明治安田生命保険 様

自社だけでは得られない気づきを取り入れた訓練
有事の際にも確かな安心を提供するために

明治安田生命保険相互会社様は「確かな安心を、いつまでも」という経営理念のもと、「万が一」をサポートする生命保険会社として事業を展開していらっしゃいます。日頃から事業継続に重きを置き、訓練も積極的に展開する中、外部の視点を求めてニュートン・コンサルティングのBCP訓練支援サービスをご利用いただきました。今回、総務部長の井上 賢治様、同部上席リスクアナリストの坂本 純一様、同部災害対策推進グループ グループマネジャーの増田 明久様、同主席スタッフの西谷 健様にお話を伺いました。

 

総務部長
井上 賢治 様

―貴社の事業内容をお聞かせください。

井上:当社は生命保険業を営んでいますが、万が一のときに、保険金や給付金をきちんとお支払いできる会社、お客さまに長期にわたって安心を提供できる会社であることを大切にしており、対面によるアフタフォローに力を入れています。保険は長期になりますので、常にお客さまに寄り添い、保険金・給付金の支払い漏れが起こらないように、しっかりとお客さまをフォローすることが大切だと考えています。

また、時代ともに変化するニーズに応え、お客さまが安心して生活していただける環境や保障を考えていくのが保険会社の役割だと考えております。従来、生命保険は残された家族のための死亡保障が主でしたが、近年は長生きのリスクに備え、「よりよく生きる」ための医療保険、介護、年金などが主流となり、従来と違うニーズも高まってきています。当社では、お客さまに「確かな安心を、いつまでも」お届けできるように、今後も積極的なサービス開発を行ってまいります。

 

東日本大震災を受けBCP(事業継続計画)を抜本的に見直し

総務部
上席リスクアナリスト
坂本 純一 様

―これまでのBCPの取組状況について教えてください。

坂本:お客さまにとっては、当社がきちんと事業継続していけることがとても重要になります。そのため、BCP(事業継続計画)や災害対策の継続的な高度化とともに、教育・訓練に重きを置いています。

実は、当社の事業継続計画は東日本大震災の前後ではまったく違います。それまでは重要業務を担う本社部署、システムセンターは関東に集中していました。東日本大震災ではこの関東地方でも大規模な電力不足が発生し、広域停電が発生すれば重要業務に支障が生じてもおかしくない状況でした。「もっと広域的なリスクを考えなければ」となり、2014年4月までに大幅な見直しを行いました。

特に重視したのは、いかなる事態になってもお客さまへの保険金等のお支払いを実現するということです。今はシステムがなくては支払業務が行えない時代です。このため、バックアップシステム群を関西に移設し、一部機能を強化するとともに、コールセンター等も東阪に二重で設置しました。それによって、東京あるいは関東地方が広域に被災しても重要業務を継続できるようになりました。

また、先日(2018年6月18日)の大阪地震では、大阪で出勤できない社員が多数いたのですが、東京のコールセンターで受電を代替することで正常に業務が継続できました。

 

―文書類も整備されているのでしょうか。

坂本:2014年の見直し前から、災害対策マニュアルとシステム停止時マニュアルは存在していました。ところが、この2つのマニュアルは災害発生時、システム停止時の事業継続計画をそれぞれに担当部署が策定したもので、重要業務や対応体制等で整合が取れていませんでした。このため、例えば災害が起きてシステムも停止した時などは、どちらのマニュアルに従うかが明確ではなかったのです。また、マニュアルは年々書き足したことで、膨大なページ数となっていました。

東日本大震災後に、この2つのマニュアルを再構成し、事業継続計画や対応体制の整合をとり、内容も重点を絞ってスリム化しました。

また、この時新たに導入したのが災害時に対応すべきことを箇条書きにした『チェックリスト』です。今後の見直しについて社長と相談をした際、「災害で一刻を争う時に分厚いマニュアルを読むのか?」「私(社長)や経営陣が、いつ、何を決定すべきかを1枚にまとめてはどうか」との意見をきっかけに作成しました。

何かあった時、経営陣は「あれはどうなった、これはどうなった」とすぐに確認したい。しかし、発災後の情報収集や指示・連絡等を行っている時に、ひっきりなしに照会を受けると、その対応で忙殺されてしまいますので、いつ、誰から何の報告がくるのかを分かるようにしました。東日本大震災の時の対応事項、対応内容を元に、対策本部(本部長は社長)とその事務局や管下のチーム・班のやるべきことを1枚のペーパーに箇条書きでまとめています。

こうした見直しは社長・経営陣が本気にならないと動きません。災害時でもお客さまへの保険金等お支払いを継続し、従業員を守るためにも、きちんと動く実効性あるマニュアルと、想定外をなくす有効な事業継続計画を早急に作ることができました。

全社員が1年に1回以上の訓練に参加

―BCP(事業継続計画)の見直しを受けて、訓練も変わりましたか。

坂本:大きく変わりました。それまでは、安否報告訓練や対策本部での役員による読み合わせ訓練が中心でしたが、2014年の見直し以降は、より実効性・有効性に着目した形で回り始めたと思います。

