財団法人材料科学技術振興財団様

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財団法人材料科学技術振興財団(MST)様は、先端的な科学技術分野における新材料や半導体などに関する基礎的研究、解析・評価をおこなう組織です。独立採算で事業を運営・拡大し続ける源泉とするため、組織内のシステム整備に取り組まれ、ISO27001(ISMS)・ISO9001(QMS)に続いてISO10002(CMS)の認証を取得されました。認証取得プロジェクトについて、プロジェクトチームの方々からお話を伺いました。

ちょっとした不満まで含めて苦情。サービス向上のためのCMS

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分析評価部次長 米光 恭子氏

-財団様の事業内容を教えてください。

米光氏: 当財団は文部科学省の傘下にある財団で1984年に設立されました。財団は国の予算で運営されていることが多いのですが、当財団は独立採算で運営しております。事業としては受託分析評価サービスをメインにおこなっており、その収益を元に財団法人ならではの取り組みとして、研究助成や実用化につながる優れた創造的業績をあげている方を対象とした山﨑貞一賞の授与などをおこなっております。

-ISO10002認証取得への取り組みの理由を教えてください。

QMSに取り組んでみると、財団内の品質向上に非常に役立つことが分かったのですが、では、外部への対応についても何かできることはないかと考え、苦情対応マネジメントシステム(ISO10002:CMS)の取り組みを決めました。米光氏: 当初ISOの導入を検討した段階ではISO10002まで取り組むことは視野に入っていませんでした。財団のメイン事業である受託分析評価サービスにおいては、お客様の機密情報を多く取り扱いますので、セキュリティを非常に重要視しておりました。その観点からまずはISMSの導入に取り組みました。それと同時に、増えてきた職員の分析評価業務の品質標準化が必要だということで、個々人のスキルのボトムアップを目指してQMSを導入しました。

組織全体に浸透させるCMS導入にコンサルの力

-苦情が多かったのですか?


 

陶山氏: どこまでを苦情と定義するのかにもよりますが、お客様がご立腹されて電話をしていらっしゃるといった一般的なクレームのイメージのようなものは、幸いなことに非常に少ないです。これは、当財団のお客様が研究機関や企業の研究部門に所属されている紳士淑女な方が多いこと、また、当財団が分析センターの中では新しいものにも取り組んでいるという点においてお客様にも非常に評価いただいていることに起因していると思います。

なので、今回の取り組みは、現在顕在化している苦情に対処するための仕組みの導入というよりは、要望まで含めたお客様の声をできるだけ多く拾い出し、財団のサービスやブランド力の向上に役立てるための仕組みの導入、と位置づけています。

 

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苦情は個人の問題ではなく組織全体の課題

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篠原 秀明氏

-コンサル会社を利用した理由を教えてください。

米光氏: ISMSとQMSの導入に関しては右も左も分からない状態でしたので、コンサルティング会社の支援が必要だと感じ利用しました。CMS導入時点では、ある程度マネジメントシステムの考え方や仕組みが理解できていたので、財団内だけでも進められるのではないかとも考えました。しかし、自分たちだけだと独自の解釈で進めてしまう、また、進めている施策が本当に正しいのかが分からなくなるという懸念があり、今回もコンサルティング会社を利用することにしました。

コンサルティング会社を利用することの利点として、豊富な経験から自分たちの考えよりも良い代替案をご提供いただける、適切なアドバイスをいただけることも期待していました。

-何故ニュートンを選ばれたのでしょうか?

米光氏: CMS導入にあたって改めて何社かお会いさせていただいた中で、当方の考えていることに一番合っていたのがニュートンさんでした。認証は取ってお終いではなく、その先につなげられる仕組みにしなくてはならないこと、プロジェクトメンバーだけが取り組むのではなく、財団全体にその動きを広げることなど、当方の目指していたことを一緒に実現していただけると感じました。

-コンサル会社を変えることにストレスは?

