インターソフト様
品質を高めることで、徹底的に差別化をはかりたい
株式会社インターソフト様は、お客様のご要望に応じてシステムやソフトウェアの開発を専門に行うプログラム制作会社です。自然言語処理(日本語処理、形態素解析)に強く、辞書や電子書籍等への活用が可能である日本語全文検索エンジンやiPhone向けアプリや、Android向けアプリ、セキュリティに配慮したシステム開発などを強みとしています。この度のISO9001品質マネジメントシステムの認証取得について、代表取締役社長 笹原和弘様、リーダー 森寛樹様、ITソリューション部 飯塚隆雄様にお話を伺いました。
―まずは貴社の事業内容をお聞かせください。
笹原: 当社の事業内容としてはソフトウェアの受託開発という分野になります。お客様は大手企業が多く、弊社は規模は小さいですが、大手様のシステム開発やコンテンツ開発のお手伝いをさせて頂いております。
あくまで受託開発ということで社名は出ていませんが、大手企業様から受託した業務アプリケーションやコンテンツ、市販パッケージのOEM開発等が実績としてございます。また、全文検索エンジンという、会社設立当時から研究開発している技術を保有しています。今のようにインターネットが発展する前から研究に取り組み始め、現在も我が社の一つの売りとして営業しています。その技術をもとに、大手印刷会社様や出版会社様とお付き合いを長く続けさせていただいております。
全社的なプロジェクト管理・情報共有により常に高品位なソフトウェアの提供を目指す
―これまでの貴社の中での品質管理についてお聞かせください。
笹原: 社内で品質管理や品質向上に関して仕組みができていたかというと、そういったものはありませんでした。個々の業務やプロジェクト単位でリーダーが品質に責任を持ってやっていくという形で、会社としての標準化されたツールやルールはなかったです。そうなると、製品の品質は、プロジェクトリーダー個人の力量に左右されるという大きな課題がありました。
そして、何か問題が起きたときの対応も個別に担当者が行っていました。ソフトウェア開発では一つひとつ検証をしていきますので、ソフトウェアの不具合はほとんど出ないのですが、不具合が目立つプロジェクトが何件か出ているというのも事実でした。
―今回の取組みに至った経緯についてお聞かせください。
笹原: いくつかありますが、まず一企業として請けた仕事の品質が、個人の力量に左右されるというのは大きな問題であり、これを解決すべきであると考えました。会社としてプロジェクトを管理し、高品位なソフトウェアを納品していく仕組みが必要であると思っていました。
それから、顧客満足度、お客様がどう評価されているかを把握し、全社員が共有する仕組みが必要だと思いました。お客様の評価には改善のご指摘もありますが、逆に良い評価もあります。技術者のやりがいにつながるので、特に良い評価を積極的に共有したいと考えました。私たちは技術者としてモノづくりへのプライドがあり、大手企業からその点を高く評価していただいたことでビジネスが成り立ってきております。そうして築いたお客様との信頼関係を損なうことがあってはならないばかりか、さらに広げていかなければならないと思っていました。
形式のみならず、実のある変化を目指して
―取組みにあたってコンサル会社を利用した理由をお聞かせください。
笹原: 自分たちだけではISO9001認証の取得は厳しいものであると思っていました。品質管理というところであればQC活動などがありますが、ISO9001の要求事項や認証に関するノウハウは自分たちにはないと思っていました。それともう一つ大きなこととして、専門家の意見を聞きたいということがありました。会社を立ち上げてから、自分たちのやり方で20年間やってきましたが、同業他社様の話を聞いてもなかなか比較できないと感じていました。今の自分たちがどういう状況か、自分の中で整理が出来ていなかったのでしょうね。
―何故ニュートンコンサルティングを選ばれたのですか。
笹原:何社かにお声掛けを致しましたが、選ぶ際に何点かポイントがございました。まず、ソフトウェア業界についてよく理解されていらっしゃるということが一つです。また、説明が非常にわかりやすかった、ということも一つです。ポイントを押えて話していただき、具体的なサービスの内容が十分に伝わってきました。そして、決めてとなったのは、運用を前提としたご提案を頂いたことです。認証は取ったけれども、来年再来年からそれをどうしていいかわからず放置してしまうというようなことではいけないと思っていました。
まずは現状の把握から
―プロジェクトについて教えてください。
森:ISO9001の認証を取得するにあたって、まず我々自体がISO9001の要求事項を理解するというのが最初の入り口で最初のハードルでした。そして規格の要求事項に対して弊社の実態がどうなっているかを照らし合わせ、マネジメントシステムとして体系化(知識・経験情報共有、スキル育成、委託先管理等)をはかっていきました。その上で不足しているものを現状で実現できる運用を考えながら施策をたてていきました。弊社の認証取得目標に合わせて、何カ月間かに分けて何をしなければならないか整理していきました。
―その中で具体的にどのような現状が洗い出されてきましたか?
