事業継続(BCP/BCMS)

HOYA 様

デジタルインフラを支える、MD工場のBCP構築。グローバル供給体制によりサプライチェーンを維持
構築・策定 製造 1,000人~5,000人
HOYA 様

プロジェクトメンバー

お客様 MD事業部 事業部長 丸茂 吉典 様
MD事業部 Vice President of Operation Nguyen Tien Duong 様
MD部門 部門長 廣瀬 隆 様
MD部門 総務グループ 佐藤 幸宏 様
ニュートン・コンサルティング エグゼクティブコンサルタント 久野 陽一郎
コンサルタント 金森 晴香

お客様の会社概要

HOYA様は1941年に光学レンズメーカーとして創業し、その高度な光学技術を多分野に向けて進化させ、事業領域を拡大し続けています。特にライフケアと情報・通信の分野において独自の技術力を有し、今回、グローバルBCP策定サービスをご利用いただいたメモリーディスク(以下、MD)事業ではガラス基板市場のシェアNo.1を誇っています。もはや社会インフラといえるデータセンターを支えるMDの供給を止めないために、さまざまな危機事象に対応するBCPをどのようにして策定されたのか、プロジェクトメンバーの皆様にお話を伺いました。

―貴社の事業内容をお聞かせください。

MD事業部 事業部長 丸茂 吉典 様
MD事業部 事業部長
丸茂 吉典 様

丸茂:一般的にはメガネやコンタクトレンズで知られているHOYAですが、私たちMD事業部ではパソコンやデータセンターに使うハードディスクドライブ(以下HDD)の磁気記録ディスク基板を開発、製造しています。HDDの基幹部品であるその基板にはアルミ製とガラス製の2種類があり、ガラス基板のMDについては当社が100パーセントを市場に供給しています。今後、さらに大容量なHDDの需要が高まれば、アルミよりも剛性が高く、より薄型にできるガラス基板の特性が必要となることから、安定した供給に対する私たちの責任は増していくと考えています。

海外の複数拠点をつなぎ、現場自らが対応できるBCPを

―これまでのBCPの取り組みについてお聞かせください。

MD部門 総務グループ 佐藤 幸宏 様
MD部門 総務グループ
佐藤 幸宏 様

佐藤:約8年前に自前でBCP(事業継続計画)を策定したのですが、自分たちで分かる範囲で策定したため、限界がありました。各拠点での活動を主に検討したため、顧客の要望にどう応えるかということを中心に考えられており、事業継続という視点からは不十分なものでした。
MD事業の基幹工場は東南アジアの複数国にあり、他に日本、シンガポール、アメリカなどにも開発やサポートのための拠点があります。アジアを中心に数カ国に生産拠点が分散しているため、非常時に連携が取れるようなシナリオづくりが必要だと感じていました。

―今回のプロジェクトに取り組むことになった経緯についてお聞かせください。

MD部門 部門長 廣瀬 隆 様
MD部門 部門長
廣瀬 隆 様

廣瀬:コロナ禍をきっかけにリスク対策の重要性を痛感し、BCPをアップデートしようとプロジェクトを立ち上げました。
基本的にMD向けガラス基板製品は受注生産をしており、お客様の注文を各拠点で分け合って生産しているので、非常時には拠点同士がカバーし合うことも必要です。しかしながら、前述のとおり従前のBCPは国別に寸断されている状況でしたので、事業部長などが動けない非常時であっても、現場自らがすぐに反応し、拠点間で連携を取れる実践的なBCPの新たな策定を目指しました。

―ニュートン・コンサルティングをご利用いただいた理由は何でしたか。

廣瀬:自作では不十分なBCPしか作れなかったことを反省し、今回は外部の方の専門的な知見に頼るべきだと考えていました。複数の海外拠点をまたいでも機能するBCPを構築するには、当然、英語での現地リサーチや文書作成、トレーニングが必須です。依頼前にプロジェクトの進め方からご相談させてもらいましたが、英語によるコンサルティングという点は勿論ですが、何より、ご対応の的確さや迅速さという点において、御社の一択しかなかったと感じています。

現地リサーチを徹底、綿密な分析による代替策を策定

―プロジェクトの概要を教えてください。

丸茂:今回の目的は「グローバル化する事業に対して、BCPをバージョンアップさせること」と「有事に事業部長含むマネジメント層が動けなくても、事業が回るようにすること」の2点でした。

事業部長のインタビューから始まり、ベトナム工場の優先事業や主要リソースの洗い出し、工場及び生産ライン間での代替策の検討、調達に対する在庫の見直しと代替調達の検討など、サプライチェーンを維持するための現実的で実践的な対策を検討しました。加えて、地政学リスクを含む、社員の安全および対策本部で対応すべき事項についても、初動対応計画として整備しました。

事業継続、初動対応ともに、オールハザード型を基本コンセプトとし、危機事象に関わらず共通の体制と対応を整備し、さらに実践的なものとするために事象別の詳細手順についてもアクションリストとして整備しました。工場の現場では日々トレーニングを大切にしているので、BCPについてもプロジェクトの最後に、複数国に跨る各工場の現場リーダー層を対象にBCP訓練を実施しました。

BCPが形骸化しないための運用体制についても検討し、毎年定期的に見直し、訓練、内部監査、マネジメントレビューなどのPDCAを回す活動計画も今回のプロジェクトの中で整備しました。

