エスプリライン様

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大ヒット教材『スピードラーニング』で有名な株式会社エスプリラインは、埼玉県川越市に本社のある語学教育教材の通信販売会社です。東日本大震災の際、川越市は計画停電が実施され、業務に大きな影響が出ました。当時の混乱への反省からBCPの策定に踏みきり、プロジェクトを推進された担当役員の畦上麻衣子氏、事務局の藤田奈苗氏、中山喜之氏にお話を伺いました。

 

計画停電の影響が切実だった東日本大震災

―貴社の事業内容を教えてください。

畦上: 弊社は語学教育の通信販売の会社です。ユーザー数100万人を突破する語学教材(CD)とスクリプトブックのセット教材「スピードラーニング」が主力商品で、英語のほか、中国語、韓国語、フランス語を扱っています。電話でのレッスンやイベントといったフェイス・トゥ・フェイスのプログラムもご用意しております。弊社の従業員は、語学を習得したお客様が本当に外国人とコミュニケーションをとれるようになり、そのことによって人生の夢を実現できるようになるお手伝いをしたいという思いで仕事をしています。教材は企画から制作まで社内で行っており、監修も含めた企画はもちろん、自社内のスタジオでCDに収録する外国語のレコーディングやラジオの生出演なども行っております。

社員数はアルバイトと正社員をあわせて約270名、拠点は川越の駅前に本社ビルとアネックス、沖縄にコールセンターがあります。コールセンター業務は主に社内で行っており、お問い合わせや語学レッスンなど、外部のコールセンターではできない一部の業務を川越と沖縄でやっています。実は3.11の際、計画停電のためにコールセンター業務を再開できないという事態に陥りました。そこで、お客様へのサービス提供のために、急遽立ち上げたのが沖縄のコールセンターです。今ではお客様からの問い合わせ業務に対応する拠点として、川越本社と共に重要な役割を担っています。

―BCP策定に取り組まれたきっかけはどのようなことでしょうか。

畦上: 弊社は鳥インフルエンザの問題が起こったときにBCPを作りかけていたのですが、きちんと整備できていないうちに3.11がきて、当時は非常に切実な状況になりました。川越では計画停電などもあり、直接事業に影響が出るレベルの状況でした。

安否確認ひとつとっても、従業員の連絡リストをメンテナンスできていなかったので、エラーが頻発するような状況で、全員に連絡をとるだけで大変でした。役員をはじめ川越に居住する従業員が集まって話し合い、停電の合間に急いでメールするような対応で、お客様に迷惑をかけてしまいかねない事態になりました。そういった切実な体験から、BCPを策定することで社内にきちんとした体制をつくりたい、またこれを機に会社の業務の洗い出しを行い、そして策定によって従業員が成長していくことができるようなものにしたいと考えて、プロジェクトに着手しました。

全社一丸となってプロジェクトに参加

―今回のプロジェクトの内容を教えてください。

藤田: 震災によって川越の電話交換機が破損してお客様対応が不能になり、停電によって顧客データにアクセスできず、発送センターから商品を発送できなくなるという被災状況を想定しました。事業継続策としては、お客様対応は沖縄コールセンターが行い、顧客対応記録を紙の「問合せカード」に手書きで記入して問合せ・依頼内容を保存しておきます。インフラの復旧後は川越コールセンターでもそれを参照して対応を継続する体制をとります。商品発送は西日本の物流センターから商品を代替発送できる手配を行えるように手順を決めました。沖縄での対応のために非常時用のトークスクリプト等を盛り込んだ災害時マニュアルを作成し、シミュレーション演習も行いました。

畦上: 「従業員全員が参加できるプロジェクトにする」という目標がありましたので、最初に行った災害シミュレーションは、テレビ会議システムを使って全従業員に近い人数の参加となりました。後半で行った避難訓練にも全員が参加しました。部門ごとの進捗は毎週の全社朝礼で報告し、皆で共有しました。管理部門の主導で、実際には使えないお題目のようなBCPでは、何のために作ったかわかりません。全員が身体でおぼえられるような、いざというときに役に立つものを共有したいと考えました。3.11以降、皆の関心も高くなっていますので、参加する意欲が自然に醸成されたということもあると思います。

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沖縄センターでの訓練風景

策定したBCPを全社に浸透させるために、イザというときに使う、ということから「IZAプラン」という名称をつけました。管理部門や総務部が名前をつけるととかく堅苦しいものになってしまいがちですが、できるだけ親しみやすい、ひとことで中身を想像できる名前を意識したつもりです。全従業員に配布するポケットBCPにも、Coreca(Corede Check Card)という愛称をつけて、日本語版・英語版も整備しました。

藤田: 避難訓練は、今までそういったことに参加する機会がない部門も含めて参加し、全社一斉の訓練を行うことができました。それがまた2ヶ月後の沖縄での訓練につながっていったという副次的な効果もありました。

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IZAプランとCoreca

畦上: 3.11以降、もともと社内で組織していた自衛消防隊の活動に皆とても関心をもつようになり、積極的になったということがありました。今回のプロジェクトでも、実はみんなを訓練までちゃんと引っ張っていけるかと心配していたのですが、実際に行ってみると、びっくりするぐらい活発に意見が出てきました。積極的に真剣に考えてくれて、意味のある避難訓練ができたと思います。

当社では社内有志がほぼ毎月、東北にボランティアの活動に行き、その様子を朝会でも報告したりしています。会社としてバスを仕立てて行ったこともありますし、防災や震災をつねに意識している従業員が多いと思います。

藤田: 先日もビルの消防設備点検があったのですが、避難訓練がとても盛り上がったので、この機会に現場の方たちにもビルの設備をみんなに見てもらいました。ビル管理者の方に救助袋の中身を説明してもらったり、見てさわって確かめたり、避難誘導班と消火安全防護班は水消火器を実際に使ってみたりして、防災活動に対する手応えも感じていただけたと思います。