総務部
災害対策推進グループ
グループマネジャー
増田 明久 様

増田:訓練は年間約130回行っています。全従業員が年に数回は何らかの役割で訓練に参画しています。

有事に備えた災害時に対応態勢に基づくチーム単位での訓練や各所属での訓練等などがあり、社長を含め経営陣が参画する訓練もあります。大半の訓練は上期に実施し、下期は訓練から導出した課題に対してPDCAを回しています。課題の導出は特に重要視しており、すべての訓練に対し、確認・点検しています。

坂本:安否報告訓練やイントラネット研修は、全社一斉に実施しています。訓練の成果か、先日の大阪地震では安否確認の回答がとても早かったです。対象は約2000人いましたが、発災後2時間ですべての安否確認が終わりました。怪我をした者が3人いたこともすぐに分かりました。電話がつながりにくいなどはあったものの、「どうにかして安否を報告しなければ」という意識が醸成できていたと感じています。

共感力と社内に入り込んでくれるコンサルタントの姿勢に惚れた

―当社ではここ3年ほど訓練のお手伝いをさせていただいていますが、外部の力を使おうと思ったのはなぜでしょうか。

井上:今まで災害関連の業務は社内で行っていたのですが、自分たちが気づかない部分を指摘していただいて全体のレベルアップを図りたいという思いがあり、外注を決めました。社内の人間だけでは、自分たちの想定できるリスクの範囲内でしか動けません。外部から指摘を受けて初めて「こういうところに穴がある」と分かる。それが一番重要だと考えています。

増田:これまでには、時間的制約の中で所定の事項を啓発する必要があることから、セレモニーのような訓練になってしまったものもありました。しかしながら、実際の災害時には時々刻々と状況が変わりますので、臨機応変にそれらに対応できる対応力を身につける能力が求められます。当社にはそうしたノウハウがなかったため、外部にお願いすることになり、何社かにお話を聞いた上でニュートンに決めました。以前ニュートンのセミナーに行ったこともあり、実のある支援をしてくれるだろうと期待したからです。

坂本:何社かにご提案いただきましたが、話をしていく中で、それぞれのコンサルタントの力量が分かってきます。ニュートンはこちらの質問にきちんと的確な答えを出してくれ、頼もしく思いました。

また、型にはまらない提案も魅力的でした。他社は支援の形がパッケージとして決まっている印象で、こちらから「こういう形はどうですか」と投げ掛けてもあまり反応が良くありませんでした。けれど、事業継続計画(BCP)や災害対策の在り方は各社の文化によって違いがありますよね。ニュートンはそこにとても共感してくれ、当社にとってより良い提案を示してくれる唯一のコンサル会社でした。「こういう方法も、こういう方法もありますよ」という引き出しが非常に豊富だと感じました。

リアリティある想定で現場対応力を向上

―当社が支援に入らせていただいた3年間でどのような訓練を行ってきたのか、改めてお伺いできますでしょうか。

坂本:2016年度は、災害時は初動対応の初速が大切だという想いから、初動対応を強化する訓練を行いました。3つの拠点から初動対応のメンバーを本社に集め、首都直下地震を想定した被災シナリオで、発災から翌朝までの流れを訓練で検証しました。以前に比べてぐっと臨場感のある訓練となり、「実際に被災した感覚で臨める」と参加者にも大変好評でした。

訓練の結果としては、負傷者の移動方法や救急車が呼べない場合の対応といった、発災から1時間以内の初動対応に不安が残るということが分かりました。また、自分の役割の再認識や連絡手段の確保、ルールにない帰宅判断についての検討などの課題が洗い出されました。

2017年度は、特別対策本部事務局と各チームとの連携およびチーム間の連携を強化することが必要だと考え、前年度の初動対応チームに加えて、事業継続に携わるチームも訓練に参加してもらいました。時間の経過とともに状況が変化していく中で、限られた情報を元に検討する場面、対応結果を報告する場面、指示を出す場面をそれぞれのチームが体験しました。

実際に訓練を実施してみると、マニュアルでは問題ないと思っていた横の連携にズレが発見されるなど、訓練の大切さを実感しました。新規に選任された担当者も多かった中、スキルを一定基準に保つ必要性を参加者自身が気づいてくれるなど、危機意識の向上につながりました。限られた時間の中で、マニュアルにないケースに対してどう対応・判断するかを体験する訓練はこれまで行っていなかったため、臨機応変な対応を身に付ける貴重な機会となりました。

総務部 災害対策推進グループ
主席スタッフ
西谷 健 様

西谷:今年度の訓練では、初動に関する部分をより一層強化するという目標を掲げました。普段行っている業務であれば非常時でも何とかなるのですが、災害時の初動対応はイレギュラーな業務なので注力が必要になります。その考え方を軸に「ここは普段やっていないから力を入れよう」などと相談して訓練を作り上げました。体制としては、特別対策本部の下に各チーム、その下に実際に対応を行う班を置いていますが、今年度は班の方が動いてみるなど、色々な流れを試しました。

