ウイングアーク1st 様

地政学リスクを想定したシミュレーションを実施
常に最新の状況を踏まえた危機対応力向上を目指す

ウイングアーク1st様は2004年に創業し、企業向けのソフトウェア製品およびサービスで企業のデータ活用を支援されています。主力製品の一つである電子帳票システム「SVF」は、帳票ソフトウェア市場において国内シェアNo.1を誇ります。帳票やBIで培った技術や知見を拡張させるとともに、現場のオペレーションに踏み込んだサービス提供に取り組まれています。

 

この度、経済安全保障・地政学リスクシミュレーションサービスをご利用いただいた経緯と成果について、取締役執行役員CFO藤本 泰輔様、General Affairs & Legal 総括部長 森 博義様にお話をうかがいました。

 

―貴社の事業内容をお聞かせください。

藤本:私たちウイングアーク1stは、ソフトウェアとクラウドサービスの提供を行っており、ビジネスの核は大別して2つあります。

 

取締役 執行役員 CFO
藤本 泰輔様

まず、祖業である帳票の設計や運用管理などのビジネスドキュメントソリューション(BDS)サービスがあります。帳票管理システムであるSVFは業界シェア7割を誇ります。あまり皆さんが馴染みのないシステムかと思うのですが、実は国にも導入いただいており、年末調整のシステムにはSVFが利用されていたりします。また、電子帳簿保存法やインボイス制度の導入により、2021年にリリースしたinvoiceAgentも企業活動の電子化の後押しになるということで大変ご好評いただいています。

もう1つのビジネスの軸はデータエンパワーメントです。ビジネスインテリジェンスは大量のデータを高速に処理することを目的としていますが、当社はより現場に即した、オペレーションに組み込まれるようなソリューション提供を強みとしています。

トップダウン、ボトムアップのハイブリッドERM

―これまでのリスクマネジメントに関する取り組みについてお聞かせください。

森:当社は2017年からニュートンさんにご支援いただいているので、すでにお付き合いは7年になりますが、当時ニュートンさんを推薦したのは私でした。当社は全社的リスクマネジメントの仕組みを構築しており、元々はボトムアップ型の運用をしていました。つまり、各部門にリスクアセスメントシートを記入してもらい全社でリスク削減策を検討するような仕組みです。ただ、そこで課題感があり、外部に相談をしようということになり、今のトップダウンとボトムアップのハイブリッド形式のERMをご推薦いただいたのがニュートンさんでした。

General Affairs & Legal 総括部長
森 博義様

数社からご提案をいただき、他社はアセスメントを用いたボトムアップの提案が多かったのですが、ニュートンさんにご提案いただいたハイブリッド形式はまさに当時当社が必要としていたことでしたので、選ばせていただきました。

初年度はERMの構築、翌年は運用と危機対応体制の構築をご支援いただきました。その後は必要に応じて社内向け説明会の企画・実施や、今回のような危機対応シミュレーションのお手伝いをいただいています。会社を取り巻く環境が移り行く中で、常に最新の情報を入手し、それを自分たちでインプット、整理、体制に反映していくのは難しいと感じています。ニュートンさんの知見をお借りして、タイムリーに対応を進めることができています。

 

―今回のプロジェクトのきっかけを教えてください。

藤本: 当社は、代表取締役社長執行役員 CEOが委員長をつとめるリスクコンプライアンス委員会でトップダウンのリスク抽出をしています。年に1~2回開催する委員会で全社的に重要なリスクを決め、それをトップダウンで現場におろしています。以前は10項目くらい挙げていたのですが、重大リスクはそんなに毎年変わるものでもありませんし、全社で対応するには数が多いので、現在は4項目にしています。

そして、毎年トップダウンリスクを洗い出す目的もあり危機対応シミュレーションを実施しています。新型コロナウイルスが猛威を振るい始めた2020年にはパンデミックをテーマとしたシミュレーション訓練を実施しました。

当社のビジネスは国内が中心ですので、地政学リスクについてはそこまで重要視していませんでした。しかし、2022年に勃発したロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、当社も検討をした方が良いのではないかという議論になりました。当社は海外にも拠点がありますし、監査役からの助言もあり、今年の危機対応シミュレーションは地政学リスク、特に紛争・戦争を取り上げることになりました。

 

―プロジェクトの概要を教えてください。

藤本:今回は、数年以内に近隣諸国で紛争が勃発したという想定シナリオをもとに、シミュレーションを実施しました。このシミュレーションには、経営層に加え、人事、法務担当者だけではなく、現地法人の責任者など14名がオンライン形式で参加しました。

シミュレーションでは、「近隣諸国で紛争が発生した場合にどのように対応するか」、「最悪の事態を防ぐためにどのように対応するか」、そして「対応にあたっての体制はどのようなものか」という点について検討しました。

森:シミュレーション実施にあたっては、ニュートン・コンサルティングと共同で、シミュレーション実施目的、検証論点の検討と実際のシナリオの作成を行いました。

シミュレーション実施目的、検証論点の検討にあたっては、CFOである藤本に対するインタビューを実施しました。地政学リスクによる影響は、各国の政治の意思に因って大きく変わるものであり、シミュレーションの論点も様々な選択肢が出てきます。したがって、地政学をテーマとしたシミュレーションの設計にあたっては、実施目的や検証したい論点を明確化することが重要です。今回の準備にあたっては、CFOへのインタビューで現状の課題感や、めざしたい姿を明らかにし、検証したいことを決定しました。尚、インタビューでは、シンクタンクなどによる調査レポートをベースにニュートン・コンサルティングにて論点整理を行っていただいたので、効率的な意思決定ができたと思います。

