東京インキ 様

工場火災にフォーカスしたBCP訓練により
従業員の危機意識の醸成に成功

東京インキ様は1923年に印刷用インキの製造・販売からスタートし、現在はB to B化学メーカーとして多様な事業を展開されています。オフセットインキ、グラビアインキ、インクジェットインクといった印刷用インキはもちろん、それらの開発で培った技術を活かして樹脂着色剤や樹脂成形品、加工品などを最終製品メーカーに納入し、一般消費者の生活を様々なシーンで支えていらっしゃいます。

 

この度、BCP訓練・演習支援サービスをご利用いただいた経緯と成果について、プロジェクトメンバーの皆様にお話をうかがいました。

 

―貴社の事業内容をお聞かせください。

総務部長兼法務課長
富山 剛志 様

富山:もともとは社名の通り、紙に印刷するオフセットインキやプラスチックなどに印刷するグラビアインキを中心に事業を行ってきましたが、現在メインになっているのは化成品事業です。自動車、家電、容器、フィルムなど、様々なプラスチック製品の着色剤をメーカーに卸しています。また、加工品事業では、土木工事資材や、オクラやミカンといった青果物の梱包に使われるプラスチックネットなどを製造しています。高速道路の法面はコンクリートのイメージがあると思いますが、それをプラスチックで造ったりもしています。加えて、不動産事業も展開しています。このように「インキ」を社名に冠しながらも、様々な事業を幅広く手掛けている会社です。

社内・社外の双方からBCP策定を求める声

―これまでのリスクマネジメントの取り組みについてお聞かせください。

大蔵:当社は製造業ですので、安全への取り組みは継続的に行っています。全国の各工場単位で防災訓練を行ったり、緊急時の対応を検討したり、有事の際には各拠点で必要に応じて対策本部を立ち上げて対応をしていました。拠点ごとにマニュアルを整備しているのですが、どのように事業を継続するかについては定めてはいませんでした。

 

人事部長
大蔵 博 様

―今回のプロジェクトに取り組むことになった経緯についてお聞かせください。

大蔵:当社は2011年からリスク管理委員会を設置しており、有価証券報告書での「事業等のリスク」開示が義務付けられたのを機に、全社的なリスクの洗い出しを行いました。その中で人材戦略や労働安全衛生などに加えて、全社的なBCPがないことがリスクとして挙げられました。

また、昨今は顧客から「BCPを策定しているか」という問い合わせが多く寄せられるようにもなってきました。社内と社外の両方からBCP策定の要請が出てきたため、全社的なBCP策定に加えて、それに沿った訓練も行うことになりました。

 

―ニュートン・コンサルティングをご利用いただいた理由は何でしたか。

大蔵:実は、リスクマネジメントだけではなく他の案件についても、これまでは外部のコンサルティング会社に依頼するケースは少なく、自前で勉強して行うことが多かったのです。しかし、BCPを策定するに当たっては専門的な知見が必要だと感じましたので、外部への依頼を決めました。

どのコンサルティング会社に依頼するかについては、何社かに声を掛けて比較検討しました。その中で、ニュートンのプレゼンを聞いて「当社に一番合いそうだ」と感じたので依頼することにしました。

火災は事業への影響大、改めて従業員への意識づけにも

―プロジェクトの概要を教えてください。

富山:今回のプロジェクトは2020~2022年度の3年にわたるものでした。まず2020年度は本社の危機対応を統括できる体制構築を目指しました。トップインタビューおよび社長や本部長・部門長、現場メンバー等が参加したBCP策定ワークショップを実施し、ERP(初動対応計画)、CMP(危機管理計画)、BCPを策定しました。また、策定したCMPの周知および実効性検証のための対策本部訓練も実施。参加者全員が実施後のアンケートに「災害発生時の自身の役割・行動のイメージがより明確になった」と回答した意義のある訓練になりました。

2021年度は、最重要拠点である吉野原工場のBCP策定と、工場火災を想定したBCP訓練を実施しました。工場の現場から出された意見は本社のメンバーとは違う角度のものも多く、大変参考になりました。また、本社においても前年度の課題を踏まえた対策本部訓練を実施し、BCM(事業継続マネジメント)活動のPDCAサイクルを回すという観点でとても有意義でした。

2022年度は、前年度の火災想定訓練を継承し、本社と吉野原工場の連携訓練を実施しました。本社と工場が一緒に訓練を行うことで、新たな課題を洗い出し、さらなるBCMの改善につなげることができ、訓練を行った甲斐があったと感じています。現在はこれまでのBCP策定や訓練を踏まえ、自社で他工場や営業拠点のBCP策定・訓練に取り組んでおり、BCM活動の自走化も進んでいます。

 

―火災にフォーカスしたBCPは珍しいですが、火災を選んだ理由は。

大蔵:当社にとっては地震よりも火災の方が身近で、より切実な災害だからです。

グラビアインキを扱っている吉野原工場では過去に火災で従業員を亡くしたことがありますし、近年では2014年に羽生工場で火災が起きています。危険物を扱っている会社なので、火災には本当に気を付けなければなりません。

また、火災という従業員にとって身近な災害を取り上げることで、より臨場感を持って検討ができるのでは、という狙いもありました。

 

生産・技術部門企画管理部副部長
坂口 哲也 様

―今回のプロジェクトの成果はいかがでしたか。

坂口:吉野原工場を含め各現場では、火災が発生した際の初動対応については、従来から訓練などを行っています。初年度に全社でBCPを構築した際には、火災の初動対応である初期消火が落ち着いた後に事業継続をどうするかについては検討が追い付いていない部分もありましたので、この2年の取り組みでつながりが明確になったのは良かったですね。

