ジェイティービー様

旅の安全を守り、災害時に
復興インフラとしての
役割を担う責任がある

1912年の設立以来、100年以上にわたりツーリズム業界を牽引してきたJTBグループ様は現在、世界36の国と地域に約170の事業会社を展開しています。東日本大震災をきっかけに、災害対応のためのBCPの実効性を高めるための訓練を継続的に段階を経て行ってきました。この度のBCP訓練について、専務取締役の末永安生様、内部統制室室長の戸田 磨様、内部統制室マネージャーの小林知巳様にお話を伺いました。

震災前後で変化した社内の意識

内部統制室マネージャー 小林 知巳 氏

―これまでのBCPの取組について教えていただけますか。

小林: もともと文書としてのBCPは、2009年時点で策定してありました。当初は別のコンサルタント会社に依頼して、文書の網羅性や整合性は一定の評価ができていたのですが、社員への周知や訓練は行っておらず、実効性という点で検証ができていない状態でした。

2011年の震災時に、あれだけの被害がでてBCPの重要性が改めて認識されたのですが、当社の事業がシステムに依存するところが非常に大きいため、いわゆるIT-BCPを整えた上でないとうまく機能しないということが分かりました。但し、その整備をするにも莫大な費用がかかり、そこまで踏み込めずにいた時期が続きました。

内部統制室長 戸田 磨 氏

―それでは2009年に策定してあったBCPは、震災時には機能しなかったというのが正直なご感想だったのでしょうか。

戸田: 震災以前は、BCPの文書だけは持っているという企業が多かったようです。当社もシステム対策の費用がかかる中で、どこまでやるべきかを踏み出せずにいました。実際のところBCP文書はあったのですが、訓練をしていなかったので、当時の担当者だけが理解していて、本来動かなければいけない社員は認識していなかった。有事に実効性のあるものにすることがいかに重要か、やはりこの業界のリーディングカンパニーとしてBCPは取り組まねばいけない、必要なのだと認識を新たにしました。 それを機に経営層の意識も変わり、本格的に取り組むことになりました。経営層が大きく舵をきったことが、実務ラインとしては大きな力になりました。また、グループ各社に対しても、グループの経営陣がしっかり認識したところで大きく変わりました。

専務取締役 末永 安生 氏

末永:地震もさることながら、津波や原発事故の問題もとても大きかったですね。当時の我々のBCPは東京が機能しなくなったらという想定ではありませんでした。改めて取り組むにあたっては、大阪(JTB西日本)へ本社機能を一時的に移設することを前提に、本社業務の棚卸しをし、大阪の人に業務を代行してもらう計画を策定しました。

小林:その検証のために初めて訓練を行ったのが2013年です(第一回総合訓練)。首都直下地震の発災から対策本部の立ち上げ、大阪に本社機能移設というところまでの台本をつくって、関係者一同への周知も含めて読み合わせをしました。ただ、「読み合わせ」という訓練はやはり実効性という意味では薄いと感じました。 そこで、別の専門家の意見も聞こうということで数社にお声掛けをして、その中でより具体的なご提案をいただけたニュートンさんに支援をお願いすることにしました。

本当に実効性を高めるためには

第二回 総合訓練

―具体的な取組を教えてください。

小林:ニュートンさんにお願いして、東京と大阪の主要拠点を対象とした訓練の企画をしていただき、総合訓練を2回実施しました。第二回総合訓練(2013年に自社でおこなった訓練が第一回)は業務復旧に向けた目標達成ができるかということを検証しました。この際に参加者には台本を配らず、実地に近い体験をすることで、重要業務の継続に係る具体的な課題が沢山でてきました。

第二回総合訓練の結果を受けて、さらに、BCP文書の見直し、業務復旧目標における要員や手順等の整理をして、昨年(2015年)の7月に国内グループ事業会社65社全体を巻き込んだ第三回総合訓練を実働形式で行いました。

日本旅行業協会の定める「旅の安全の日」に、業界をあげた模擬訓練を行っているのですが、弊社ではその日に首都直下地震が起きたという想定で、国内グループ事業会社65社の対策本部の設置報告と確認、従業員の安否確認、各店舗(事業所)の被害状況確認と情報集約、被災地である首都圏地区を旅行中あるいは通過している可能性のあるツアー情報、お客様情報の集約、お客様対応方針の検討を行いました。

この時は65社からの情報の取りまとめや、今後の対応方針の検討などを行い、かなり実践的な訓練ができたと感じています。まがりなりにも翌日には全ての情報がまとまっておりました。

上2枚:第三回 総合訓練(グループ本社)、下第三回総合訓練(JTB西日本)

―経営の目からはその2つの訓練はどのように映りましたか。

末永:弊社の社員は、本社の人間も全員現場で添乗業務の経験を積んでいます。地震に限らず、突発的な事故に対してどのように動けばお客様の安全を守れるかという実体験を持っているので、様々な緊急対応にある意味慣れていると言えます。今回の訓練でも、有事の時に、柔軟にスピード感をもって動ける経験値はあるのだなと思いました。しかし皆、能力はあり、動くことは出来ても、災害時の混乱の中で組織的に動くための訓練が必要でした。横と縦のつながりを認識することを促す必要があったということです。そういった意味で、今回の2回の訓練は非常に有意義だったと考えています。また、やればやるほどレベルはあがってきていると感じます。

