI法への対応を見据え、将来的な動向まで視野に入れたアドバイスを提供できたことは、今回のプロジェクトの大きな特長と言えます。
AIMS認証取得は、単なるマネジメントシステムの構築に留まらず、現在議論が進むAI法への対応においても揺るぎない基盤となります。今回のi-PRO様の事例は、AI活用を推進する多くの企業にとって、その価値と重要性を示す、非常に有益なモデルケースとなることと確信しております。今後も、AI法への対応を含め、i-PRO様のAIガバナンスのさらなる強化に向け、継続的なご支援をさせていただければと思います。