陶山氏: ISMSとQMSの構築に携わっていただいたコンサル会社さんをCMSでも引き続き利用すれば、確かに当方の事情が既に分かっている、当方のマネジメントシステムについても理解しているなど、利点はあります。一方で、コンサル会社を変えると、また一から様々な説明をしなくてはならないし、そのコンサル会社のプロジェクトの進め方にも慣れなくてはならないなど、当方にも改めて負荷がかかることは事実です。でも、私はコンサル会社を変えたのは良いことだったと感じています。

特にQMSとCMSは密接に関係しているマネジメントシステムですから、同じコンサル会社を利用した場合には、「前回と同じで」という風に進んでしまう可能性があります。別のコンサル会社を利用することにより、馴れ合いを省き、新たな見方・考え方を得ることで、抜け漏れを防ぐことができます。また、当方も改めて組織のことをしっかりと説明することで、自らの足りないところや矛盾に気がついたり、向上心を維持したりすることができたと思います。

大切なのは職員とのコミュニケーションと動機づけ

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石川 活実氏

-財団様のCMSについて教えてください。

米光氏: 当方では、財団全体を取り組みの対象としてシステムを構築しました。具体的には、お客様からの「ちょっとした不満まで含めて苦情」と捉え、その声を全職員が専門用紙に記入することで一元化、データ分析・評価することにより、対応の改善、仕組みの改善をおこなっていく、というものです。

苦情対応において重要なのは、苦情は組織全体として取り組むべき課題だという意識改革です。ミスから苦情が発生することは業務をおこなっているうえではあり得ます。その際、ミスをした個人が責められたり、犯人探しに終始したりするようでは組織としてのレベルアップは望めません。むしろ、何故そのミスが起こったのか、何故上司は見逃したのか、システムに問題はなかったのか、などといった事項を皆なで考える、という文化を醸成することが大切だと考えました。

-集めた苦情はどのように活用されるのですか?


 

篠原氏: 月に1回、財団全体に向けて状況報告をしています。報告にあたっては、苦情の手段と内容を分析しています。手段とは、例えば電話での苦情が多いのかメールでの苦情が多いのか、というようなことです。これを分析することにより、その手段の利用方法を改善することで、二次苦情を防げます。また苦情の内容とは、例えば、見積りなのか、分析結果なのか、納期なのかなど、苦情の具体的対象を指します。これを見極めることで、財団内の仕組みの改善につなげることが可能です。

また、実際にあった苦情の情報を公開することにより、今まで縁のなかった部署の仕事の内容に職員が興味を持ったり、自分の属する組織がお客様にどう見られているのかについて理解が深まったりなど良い効果が出ていると感じています。

さらに来年には、ホームページでの情報公開も予定しています。

-現在の運用状況を教えてください。

石川氏: 5月から運用を始めて約4ヶ月になりますが、現時点までで約80件の要望があがってきており、ほぼ目標どおりの推移です。当初はお客様のご依頼ごとに必ず1件は記入するようにしよう、という話も出ていたのですが、あまり数が多すぎても仕組みがまわりませんし、職員の負担が増えすぎるのも良くないということで、現在のような線引きと運用になっています。

ただ、情報公開を続けていることで、どんな情報を報告すれば良いのかということについて財団内で意識統一が図れてきたので、徐々に報告は増加しており、非常に良いことだと思っています。

取り組む前にトップマネジメントの意識改革を

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-実際のCMS導入で苦労したポイントは?

もっと事務的なレベルでは、「苦情」に関する意識統一も困難なポイントでした。プロジェクトチームでは「ちょっとした不満まで含めて苦情」と捉えているのに対し、職員には「苦情=ネガティブ」という先入観があるため、個々人が勝手に「これは苦情ではない」だから報告しなくて良い、と判断してしまうことがありました。これを改善するため、苦情のガイドラインと具体例を作成して理解を促したり、個々人とコミュニケーションを重ねたりすることにより意識を統一していきました。石川氏: 当方は全従業員を対象としたシステムの構築をおこなったため、浸透させるのが大変でした。「要望まで含めた苦情」を集めて改善につなげることが糧になり、組織全体がレベルアップできるのだ、いう動機付けを根気強くおこないました。結果、導入は大変でしたが、現時点では苦情を組織全体の問題として認識できる文化が醸成できたことは意義深かったと感じています。多くの企業ではCMSは苦情対応窓口やコールセンターなど専門部署だけで導入することが多いため、導入は比較的容易でも、その後その成果を組織に理解してもらうのが大変なのではないかと想像します。

