リスク管理Navi
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豊田通商 様
お客様 |
取締役社長 加留部 淳 氏 常務取締役 山際 邦明 氏 執行役員 筒井 達矢 氏 総務部長 理事 内田 雅之 氏 BCP推進室 室長 山本 浩幸 氏 BCP推進室 主査 高木 登 氏 BCP推進室 部長補 山下 昌宏 氏 BCP推進室 課長 山本 智諭 氏 BCP推進室 宇野 雅子 氏 |
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ニュートン・コンサルティング |
代表取締役社長 副島 一也 取締役副社長 兼 プリンシパルコンサルタント 勝俣 良介 エグゼクティブコンサルタント 久野 陽一郎 エグゼクティブコンサルタント 伊藤 隆 |
多岐にわたる事業、グローバルなビジネス展開、規模の大きな事業体において、どのように実効性あるBCPを策定するか――。
以下にご紹介する豊田通商様の取組は、今後大規模なBCP策定を行う企業にとって大いに参考になることでしょう。
豊田通商株式会社様は、国内外60ヵ国以上におよぶグローバルネットワークと、600社近い連結グループ会社を通じて、世界各国でビジネスを展開している総合商社です。資材や製品・商品を単に供給するだけでなく、原材料となる資源開発から、効率的な供給体制の企画立案・構築、廃棄物のリサイクルまで、従来の商社の枠にとらわれない幅広い領域で機能を発揮し、きめ細かなサービスを提供しています。
サンフランシスコ大地震を実体験している加留部社長は、世界で日々起こる事故や災害に対してグローバル企業として大きな危機感を抱いている中、東日本大震災で、BCP策定を決断するにいたります。
顧客への供給責任を果たすため、2年間にわたりグループ全体でBCPを策定し、それを継続的に運用して改善を図っていくためのBCM構築も併せて行うことを決め、コンサルティング会社数社の中からニュートン・コンサルティングの提案をご採用いただきました。
本プロジェクトの全体像は「計画」「パイロット」「展開」という3つのフェーズに分かれています。
「計画フェーズ」では、グループ全体の事業継続方針を決め、どのようにグループ全体に展開していくかという計画を策定しました。事業を細分化・内容確認した上で、各事業間のBCP策定の優先度づけを行い、パイロット事業の選定を行いました。そして『パイロットフェーズ』では。選定した事業に対して、その中から10事業をパイロット事業として選定しました。
「パイロットフェーズ」では、選定した10事業に対して、その優先度に応じた構築方法(3日を要する3段階ないし1日でのコンサルティング)で策定を行いました。
この2つのフェーズでは、同時に、豊田通商様のメンバーの知識とスキルの習得を行っています。終了時にはあらかじめ設定した指標で習得度を評価し、十分なレベルに達していることを確認しました。ここで習得された知識やスキルが、次の「展開フェーズ」における各事業でのBCP策定で発揮されることになります。
本プロジェクトでは、BCP策定の作業負担を可能なかぎり軽くし、より大きな重点を運用段階での継続的な取り組みに置いています。「展開フェーズ」では、2013年1月~2014年3月の1年半をかけ国内50事業、海外約70事業に展開を行っています。
BCP策定対象となった事業の海外拠点は中国、タイ、インドネシア、チェコ、英国など約20カ国にわたります。各地の現場担当者(ナショナルスタッフ)に対する英語や中国語による豊田通商様メンバーのBCP策定支援にあたっては、ニュートンのコンサルタントも適宜同行して、ファシリテーションスキルのサポートを行いました。現地でのBCP策定においては、業務フローや工場・事務所等の現場も精査した上で、現状に見合うBCPを策定しました。また、時間の制約から、策定のステップを2日間に圧縮し、対象事業を絞り込むことで、国内よりも密度の高い進め方となっております。
このフェーズでは、運用計画書やセルフチェックシートなど、日々の運用の中、自分たちで改善していけるようなツールを多く導入しました。また、現場担当者が自分たちの取り組みを事例集としてまとめ、グループ内の情報共有ツールとしました。さらにグループの経営トップや役員が参加する事例報告会を設け、定期的に実施することで、現場担当者のモチベーションを向上させることができました。
本プロジェクトを順調に進めることができた要因は、まず、経営トップの強い思いにもとづき、何を達成したいのかという目標が明確であったこと、そして、それを実現するための適切なプロジェクト設計を行ったこと、各フェーズの終了後に検証を行い、次のフェーズに向けた改善を行ったこと、維持・継続の仕組みを導入したことだと思います。
「展開フェーズ」中、2013年9月には中国北京でシステム障害が、2013年10月にはタイで水害が発生しました。それぞれの現地では、策定直後のBCPを無事に発動させることができ、はからずも取り組みの実効性が証明されることになりました。ニュートンとして、今後は米国オーストラリア、アフリカなど数カ国への展開、そして訓練の強化や事例報告会等によるさらなる運用の継続を支援しています。
国内外の100を越す事業体に対して、実効性があるBCPを短期間のうちに展開した本プロジェクトは、今後、多岐にわたる事業やグローバルな組織など、大規模なBCPを策定する企業にとって大いに参考になる取り組みとなることでしょう。
名称 | 豊田通商株式会社 |
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所在地 | 愛知県名古屋市中村区名駅4-9-8 |
設立 | 1948年7月1日 |
事業内容 | 国内卸売、輸出入・三国間貿易取引等 |
取締役副社長 兼 プリンシパルコンサルタント
勝俣 良介
社長自らが牽引されたBCM構築
「仏作って魂入れず」……ここで仏とはハードのことであり、魂とはソフトのことですが、BCP/BCMを構築する企業の多くが、この落とし穴にハマります。なぜでしょうか? そこにトップマネジメントや、実際にBCPを実行する方の関与がないからです。優れた理論だけでは決して、実現できないことです。
豊田通商様では、多忙を極めるハズの社長自らが、BCP/BCM構築の指揮を執られました。具体的には、月1回の定例ミーティングに顔を出され、また、ことあるごとに社員のみなさんにゲキを飛ばされておりました。構築にあたって、私どもから社長にお願いしたことは、全て守っていただけました。BCP/BCM構築の牽引役となった推進チームをはじめ、BCPを実行する立場となる現場のみなさまは常に「動かないものは作らない」という姿勢でプロジェクトに臨んでいただけました。きっかけ作りこそニュートンが行いましたが、最終的にできあがった構築手順やツール・文書類は、全て、関係者のみなさまの意志が反映された豊田通商オリジナルです。
豊田通商様は、規模も大きく、カバーする範囲も広い……そして、環境も組織もあっという間に変化する……。この条件下で、活きたBCP・BCMを構築するのは至難のワザですが、豊田通商様のBCPは、間違いなく魂のこもったものでした。まだ、道半ば。今後は海外展開……そして、込めた魂が抜けてしまわないよう一層の定着化に向けて進んでいくことになります。全力でお手伝いしていく所存です。