会社のシステムや体制も色々と改善を重ねています。お客様の予約データや精算情報については遠隔地にサブシステムを構築して二重化するとともに、全社コールセンター機能を熊本に、お客様や事業パートナー様への返金、支払いといった精算業務を管理する財務機能を札幌に配置しています。社員に対して給与を支払い続けるということも重要な要素です。

東日本大震災の時には、東北地域で営業不能になった店舗が複数発生し、その店舗のお客様対応のため、当時は本社の会議室を一室使って対応しました。今では熊本のコールセンターを稼働させて、何かあった時にはそこでお客様対応情報を行い、札幌の財務機能により支払、決済を継続させるという方法をとることができます。

関係機関へ広げていくBCPの和

末永:基本的に、我々はモノを扱っているわけではないので、宿泊施設や交通機関といった事業パートナーの皆様との和の中でビジネスを行っています。自社だけでのBCPというものではどうしても収まらない。JTBグループの中である程度、形になってきたら今度は事業パートナーの皆様と一緒にBCPの連携というものに広げていく必要がありますね。

3回目の訓練が終わったところでは、日本を訪れる外国人のお客様の対応について課題がでてきました。これからオリンピック・パラリンピックを迎えるにあたり、大きな課題となるでしょう。

戸田:BCPについては、経営層の明確な意思のもと取り組んでいて、実務ラインは作業だけをすすめている訳ではなく、経営の意思を実現するために取り組んでいます。中期計画にもBCPについて触れており、訓練の計画や結果については全役員に報告しています。訓練には各グループ会社の社長も参加して実施しています。

小林:社長が常々話していることのひとつに、被災地支援があります。何かあった時には、復興インフラの道筋を我々が担わなければならないという意識は強く持っています。弊社がこうした取り組みを進め、発信することにより業界全体も動きだして広がりがでてくるのだと思います。旅行業界全体で取り組んでいくことが重要と思っています。

―ニュートン・コンサルティングの印象はいかがですか

小林:基本的に何か相談した時に、ご提案頂ける内容が豊富で、具体性やスピードも早く、事務局としては本当に助かっています。もう2年目になるので、当社のBCPについては熟知していただいており、恥ずかしながら弊社の社員よりも詳しいと言っても良いでしょう。提案内容も実状をしっかり踏まえていただいています。

戸田:やはり他のコンサルタントと違うのは、経験値がかなり高く、実際に様々な実例を踏まえた上でのフィードバックをご提案いただいている点だと感じています。これからの展開についてもアドバイスをいただきたいと思っています。

―本日はどうもありがとうございました。

担当の声

 

「実効性の向上」を追求し、グループ内でBCMを構築

今回のご支援では、2回の総合訓練と単体訓練4回(グループ本社地震対策本部訓練2回、バックアップ対策本部2回)を実施させて頂きました。成果として当初、台本の読み合わせ訓練だったものが、今やグループ65社が参加したバックアップ対策本部の実働訓練、開催日時を非開示で行った実働参集訓練までに至りました。短期間で実効性を向上させることができたのは、以下の要因があると考えます。

「有事における経営の意志」を確認し、目指す姿を明確にしている 
経営層が真摯に活動に取り組んでいる 
個社のみならず、JTBグループ全体のサプライチェーン強化を目的にした活動にしている 

更に、事務局は旅行事業本部の危機管理担当部長、IT企画の担当部長といった災害時に第一線で対応する方、そして平時からグループ会社及び各部門とコミュニケーションを取っている内部統制室のメンバーで構成されています。このメンバー構成によって、現場の「実際の災害時では、自分たちはどうするのか?」を検討し、内部統制室のメンバーが部門間や関係会社との調整を行い一般的にはハードルの高い、65社が参加する総合訓練や、開催日時を非開示とする実働参集訓練が実現できたと考えます。

2年間のご支援で、年1回の総合訓練と個社の訓練を行い、課題の改善に取り組むというBCPの活動(BCM:事業継続マネジメント)を定例化させることができました。業界のリーディングカンパニーとして活動されているJTBグループ様の更なる実効力の向上とご活躍を期待いたします。

お客様情報

名称: 株式会社 ジェイティービー
所在地: 東京都品川区東品川二丁目3番11号
設立: 1963年11月12日
代表者: 代表取締役社長 髙橋 広行
従業員数: 26,194名(グループ全体 2015年3月31日現在)
事業内容: 旅行業など
URL: http://www.jtbcorp.jp/jp/

((2016年2月現在))

プロジェクトメンバー

お客様

専務取締役

末永 安生 氏

内部統制室室長

戸田 磨 氏

内部統制室部長

久保 伸一 氏

内部統制室マネージャー

小林 知巳 氏

内部統制室マネージャー

坂井 健一郎 氏

旅行事業本部危機管理担当部長

大瀧 昇 氏

経営企画部IT企画チーム担当部長

津田 二朗 氏

ニュートン・コンサルティング

代表取締役社長

副島 一也

エグゼクティブコンサルタント

久野 陽一郎

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