また、従業員の火災に対する意識づけという観点からも今回の取り組みは非常に意義がありました。工場の訓練には管理者級が全員集まるのですが、参加者の感想は「火災は絶対駄目だと改めて実感した」というものが多かったです。もちろん、普段から火災に対する危機感は持っているのですが、具体的なシミュレーションなどを通して「本当にまずいな」という共通認識を持つに至りました。被害の甚大さ、対応の困難さを目の当たりにし、実感として湧き上がってくるものがあったのだと思います。地震や水害は防ぎようがありませんが、火災は防ぐことができるものなので、この意識づけは大きいですね。

大蔵:訓練をすると、実際にそのシチュエーションになった時に動けるのかを考えることができますね。有事に本社の窓口は誰になるか、工場では誰が対応するかなどをある程度決めておかないと動けないということが分かりました。大枠の計画だけだとどうしても「誰かやってくれるだろう」という思いが出てしまうので、有事の際に動くべき人や、その人がいなかった場合の代行順位などを、再度もっと細かく検討し決定しておくきっかけになりました。

総務部
倉澤 将史 様

倉澤:BCP策定や訓練を通じて社内でも議論が深まったと思います。以前から訓練は頻繁に行っていますが、訓練が終わった後、その場ではなかなか議論が尽くされず終わってしまうこともありました。今回のプロジェクトを通じて議論が活発になり、それが各拠点に対する意識づけにもつながったのではないかと思います。拠点ごとに色々な意見が出て、他の拠点に役立ったり、私たちが新たな気づきを得たりすることもありました。

各工場版BCP策定に向け、自走化もサポート

人事部副部長
寺田 悠哉 様

―今回のプロジェクトで苦労されたことはありますか。

寺田:強いて言うなら議論の際の現場との意識の調整でしょうか。現場と対応の検討をする際、細かいところに入っていくと、全体を俯瞰するのではなく、特定の顧客向けの特定の製品のような個別の話になりがちです。個別の話はもちろん大切なのですが、そうなると経営のスコープから外れてしまうので、その調整に少し苦労しました。逆に言えば、現場でも経営目線でリスクを考えてもらう良いきっかけになったと思います。また、現場ではBCP関連の業務は本来業務の合間に行っているので、どうしても後回しになってしまいがちです。どうすればスケジュール通り推進できるのか、今回コンサルティングに入っていただいて、進め方なども勉強になりました。

 

―ニュートンのコンサルティングはいかがでしたか。

大蔵:自分たちではどのようにBCP策定を進めるべきかまるで分からなかったのですが、ニュートンさんの豊富なツールを活用して体系的なBCPを策定いただけたのがとても助かりましたね。分からない点について質問する機会も多かったのですが、非常に丁寧に対応いただけました。また、訓練ではファシリテーターとして入っていただき、実際のBCP訓練の進め方を上手くエスコートしてもらいました。加えて、全社のBCP策定後に自分たちで各工場版のBCPを策定できるよう、自走化をサポートいただけたのもありがたかったですね。

 

―今後の取り組みについて教えてください。

富山: BCP策定の自走化をサポートいただきましたので、2023年度は自分たちでグループ子会社のBCPを策定する予定です。今までは拠点単位でのBCPを策定していましたが、切り口を変えて事業単位でも考える必要があると考えているので、全社横断的な対応も進めていきます。また、ITは当社にとっても重要なので、今年はIT-BCPの構築にも取り組む予定です。

 

―本日は誠にありがとうございました。

担当の声

チーフコンサルタント  田村 優作

自分事として考え、取り組む企業文化がBCM活動を強力に推進

ご支援をさせていただく中で、東京インキ様の大きな強みは「自立心」であると感じました。私がこのように考える理由として、3年目現在でBCM活動の自走化が大きく進んでいるからです。我々はプロジェクト2年目までに、パイロット版として吉野原工場のBCP策定と訓練をご支援させていただきました。そして現在では事務局が中心となり、他工場におけるBCP策定から訓練までを自走化していらっしゃいます。3年目での自走化はとてもレベルの高いことであり、経営と現場どちらにおいても相当なコミットメントが必要になります。

今回のインタビューで、「普段はどのような課題に対しても基本的には自社内で勉強して対処していく文化である」と伺いました。こうした企業文化が、社員の皆様が自分事としてBCM活動に取り掛かる後押しになっており、強力な推進力につながっていると感じました。

今後は、本社におけるIT-BCPの策定や子会社におけるBCPの策定・訓練など多くの活動を予定されております。是非今後ともグループ一丸となってBCM活動を推進していただき、いざという時に備えていただければ嬉しい限りです。

お客様情報

名称 東京インキ株式会社
所在地 東京都北区王子一丁目12番4号 TIC王子ビル
設立 1923年12月
事業内容 オフセットインキ、グラビアインキ、インクジェットインクの製造・販売
印刷用材料、印刷機械の販売
マスターバッチ、樹脂コンパウンドの製造・販売
工業材料、包装材料の製造・販売
仕入商品の販売

(2023年3月現在)

プロジェクトメンバー

お客様

総務部長兼法務課長

富山 剛志 様

総務部

倉澤 将史 様

生産・技術部門企画管理部副部長

坂口 哲也 様

人事部長

大蔵 博 様

人事部副部長

寺田 悠哉 様

ニュートン・コンサルティング

シニアコンサルタント

辻井 伸夫

チーフコンサルタント

田村 優作

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