カルビー 様

次世代に向け、BCP再構築とオールハザード型BCPへ転換
リスク感度を高める仕組みづくりに成功

1949年創立のカルビー様は、日本人なら誰もがその名を知る、数多くのロングセラーをもつ食品メーカーです。日本初の小麦を原料とした「かっぱあられ」、天然えびをまるごと殻ごと使用した「かっぱえびせん」に始まり、「ポテトチップス」「じゃがりこ」といった不動の人気商品により、スナック菓子のシェアは50%以上。「フルグラ」も朝食の定番となり、シリアル食品においてもシェア1位を誇っています。さらに、自然の恵みをこれからの世代へも活かし続けてくために、持続可能なパーム油の生産支援や国産ばれいしょの安定調達に向けた取り組みなども話題となっています。

 

この度、BCM/BCP改善・再構築支援サービスを導入いただいた経緯と成果について、コーポレートリスク管理本部 本部長 見目 泰彦様とコンプライアンス・リスク管理部 部長 鬼塚 里美様、髙橋 淳様にお話を伺いました。

コーポレートリスク管理本部
本部長 見目 泰彦 様

―貴社の事業内容をお聞かせください。

見目:当社は「掘りだそう、自然の力。」をコーポレートメッセージとし、食糧が困窮していた時代から、自然の恵みを活かしておいしさと楽しさを創造する製品づくりをしています。自然原料への専門性や開発力、加工技術を長年にわたって培い、スナック菓子の国内市場シェアはトップであり、近年では北米と中国を中心に海外売上高も急伸させています。「かっぱえびせん」「ポテトチップス」「じゃがりこ」と、各世代のニーズを捉えたヒット商品は長く愛されており、強固なブランドを築いてきました。

また、生産者と一体となってばれいしょの育種から栽培、収穫のサポートまで関わってきました。気候変動や地政学的な緊張の高まりから国産原料の重要性は増していることから、その他の自然素材へも事業を拡大しています。

さらにサステナビリティ経営の向上を目指し、自然環境や社会へ配慮したバリューチェーンの構築、製品塩分量の削減といった施策を進めています。

形骸化しない、実効性のあるオールハザード型BCPへ転換

コーポレートリスク管理本部
コンプライアンス・リスク管理部 部長
鬼塚 里美 様

―これまでの防災対策、BCPの取り組みについてお聞かせください。

鬼塚:2011年の東日本大震災直後にBCP(事業継続計画)を策定し、拠点ごとにブラッシュアップしてきました。当社でも関東地方の生産拠点が被災し、操業停止になるほどの被害があったことから、策定当初はスピード感もありましたし、訓練も重ねてきました。しかし、全国の拠点すべてが適切にBCM (事業継続マネジメント)を運用できていたわけではなく、また、時間とともに危機感は薄くなり、一言で評してしまえば形骸化していた、というのがプロジェクト前の状況です。

 

―プロジェクトを立ち上げたきっかけ、理由は何ですか。

鬼塚:全社的リスクマネジメントを見直そうとした際に、まずBCPを再構築し、その実効性を高めようということになったからです。本社はもちろん、全国の生産工場や物流拠点も同じようにリスクカルチャーを醸成し、これまで災害等を経験したことがない拠点であっても温度差なくリスクマネジメントに取り組めるようにしたい、というのがありました。

また、オールハザードBCPへの転換も必要でした。地震だけではなく風水害や鳥インフルエンザを対象としたBCPはすでにありましたが、本プロジェクト開始時がコロナ禍の最中だったこともあり、想定外の危機事象にも対応できるBCM/BCPを目指しました。

 