篠原氏: 取り組み始めて間もない段階に、苦情には一次苦情と二次苦情があることに気がつきました。一次苦情というのは、実際の業務に対する直接の苦情、二次苦情はその苦情対応に対する苦情です。仕組みを構築していくうえで、この2つが区別できていないと効率的な運用ができないので、ここは気をつけて取り組みました。

とにかく二次苦情はないに越したことはありませんから、この撲滅は早期に着手しました。

苦情に困る前に構築を

-ニュートンのサービスはいかがでしたか?

陶山氏: プロジェクトの開始当初にトップマネジメントも同席してプロジェクトメンバー全員で規格書の読み合わせをおこなっていただきました。普通そういう場ではコンサルの方も気を使って遠慮がちに進められるものなのですが、ニュートンさんは遠慮なくトップの考え方の転換が必要だということを説明されました(笑)。これは、これからプロジェクトに取り組むメンバーには非常に勇気付けにもなったと思います。素晴らしいスタンスだと思います。

米光氏: やはり規格は内容が難しいので、自分たちだけでは理解が浅いとき、私たちに分かり易い言葉で卑近な例を用いながら説明してくださったのが有難かったです。打ち合わせの際だけでなく、メールでの問い合わせなどにも素早く対応してくださいました。

また、分析事業という特異な組織にとってもしっくりと来る的確な提案をしていただけたと思います。

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-今後はどのような取り組みを進められる予定ですか?

米光氏: ISMS、QMS、CMSと3つの認証規格を取得しましたので、今後は統合マネジメントシステムとして運用したいと考えています。また、拾い上げた要望を活かしニーズにつなげていく活動こそが重要なので、引き続きシステムの改善をおこないます。

-CMS導入を検討している後輩企業へのアドバイスをお願いします。

陶山氏: 苦情が多くて対応に困る段階になってからのマネジメントシステムの導入は大変だと思います。むしろ、現在事業が順調な企業こそ、そういう組織、そういうシステムにならないために取り組まれるべきだと考えます。早く取り組み、その仕組みが当たり前になることが必要だと思います。

-本日は貴重なお話どうもありがとうございました。

担当の声

自ら考え、構築したシステムだからこそ

コンサルタント
高橋 征三

コンサル会社を利用する場合、ともすればコンサル会社の言いなりになり、全てをコンサル会社に決めてもらおうという受身の姿勢になりがちですが、材料科学技術振興財団様のプロジェクトメンバーの方々からは「自分たちのマネジメントシステムを、自分たちで考え、自分たちで導入・運用していこう」という気概や姿勢が強く感じられました。このようなお客様と一緒に仕事ができたことを大変有難く感じています。
お客様もおっしゃっているように、認証取得は取って終わりではなく、そこから正に始まるものです。材料科学技術振興財団様が、今回認証取得したISO10002をきちんと運用され、他のマネジメントシステムとの統合を含めた向上・改善にも取り組まれることを確信しています。

お客様情報

企業名 財団法人材料科学技術振興財団
所在地 東京都世田谷区喜多見1丁目18番6号
設立 1984年8月1日
財産 30億円
代表者 理事長  増島 勝 
事業内容 先端的な科学技術分野における新材料や半導体などに関する基礎的研究、解析・評価。 研究機関又は個人に対する表彰及び援助。

(2010年8月末日現在)

プロジェクトメンバー

お客様

理事長

増島 勝 氏

分析評価部

部長  陶山 直樹 氏

分析評価部

次長  米光 恭子 氏

分析評価部

篠原 秀明  氏

分析評価部

近澤 志津香 氏

分析評価部

石川 活実 氏

分析評価部

寺地 弘行  氏

総務部

渡邉 和紀 氏

ニュートン・コンサルティング

代表取締役社長

副島 一也

取締役副社長 兼 プリンシパルコンサルタント

勝俣 良介

コンサルタント

高橋 征三