森:全てにおいて記録を取らなければならないということです。何かが起きた時にその場で分析して対応する、というようなことはありましたが、後々、それを追えるような記録を取っていませんでした。そうした実態が要求事項との一番のギャップでした。
笹原:加えて、とにかくソフトウェアの品質を高めるということが重要でした。品質の悪い案件をどうするのか、ということも重要でした。外部委託は多くはないですが、今まで不具合が出た案件は殆どが外部に委託しているものでした。外部委託先も今まで担当者が個人で管理しており、委託先での意思疎通もできず、問題として発見できないという部分がありました。それらを管理する考え方や指標を改めて整理し、明文化しました。
個々の考え方を活かしつつ、明確な文章化を目指す
―実際に話してみたら個々の考え方は違いましたか
笹原:プロジェクト毎の考え方も違いますし、それぞれ個々で持っているポリシーみたいなものも違います。ただISO9001規格要求事項は、考え方を規定していますが、何をどこまで管理すべきかまで細かく規定しているわけではないので、企業や事業体ごとにさまざまなやり方があると思います。
―苦労したことはありますか
飯塚:品質マネジメントシステムで業務の内容を目で見えるように資料として起こさなければならないというのは、今まで頭の中でやってきたことではあるけれど、難しいことだと思いました。それを実際文章に起こし、どういう順序で形にしていくのか、社員ごとに認識の違いがどうまとめていくのか。大変ではありましたが、最終的にどういう形にするのがベストか決められたことが良かったと思います。そして、改めて自分がやっている業務自体の認識も高まりました。10年後に同じ業務に携わった時に、資料を見て理解できることは大事なことだと思いました。
―成果として感じられたことは何かありますか
笹原: まず当社では品質方針が明確に文章化されていませんでした。こんなに基本的なところもなかったのと、再認識しましたね。個々が持っているポリシーは大きくずれてはいないはずですが、明文化できていないということは、それが頭の中にあったとしても、明確に社員に伝わっていないということです。その文章がないということが、自分としてはとてもショックでした。今回、品質マニュアルを作成し、どういう風に管理をしなければいけないか等、方針や手順が定められて非常によかったと思います。
森: 仕事のすすめ方や段取りが、なあなあになっていた部分を、今回のプロジェクトを通して改めて見直すことができました。個々のすすめ方や認識にギャップがあったということに気づいたし、逆にそういうやり方もあるのか、と勉強になることもありました。また、会社としてこういうことに取り組んでいるということは社内や協力会社に周知して、理解してもらっていると思います。自分たちの取り組みを発信することで、協力会社の方も含めて、品質に対しての気持ちが引き締まったことは感じます。
型にはまるのではなく、型を作っていく
―当社コンサルティングサービスへのご感想をお願いします
笹原: 品質マニュアルに関して、自分たちの言葉で作りなさいとご指導いただいたことは非常に良かったと思います。ひな型をもらって、それを一部変えてマニュアルにするということは簡単にできると思いますが、そうするときっと後から読みなおしたり、活かしたりしようとしないと思います。あえて自分たちの言葉で、自分たちで作りなさいとご指導いただいた点はよかったと思います。
飯塚: 個人で開発やプログラミングをするにしても、ISO9001の考え方は勉強になったと思います。すぐに直結するかと言われれば難しいですが、仕事に対する意識という面では勉強になったと思いました。例えば、記録を残すことでリスクが減っていきます。どういう過程で問題が起こったかということを辿れるだけで、保守性なども変わってくるので、そういう意味で、非常に勉強になりました。
森: 品質マニュアルと開発業務マニュアルを文章に起こしていましたが、ドラフト版の時点からお送りすると、翌々日には赤字で校正を入れて、的確なご意見をいただき助かりました。私が書くと職業柄かついつい細かいところまで書いてしまい手続きが煩雑になってしまいがちでしたが、運用のことを考えて作ってくださいとアドバイスいただけたことも助かりました。
品質の可視化 ― 目に見える形で証明していく
―お話を伺っていると、今回しっかりと品質向上をすすめられたという印象を持ちますが、ISO9001の認証を取るということはどのように機能したと思いますか?
笹原:まず目に見える形で外部から証明されるということが大切と思っています。社内でもそうですし、お客様に対して目に見える形で出すということをかなり意識しています。ISO9001でなくても、例えばソフトウェアは目に見えませんので、問題がないということをお客様に可視化していくことが、私たちの大きなテーマで、極力見える形にするということを心がけています。
技術的なところを高めていくことは今後も当然行っていきますし、品質も高めていかなければなりません。この会社が生き残るためには、他社との徹底的な差別化が必要です。お客様に、うちに頼んでよかったと思われなければだめなので、そこをひたすら追求していきたいと思います。
―本日はどうもありがとうございました。
プロジェクトメンバー
お客様 |
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代表取締役 笹原 和宏 様 |
リーダー 森 寛樹 様 |
ITソリューション部 飯塚 隆雄 様 |
ニュートン・コンサルティング |
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シニアコンサルタント 英 嘉明 |
担当の声
シニアコンサルタント 英 嘉明
品質の仕組みを徹底追求
① 経営と現場の業務に役立つこと
② 実際にやる人が作ること
③ 読まない、維持できない文書は 作らないこと
そして、当インターソフト様プロジェクトにおいては、笹原社長、森リーダー、飯塚様が、それぞれ経営者、プロジェクト管理者、開発担当者としての立場から、これら3つの方針を徹底的に追求され、自分たちの言葉を用いた自分たちの役に立つ、コンパクトな品質マネジメントシステムを構築されました。このことは私にとっても大きな喜びであり、3人の皆様方が、今まで頭の中で行ってきたことを苦心惨憺しながら文章化され、品質マニュアル、ソフトウェア受託開発マニュアルとして明文化されたご努力には頭が下がります。
今回、“ユーザーが使いやすい製品を高い技術力で提供する”という経営方針を改めて確認されましたが、その実行力を強化するために、ISO9001の要求事項一つひとつについて、その本質を徹底的に理解する、そして自分たちにとってベストなやり方を考え抜くという、ある意味、技術者としてのこだわりを徹底されたことは素晴らしいと思います。結果として、単なるソフトウェアの品質向上にとどまらない、経営の品質向上につながる取り組みとなっています。ご協力させていただきましたことを誇りに思い、改めて感謝申し上げます。