―なぜ、ニュートン・コンサルティングを選びましたか。

コーポレートリスク管理本部
コンプライアンス・リスク管理部
髙橋 淳 様

髙橋:すでにあるBCPをベースにしながらも、各拠点の担当者を巻き込んで現場の声であったり、最新のリスクトレンドを盛り込んでいくには専門家の知見は不可欠でした。

なかでもニュートンさんを選んだのは、経営理念の「あの時もっとこうしておけば良かったを世界から失くしたい」に共感したからです。前職でもBCPを担当していましたが、文書の作成に注力しすぎると、BCMのPDCAが回せなくなり、活動がシュリンクしていくという課題を感じていました。有事に役立つBCPとするために、対策本部に属する各部門のキーパーソンとワークショップや訓練を繰り返し、社内のリスクカルチャーを醸成していく、というニュートンさんのアプローチの仕方が当社に適していると考えたからです。

経営だけでなく全国の現場を巻き込み、リスク感度を向上

―プロジェクトの概要を教えてください。

見目:プロジェクトを開始するにあたり、特に以下のようなBCM/BCPの改善を目標としました。

  • コロナ禍を想定した複合災害にも、サプライチェーン全体で有機的に対応できるようなオールハザードBCPに改定したい
  • 本社・国内工場のBCPマニュアル改定と演習訓練の展開を2年間で実施したい
  • 現状の課題を明確にして、トップと現場を巻き込み、BCMを再構築したい

通常業務の忙しさ、今までのBCM活動の経緯も考慮し、2021年からこれまでに3年以上をかけてBCM再構築プロジェクトを実施してきました。

1年目は生産の要であるパイロット拠点から始め、経営インタビューや現状のBCMの分析・評価から目指すべきゴールや課題を見極め、その後本部長クラスが参加する災害シミュレーションや、パイロット拠点でのBCP改善ワークショップなどを通してカルビーらしいBCMの基礎をつくりました。

2年目は主に全国展開を実施しました。全国9ヶ所の拠点長と関係者の集まるワークショップや演習を行い、1年間を通してカルビー全国の拠点でBCMの再構築に取り組みました。

3年目は関係会社へのBCM展開、全国生産拠点(工場)のBCM活動改善、本社対策本部活動の改善を行いました。関係会社でも同様にワークショップを通してBCMを展開するほか、全国の拠点で訓練・課題対応・セルフチェックなどを自主的に続けられるような仕組みづくりを進めました。

また、カルビー全体の機構改革に合わせて、経営を含む本社対策本部員を対象とする訓練を行いました。訓練では南海トラフ巨大地震に対応する危機対応シミュレーションを行い、災害時の対応の流れの認識合わせ・課題の抽出をしています。

 

―今回のプロジェクトの成果はいかがでしたか。

鬼塚:実効力あるBCMの構築や、想定外の災害にも本当に動ける組織づくりを目指し、3年をかけてプロジェクトを推進してきました。経営や現場のディスカッションを促し、段階的に広く深い活動ができたと感じています。

成果を定量評価しづらいのがBCMではありますが、初動対応は確実に迅速になっています。プロジェクト期間中に拠点所在地域で地震があったのですが、速やかな判断と連携ができたと現場から声も上がりました。災害シミュレーションやワークショップを繰り返したからこそ、頭だけではなく体に染みこんだことでリスク感度が向上したと考えています。

髙橋:製造業ですから現場を知らずしてBCPは策定できませんので、コロナ明けから全国の拠点を飛び回りました。ニュートンさんと一緒にワークショップや演習も各拠点で開催し、最大で30名くらいが参加するワークショップになったこともあります。地域に合わせて、地震・線状降水帯・台風・雪害等さまざまな災害を取り扱うなどして危機感を高めたので、日頃からBCMに能動的、自発的に動ける人が増えたという評価もあります。

被災経験の共有やシミュレーションを重ね、リスクカルチャーを醸成

―苦労されたポイントや新たな気づきなどは?

