アクテリオン ファーマシューティカルズ ジャパン様

アクテリオン ファーマシューティカルズ ジャパン株式会社は、医薬品を輸入販売している企業です。

このたびスイス本社からの要請でBCPの見直しをおこない、原因事象BCPから結果事象BCPへの転換の為のプロジェクトを起こしました。その経緯について、プロジェクト責任者の上席執行役員 コンプライアンス・知的財産管理本部 本部長 東秀和 氏にお話しをお伺いしました。

-貴社の事業内容を教えてください。

当社はスイスのActelion Ltd.の100%子会社です。医薬品の輸入販売をおこなっておりますが、海外で製造された医薬品を日本国内で販売する為には、医薬品製造販売の承認を厚生労働省から受ける必要があります。その為にはクリニカルデータ(人での臨床試験結果)とノンクリニカルデータ(品質試験や動物実験等の結果)の提出が必要です。日本では、日本人を対象とした臨床試験データが求められることから、この試験を国内においておこなっています。

現在日本で販売している医薬品は2種類で、来年にはもう1つ承認が下りる予定です。2015年までには、更に2製品を発売できる予定です。

おかげさまで日本法人設立から10年を越えましたが、順調に成長し続けております。

自社で新型インフルと地震BCPを策定

上席執行役員 東 秀和 氏

-今までのBCMの取り組みを教えてください。

当社が最初に事業継続計画を策定したのは、2009年に新型インフルエンザが問題になった際でした。その頃査察で来社されていた東京都の職員の方から、BCP策定を勧められたのがきっかけです。重要な取り組みであると考えた社長のトップダウンで、1週間も経たないうちに全社を巻き込んだプロジェクトチームを編成し、3ヶ月で計画を策定しました。続けてまた3ヶ月で大規模地震編も作成し、社内への周知をおこないました。

その際にはサプライチェーンのBCPへの取り組み状況の調査などもおこないました。医薬品卸しの業界は大手企業が何社かあるのですが、各社とも相応の対策をされているので、その点については安心しております。

実は異なる日本式BCPと欧米式BCP

【日本式BCPと欧米式BCPの考え方の違い】

-今回のプロジェクトの内容を教えてください。

日本ではそのような形で既に新型インフルエンザと大規模地震に対するBCPを策定済みだったのですが、2010年はじめにActelion Ltd.がグローバルなBCPの見直しに着手しました。LDRPSという集中管理ツールを用いた統合管理の仕組みが導入されることになり、日本もそれに準じて従前の仕組みを見直すことになりました。

スイス本社からの指示は大変紳士的で柔軟なもので、従前の仕組みは活かしつつ、その後の環境変化などを盛り込み改善を求める、というものでした。日本の取り組みの意図や根幹における理念が納得され評価された為だと思われますが、一部ITについてはグローバルでの管理を強化する意向から綿密な見直しが求められた以外は、日本のやり方を最大限尊重するものでした。

ただし、日本独自で策定していた事業継続計画は新型インフルエンザや大規模地震といった原因事象を軸としたものであったのに対し、管理ツールであるLDPRSが前提としているのが、リソースへの被害状況(結果事象)を軸にした考え方のものでした。

この転換は規格や仕組みの理解が不可欠ですし、対策の適切さ、抜け漏れなどのチェックもあわせておこないたいという意図から、今回のプロジェクトには専門家のアドバイスを仰ごうということになり、ニュートン・コンサルティングさんに支援をお願いしました。

実際には、社内横断的に再度インタビューをおこない、従前のBCPの内容を再検討し、その上で、原因事象を軸としていたBCPを、ERP、CMPとBCPに分割しました。結果として文書が増えたように見えますが、この仕組みには以下のようなメリットがあります。

  • ERPとCMPはリスクを特定のものに限定せず汎用的に使えるものであること
  • それぞれの文書は利用する担当部署が作成する為、各担当者にとってはより分かりやすく簡便なものであること
  • ERPとCMPは共通文書であることからメンテナンスが楽になったこと

移行はそれなりに労力の必要な作業でしたが、慣れれば今の仕組みの方が管理しやすいと感じています。

また、見直しの最中に東日本大震災がありましたので、より甚大な被害想定に変更し、地震のみならず水害なども被災想定に組み込み、事業継続力の向上を図りました。

今回新型インフルエンザBCPについては被害想定が地震や水害と大分違うのでまだ組み込んでいませんが、今後こちらについても移行を進め、最終的には全て統合する予定です。

グローバルにも注目される日本の取り組み

-苦労されたポイントや気づきはありますか。

 