また、これまで12月に実施していたシナリオ非開示型訓練を、今年は時期を早めて7月初旬に行いました。それまでは一連の訓練の仕上げとして実施していましたが、シナリオ非開示型訓練は危機意識を高める効果が高いと感じていたので、新年度スタート直後に新規担当者に教育を施し、時間を空けずにシナリオ非開示型訓練を実施することで意識をぐっと上げるという工夫をしました。

さらに、今までと異なる時期に実施したことで季節特有の気づきがありました。これまでの訓練は冬場に実施していましたが、この時期(7月)に行ってみると暑さは大敵だと痛感しました。冬は着込めますが夏はいくら脱いでも暑いですし、社内の冷房も止まってしまいます。社内には人が大勢おり、機械も多い。また、気温は40度近くなるのに窓は開きません。その中で対応するのは非常に厳しいと感じました。

なかなかイメージしにくい場面ではありますが、このような状況になり得ることを社員に認識してもらうのも重要だと考えています。

増田:ニュートンにシナリオ作りを依頼したところ、災害時の具体的な行動の中で細かい気付きが多く得られました。例えば、備蓄倉庫へ備蓄品を搬出しに行った要員が負傷してしまうケースや、夏場で冷房が使用できない状況下のため、想定以上に飲料水の消費が早く、備蓄が尽きてしまうケース等とか。演習型の訓練だからこそ出てくる課題ですね。細かい話になりますが、こうした気付きについてもひとつひとつ検討していきたいと考えています。

また、社外の専門家から受けた指摘指摘は大変重みがあり、適切な対応が必要となります。ですから、ニュートンに依頼するのは我々の強い覚悟でもあります(笑)

インタビューの様子

自身の行動に染み込ませるために訓練を繰り返す

―ニュートンのコンサルティングについて感想をお伺いできますか。

坂本:我々が何を求めているのか、こちらの要望を的確に汲み取ってくれます。また、専門用語ではなく分かりやすい言葉を選んで、対象者のことを考えてお話されているのが伝わってきますね。言葉がはっきりしているので聞いていて安心できますし、信用できる。「その通りだな」と腹落ちします。

西谷:今回のプロジェクト中に大阪の地震がありましたが、その対応についても具体的に聞きたい点を色々教えていただいてとても参考になりました。主題のプロジェクト以外についても安心して尋ねられるというのは大きいですね。

増田:良かったのは、まず当社の業務をきちんと理解いただき、入り込んでいただいた点。また、評論家のように言いっ放しになることなく、連携してプロジェクトに取り組んでいただいた点。また、資料の準備等を含め、常に期限前に応対いただけるなど、仕事が早い点。その3点がとても信頼しているところです。

 

―今後意識して対策していきたいリスクは何でしょうか。

増田:最近増えている集中豪雨や河川氾濫の対策を強化したいですね。また、オリンピック・パラリンピック開催についても気になるところです。

井上:当社には4万人を超える従業員が全国におりますので、会社が取り組んでいることを理解し、常に意識してもらうためには、繰り返し訓練を行う必要があります。いざという時に適切に行動できるように、起こりうるリスクを想定しながら訓練の回数を重ね、常に高度化に取り組んでいくことに意義があると考えています。

 

―本日は誠にありがとうございました。

担当の声

 

はじめての夏場訓練で大きな成果

弊社は2016年度から明治安田生命相互保険会社様の訓練支援に携わっています。今回のプロジェクトの特徴は、これまで冬場に実施してきた訓練を夏場に実施し、猛暑の想定としたことです。

訓練参加者には、BCP新任者が多かったため、災害時の基本動作にプラスして、災害イメージをしっかりとつかんで頂くことに注力しました。

平日日中の災害時には、2,000名以上の社員が30階建てのビル内(都内のオフィスビル特有の環境)に滞在することになります。非常用発電機ではエアコンが動かないため室内気温が上昇すること、非常用エレベーターしか使用できないため、上層階からのケガ人搬送や備蓄品の受け渡しがハードワークになることが分かり、「マニュアルのチーム連携に関する箇所を強化しよう」という意見が訓練参加者から出たことは大きな成果と言えます。

事務局の皆様は、どうしたら社員の危機意識と災害対応力を高めていけるかを常に考えて年間計画を立てられています。訓練設計時の議論は白熱し、コンサルをする私も自然に熱が入りました。今後はさらに、訓練シナリオを高度化し、BCP実効力の向上を期待しつつ、このような訓練支援に関われることに感謝いたします。

お客様情報

名称 明治安田生命保険相互会社
所在地 東京都千代田区丸の内2-1-1
設立 1881年7月9日
事業内容 各種生命保険の引受・保全、資産の運用などの生命保険業および付随業務など

(2018年4月現在)

プロジェクトメンバー

お客様

総務部長

井上 賢治 様

総務部 上席リスクアナリスト

坂本 純一 様

総務部 災害対策推進グループ グループマネジャー

増田 明久 様

総務部 災害対策推進グループ 主席スタッフ

西谷 健 様

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