髙橋:災害によって地域ごとに経験値が異なりましたので、有事に対する意識レベルを揃えるのには苦労しました。被災した地域は復旧作業も経験していますし、同じ轍を踏まないようにと未然防止にも積極的です。

そこで本プロジェクトでは、災害シミュレーションを繰り返し実施してイメージトレーニングを重ねました。また、災害を経験している現場担当者に語り部となってもらい、ワークショップ等で全社に経験を共有したことも効果的だったと感じています。

100年を超えて持続的な成長を目指す企業として、実効性のあるBCMを構築していくためには、各拠点が自律自走できるようになることが不可欠です。企業のBCPとしてオールハザード型が政府からも推奨されていますが、なぜリソースベースの方が有効なのか、しっかりと説明しないと理解はしてもらえません。

さまざまな会議体に参加するのはもちろん、可能なかぎり全国の拠点にも足を運び、コミュニケーションを大切にしました。危機事象ごとの被害想定がないと具体的に動けないという声もありましたが、災害の多くが想定を超えてくること、リソースベースであれば複合型災害にも対応できることなどを伝えて理解を深めてもらいました。

 

―ニュートンのコンサルティングはいかがでしたか。

見目:各地の拠点にも同行していただきましたが、企業文化や風土をしっかり把握されたうえでワークショップや訓練等を運営してもらったと感じています。参加者が腹落ちできるように説明してもらえたのは、専門知識はもちろんですが、その前に当社を深く理解してくれたからではないでしょうか。

髙橋:社員のリスクカルチャーを醸成するという点において、最適なコンサルティング会社だと思います。まさに、ニュートンさんの企業理念を体現されているというか(笑)。BCP/BCMの活動というと、型にはめていく作業に終始しがちですが、現場のニーズを拾い上げてリスク感度を高めたり、リスクマネジメントへの熱量を上げる仕組みづくりは素晴らしいです。

 

―今後の取り組みについて教えてください。

見目:今後は国内外の関連会社についてもBCPの整備を行い、適切なBCMに発展させたいと考えています。また、食品メーカーということもあり、生産拠点の活動を優先的に進めてまいりましたので、全社的にみればBCMが最適化したとはまだいえません。さらに改善等をしていき、BCMを自社のカルチャーとして定着させることに取り組んでいきます。

 

―本日は誠にありがとうございました。

担当の声

アソシエイトシニアコンサルタント  藤岡 誠

当事者御自身が考える場を支援、永続的なBCMへ

本プロジェクトでは、訓練やワークショップの機会を使って機能するBCPを構築してきました。そのためカルビー様御自身で改善を続ける仕組みが重要でした。ただ文書を作るのではなく、災害時に対応する現場の当事者が集まって議論を重ね、リスクを想像し、対応を考える時間を大切にしてきました。

ニュートンは、BCMの構築にあたって、単なる専門知識の提供ではなく、むしろ継続的に考える活動の企画・設計・運営や、その仕組み化を支援してきました。カルビー様には経営から「自分たちでホラーストーリーを描く」というダイレクションをいただき、これに基づいて仕組みづくりを進めてきました。

その結果、経営や各部門の責任者、そして現場が主体となって災害時に起こりうる問題や対策をオープンに議論する活動が続いています。

私自身としても、命とビジネスを守るための活動を永続させる仕組みづくりに参画でき、コンサルタントとして光栄でした。今後も実効性を確保し続ける、自律自走のBCM構築をご支援して参ります。

お客様情報

名称 カルビー株式会社
所在地 東京都千代田区丸の内1-8-3丸の内トラストタワー本館22階
設立 1949年4月
事業内容 菓子・食品の製造・販売

(2024年8月現在)

プロジェクトメンバー

お客様

コーポレートリスク管理本部 本部長

見目 泰彦 様

コーポレートリスク管理本部 コンプライアンス・リスク管理部 部長

鬼塚 里美 様

コーポレートリスク管理本部 コンプライアンス・リスク管理部

髙橋 淳 様

ニュートン・コンサルティング

アソシエイトシニアコンサルタント

林 和志郎

アソシエイトシニアコンサルタント

藤岡 誠

チーフコンサルタント

山本 真衣

コンサルタント

日野原 小春

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