新しいツールへの移行作業はやはり大変でした。LDPRSには様々な機能があるので、使いこなすにはまだまだ時間がかかりそうです。一方で、グローバルで集中管理されるようになったので、本国との情報共有はより円滑に進みそうです。

また、今回共通のツールで管理をしたこともあり、アメリカやイタリア、トルコなど他の地震を脅威としている国からも日本の取り組みを参考にしたいという声があがり、日本の訓練にも参加したいという打診も来ています。我々の活動がグローバルな体制強化に寄与できれば良いと考えています。

一方で、当社のBCMの取り組みとしては、今後の状況変化を踏まえてさらなる改善が必要と感じています。

また、社内の意識統一もこれから必要なプロセスであり、危機感が高い人とそうでもない人が混ざっている状態では万が一のときに適切に行動できません。訓練などを通して意識を共有していく必要性を感じています。

-ニュートンのコンサルティングはいかがでしたか。

原因事象ベースで策定していたBCPを結果事象に移行するという作業はやはり専門家の知見とサポートなくしては進められなかったと思います。日本的なBCPの策定方法と欧米的なBCPの策定方法の違いを熟知していなければ、この短期間でこうした移行作業はできなかったと思います。

また、事務局やプロジェクト参加メンバーに対しては難しい概念も平易な言葉で分かりやすくご説明いただき、メンバー全員が良く理解し、スムーズにプロジェクトを進めることができました。コンサルタントの方の人当りの良さや若さゆえのフットワークの軽さなどもあると思います。

まだこれから訓練をおこないますので、その際にもご協力をお願いします。

-今日は貴重なお話をありがとうございました。

担当の声

執行役員 兼 プリンシパルコンサルタント  内海 良

原因事象と結果事象で悩んだ末の最適解

BCPを「原因事象」と「結果事象」のどちらを想定してつくるか?
それぞれ一長一短があり多くの企業が悩まれているテーマです。
原因事象、特に日本では「地震というわかりやすい出発点から細かいシナリオをもとに策定するBCP」と、結果事象という「オフィスやITシステムなどリソースが使用できなくなった場面を想定する、多くの場面で融通の利くBCP」。

今回アクテリオン様が目指したゴールはこの両方を達成することでした。

このゴールを達成するだけでも困難なうえに、他にもスイス本社側とのBCPに対する微妙な認識のズレ、文化・地域性からくる考え方の違い、そして言語そのものの壁など、クリアしなくてはならない課題は少なくありませんでした。振り返ってみると、これらの課題を解決し無事BCPを策定した背景には、大きく2つの成功要因があったと思います。

一つ目はプロジェクトアプローチ。
このプロジェクトが開始された時には、スイス本社主導でヨーロッパおよび北米地域ですでに結果事象でのBCP策定が完了していました。このヨーロッパ、北米でのノウハウを取り込みつつ、日本の地域性を活かしたBCPを策定する、というスタンスで望みました。まずヨーロッパ、北米のBCPの考え方と日本のBCPの考え方のギャップを洗い出し、スイス本社のBCP担当の方とお互い納得したうえでBCP策定に取りかかったのが成功要因だったと思います。

二つ目はプロジェクトに取り組む姿勢です。
様々な課題に対するアクテリオン様の取り組み姿勢は実に素晴らしいものでした。打ち合わせは30名弱のプロジェクトメンバーが一堂に会する形で共通認識を醸成し、スイス本社のBCP担当の方も定期的に来日され、日本の文化・地域特性を尊重頂く形でBCP策定プロジェクトを進めることができました。

このような世界規模でのBCP策定プロジェクトに一員として携われたことは、とても貴重な経験であり、私のなかで非常に大きな財産となっています。

利用サービス

お客様情報

商号 アクテリオン ファーマシューティカルズ ジャパン株式会社
本社所在地 東京都渋谷区広尾1丁目1番39号 恵比寿プライムスクエアタワー
設立 2001年10月
資本金 9,500万円
従業員数 243人
代表者 代表取締役社長  田中 諭
事業内容 医薬品の開発、輸入販売、流通および販売促進

(2012年6月現在)

プロジェクトメンバー

お客様

コンプライアンス・知的財産管理本部 上席執行役員 本部長

東 秀和 氏

コンプライアンス室 室長

石井 茂 氏

コンプライアンス室

辻 まどか 氏

ニュートン・コンサルティング

代表取締役社長

副島 一也

取締役副社長 兼 プリンシパルコンサルタント

勝俣 良介

執行役員 兼 プリンシパルコンサルタント

内海 良

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