―プロジェクトを通して新たな気づきはありましたか。

廣瀬:今回はニュートンさんのご支援のもと、オールハザードに対応できるリソースベースのBCPを策定することができました。企業が抱えるリスクは多様化しており、また複合的な災害に襲われる可能性もあるわけですから、本当に役に立つBCPとは原因事象ごと、例えば地震や労働争議について特定のシナリオを想定するのではカバーしきれないと学びました。どんな危機事象に遭遇しても事業を継続させるには、経営資源(リソース)の被害に応じた代替策を講じておくことが大切なのだと知りました。これまでと着眼点が違いましたね。

―拠点間連携が主眼のBCP、代替策はかなり踏み込んで策定したと聞きました。

丸茂:各工場のライン数、どのラインで何が製造されているかまで正確に把握しておかないと有事のインパクトは測れません。ベトナム、ラオスの複数拠点の稼働状況をライン単位ですべて洗い出して分析するところから始め、被害想定に応じた代替策を整備しました。

もし、依存度の大きなサプライヤーから供給が途絶えたらどうするかも考えました。受注生産であるため原料在庫も商品在庫も少なくしていますが、環境変化に伴うリスクに対しては慎重な備えが必要といえます。原材料を仕入れるサプライヤーも事前にお客様から認定されたサプライヤーしか使えませんので、簡単に代替品を用意することもできません。あらかじめリスクを想定する大切さを痛感しました。

不確実性の高まる社会、初動対応の成否を決めるのは

MD事業部 Vice President of Operation Nguyen Tien Duong 様
MD事業部
Vice President of Operation
Nguyen Tien Duong 様

―今回のプロジェクトで苦労されたことはありますか。

Duong:現場の業務はさまざまあり、責任範囲も一人ひとり異なってくるので、危機レベルの判断も目指すべき対処の仕方もまちまちでした。御社とともにディスカッションしながら全員の危機意識を合わせていくのは大変でしたが、だからこそ何かが起きてからではなく、今回のプロジェクトを通して事前に認識を合わせることができてよかったと思っています。
毎年、従業員は異動しますし、時間が経過すれば学んだことも忘れてしまいます。常にアップデートをかけて継続して取り組むつもりです。

丸茂:実際のリスクケース、例えばコロナ禍で考えても、想定外のことが起きています。不確実性の高まる社会においては、トップだけでなく現場を含めた組織全体としてのリスクマネジメントが不可欠です。今回、各拠点で直接ヒアリングしてもらい、モデルケースからも学びながら、皆が同じように危機意識を共有できたと考えています。

―ニュートンのコンサルティングはいかがでしたか。

丸茂:日系企業の海外事業では日本人が工場のマネジメントをしていることが多いのですが、当社では各拠点に権限移譲をしており、各部署のマネージャーも現地採用です。英語で対応くださり、当社の事業構造も非常に詳しく理解してもらえたからこそ、我々の気づかない観点まで検討項目を挙げてもらいました。

廣瀬:予算と時間という制約のなかで最大限の成果を上げていただいたと思っています。熱心で丁寧なリサーチのおかげでスムーズにBCPの策定が進行でき、現場メンバーを対象にした訓練を最後に実施することで、当初の想定よりもゴールを引き上げてもらったプロジェクトになりました。

―本日は誠にありがとうございました。

お客様情報 (2023年4月現在)

名称 HOYA株式会社
所在地 東京都新宿区西新宿6-10-1 日土地西新宿ビル 20F
設立 1941年11月
事業内容 「ライフケア」と「情報・通信」分野において多角的に事業を展開 メガネやコンタクトレンズ、医療用内視鏡、白内障用眼内レンズなどの製造・販売
半導体やデジタル機器産業を支える精密機器、デバイスなどの製造・販売
利用サービス グローバル危機管理・BCPサービス

担当の声

エグゼクティブコンサルタント 久野 陽一郎

エグゼクティブコンサルタント

久野 陽一郎

海外拠点へのリサーチ徹底と訓練で実効性のあるプランを実現

お客様のご要件は、「マネジメント層が全員動けなくても、危機時に対応できるようにしたい」という中々ハードルの高いものでした。この要件を実現するには、現地へ訪問し、各マネジメントの頭の中にある知識と経験を徹底的にヒアリングし、それをBCPの枠組みに整理し、さらに弊社の知見と組み合わせて、現場の社員が動けるレベルまで持っていくしかないと、プロジェクト開始後にベトナム工場へ訪問することを決めました。
訪問時には、現状の課題、あるべき姿、それに対して、現実的にどんな対策が打てるかを、4日連続、朝・昼・夕と徹底的に議論し、お客様と共に実効性のあるプランに落とし込むことができました。

当然、プランを策定しただけでは、危機時に動けるようにはなりませんので、現場のリーダー陣に対して3工場合同のトレーニングを実施し、マネジメントの考えを現場に行き届かせるきっかけができたのではないかと思います。
本プロジェクトでは、お客様と朝から晩まで議論を重ね、お互いに疲労困憊ではありましたが、BCPを策定するだけでなく、生きた活動に落とし込むことができました。
来るべき危機への備えをお客様と一緒に構築でき、コンサルタント冥利に尽きるプロジェクトとなりました。

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