次に、こうした論点に基づいて、ニュートン・コンサルティングにて作成されたシミュレーションシナリオをベースに、シナリオ最終化に向けた協議を、CFO及び事務局と行いました。自社拠点に影響のあるシナリオや、参加者の興味関心に合わせたシナリオを盛り込んだ結果、当日の議論の活性化につながったと思います。

藤本:シミュレーションの結果としては、当社を取り巻く特定の地政学リスクに関する共通認識を得ることができました。具体的には、人命への影響、ビジネスへの影響、経済安全保障としての考慮事項が挙げられます。そうした事態の影響度を低減するための意思決定事項や、平時の対策についても合意し、今後は、特定された課題を全社リスクに盛り込むなどして、対応を進めていくことを決定しました。

 

―今回のプロジェクトの成果はいかがでしたか。

藤本:シミュレーションには幅広く関係者の参加を募り求めました。海外拠点に関わる事案ということでグローバルビジネス統括部長や現地法人の責任者、人命に関わるということで人事部門を統括する組織文化担当の役員を含め、通常のリスクマネジメント委員会のメンバーと議論をすることができました。

成果としてまず一つ言えるのは、先程も述べたとおり、特定の紛争の発生可能性について、ある程度共通認識が持てた、ということがあります。同じ着地点になることを想定はしていましたが、普段そうしたことについて話す機会がないので、改めて確認する良い機会になりました。

また、参加者は各部門の責任者ですので、それぞれの領域において、解像度の高い意見や考えをもっています。それぞれの得意分野における観点を共有することで、網羅的に拾うこともできましたし、包括的な対応策が検討できました。

これまで、地震やサイバー攻撃、コンプライアンス違反やパンデミックなど、様々なテーマに基づいて演習を実施してきたお陰で、社内においてリスクに対する考え方のベースは醸成されてきていると感じています。今回の検討もスムーズに進めることができました。

事前のMTGで進行がスムーズに!状況次第でERMに組み入れる

―ニュートンのコンサルティングはいかがでしたか。

藤本:課題設計、議論設計を分かりやすくとりまとめていただき、また当日の進行に関しても適切に対応していただけましたので、参加者の意見を引き出すことができたと思います。今回のような政治的な要素の入った議論は社内で取り仕切るのは難しいと感じていますが、最終結論についても、参加者の納得のいくようなかたちにまとめていただくことができました。

森:事前に事務局とニュートンさんで数回にわたりシナリオ検討のミーティングを持てたのが効果的だったと感じています。シナリオにおいては軍事的な状況変化とそれにともなう経済的な状況変化の付与バランスが難しく、今回はより経済的な要素を増やしてビジネスへの影響についての議論の比重を増やした方が良かったという反省はあります。

一方で、事後にいただいた報告書を利用して、事務局からリスクコンプライアンス委員会に実施報告もできましたので、助かりましたね。

 

―今後の取り組みについて教えてください

藤本:今回の演習で出てきた課題については、全社的なERMに包含し対応していく予定です。また今後については、ESG、サステナビリティ、人的資本などに関するリスクについても検討していく予定です。

森:全社的リスクマネジメントを推進してきていますが、ボトムアップのリスクマネジメントについては少々手詰まり感があります。残余リスクはこれ以上低減できないところまで対応を進めてきました。当社としてどのようなリスクマネジメントを標ぼうしていくべきか、今ニュートンさんからもご提案をいただいています。

―本日は誠にありがとうございました。

担当の声

アソシエイトシニアコンサルタント  備酒 求

組織の高いリスク感度と定期的な訓練で意見共有が実現

ウイングアーク1st様とは、約7年のお付き合いになります。こうしたお付き合いの中で感じている組織の特徴は、「即断即決」「闊達なコミュニケーション」「高いリスク感度による先回りした意思決定」にあるといえます。いずれも、危機対応では重要な要素です。

こうした要素を維持継続するために何が必要か。ウイングアーク1st様と検討し、たどり着いたのが、タイムリーなテーマかつ現実的なシナリオを用いたシミュレーションを定期的に行うことでした。そこで今回は、地政学リスクを取り上げました。

地政学リスクの特性を踏まえた設計上の考慮事項は「どのくらい悲観シナリオとするか」「シナリオに説得力の高い要素を組み込めるか」の2点です。これらに対し、藤本CFOのご協力をいただき、且つ、弊社の知見を交えて設計することで、シミュレーション当日は、ほぼすべての役員の皆さまから積極的にご発言をいただき、リスク顕在化時の影響度と対応方針の目線合わせができたと感じています。

危機対応力の向上のカギは、組織に合わせたやり方を継続させることにあります。これを実践されているウイングアーク1st様のさらなる維持改善活動を、微力ながら引き続きお手伝いできればと思います。

お客様情報

名称 ウイングアーク1st株式会社
所在地 東京都港区六本木3‐2‐1
設立 2004年
事業内容 ソフトウェアを通じて、企業のデータ活用を支援する製品・サービスを提供。
帳票・文書管理事業、データエンパワーメント事業など幅広い事業活動を展開。

(2023年8月現在)

プロジェクトメンバー

お客様

取締役 執行役員 CFO

藤本 泰輔様

General Affairs & Legal 統括部長

森 博義様

ニュートン・コンサルティング

アソシエイトシニアコンサルタント

備酒 求

当社のWebサイトでは、サイト閲覧時の利便性やサイト運用および分析のため、Cookieを使用しています。こちらで同意をして閉じるか、Cookieを無効化せずに当サイトを継続してご利用いただくことにより、当社のプライバシーポリシーに同意いただいたものとみなされます。
同意して閉じる