―策定の過程ではどのようなことに苦労されましたか。

畦上: 当初、被災想定と対策をつなげることに苦労しました。M7.3という東京湾北部地震が起こり、それと連動して震度6強の綾瀬川断層地震が発生するという想定を行ったのですが、具体的にライフラインが分断される被災想定と、電気がつながったら沖縄に連絡するなどの対策の手順を最初はなかなかうまくつなげていくことができませんでした。目標復旧レベルや目標復旧時間も検討していくうちにだんだんつながってきたのですが、最初は想定のたて方にこだわってしまったりして、部署間の調整も大変でした。

藤田: 事業継続対策シートを作っていくうちに、当初はプロジェクトに加わっていなかったチームが聞きつけて、「うちはやらなくていいの?」と問い合せてきたり、中盤はそういう行きつ戻りつみたいなことがありましたね。例えば、イベントを担っているR&Dのチームは、お客様の電話対応や発送業務といった毎日のお客様対応をしているわけではありませんが、お客様を迎える直前に有事があったらどうするのかなど切実な危機感をもっています。そのように、自分の業務に引きつけて対応を考えてくれるチームが少しずつ増えて、最終的に一丸になっていくという、元々理想として描いていたビジョンに近づくことができたと思います。

このプロジェクトで一丸になるというスローガンを掲げたものの、当初は、各自の業務が忙しくて分裂してしまうのではないかという懸念をもっていました。しかし、蓋をあけてみると、一人ひとりが自分の部署はどうなるのかと声をかけあいながらつながっていきました。それを調整するのが苦労だったということはなく、事務局として、従業員の皆さんに支えていただいたという気持ちが強いです。事務局が主導したのではなく、あくまでも現場から起き上がったプロジェクトだったと思います。

従業員の安心と安全を守るために今後も実効性を高めていきたい

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総務 中山 喜之 氏

―策定を終えて、どのような感想をおもちになりましたか。

畦上: 策定したことによって安心感をもてるようになったというのがとても大きいです。有事の際、意思決定できる人間がいなくて往生する事態が一番こわい。総務や人事の業務は、自分の下した決断による影響をつねに意識しなければなりません。自分が不在のときに部下がそのような責任や重圧を負わなければならない事態を避けられます。IZAプランによって、それにしたがって淡々と対処することができるのは、他のスタッフのためにも大きな安心感につながったと思います。3.11の際は、帰宅困難や業務復旧の判断など、それほど大変な思いをした実感があります。また、日本人のように地震に慣れていない外国人スタッフの不安という問題もありました。BCPを整備したことによって、今後は国籍を問わず、適切な情報を適切なタイミングで提供できます。訓練には外国人も参加し、安心してもらえたと思います。彼らはルールが目に見える形で整備されることを望んでいますので、備蓄品が各エリアに整備されたり、英語版のマニュアルができたり、非常に安心感を持ってもらえたと思います。

―今後の展開について教えてください。

中山: 当社はCD教材を販売するだけではなく、外国人スタッフと会話をできる場をイベントという形でお客様に提供しています。お茶会のようなものもあれば、一緒に料理を作ったりするようなものもあり、英語だけではなく各国語(中国語・韓国語・フランス語)のスタッフがいます。全言語合わせれば毎月平均4回ぐらい実施しています。震災のとき、私はイベントチームにいたのですが、週末に大きなイベントを控えていたので、お客様に中止のご連絡をしたのですが、準備されたマニュアルがなかったので大変苦労しました。これからイベントの種類も数も増やしていくことになりますので、BCPを整備することによって、有事の際にも安心してサービス提供できる環境ができたと思います。

畦上: 私たちはあくまでも実効性を重視していますので、当面は、実務的な部分をブラッシュアップしたり、他のリスクのアセスメントに力を入れていこうと考えています。完了報告会で集めたアンケートの回答結果で多かったのが、「訓練したい」という意見でした。やはり皆、実地訓練をしたことが本当に強いインパクトとして残っていて、これからもそのような訓練や勉強会を重ねてBCPを自分たちのものにしていきたいという気持ちが強いんだなと実感しました。IZAプランの活動はまだ始まったばかりなので、一歩一歩基礎をかため、その先に認証取得の検討も視野に入れようと思います。

コンサルティングの流れが分かりやすく、安心して取り組むことができた

―ニュートンのコンサルティングはいかがでしたか?

畦上: 用意していただいた資料にはBCP完成までのフローが分かりやすく「見える化」されていました。プロジェクトチームがどの段階で何に取り組めば良いのか優先順位をつけやすく、計画策定の大きな手助けになりました。

藤田: 私たちが自分で考えて決めるようにうまく誘導していただいたおかげで、BCPの考え方が自然に身に付きました。また、シートでの取り組みや分析等、BCP策定の各ステップにおいて、わからないところを親切に何度も丁寧に教えていただいたので、分かりやすく、毎回の取り組みに臨むことができました。

―本日はありがとうございました。

担当の声

“自分たちのBCP”策定を見届けました

これまで多くのBCP策定支援を実施してきた中で、いつももどかしく思うのは、策定したBCPをお客様が「自分たちのBCP」として心の底から実感されるのを見届けられないということでした。そういった実感は、訓練や見直しを経て、PDCA活動を廻していく中で徐々に醸成されていくものですので、「BCPができた」段階では、まだどこか借り物のように感じられるのも無理はありません。しかしながら、今回のエスプリライン様のBCP策定支援ではそのもどかしさを感じることはありませんでした。プロジェクト終了時点で、ちゃんと「自分たちのBCP」ができていたのです。

これには大きく2つのポイントがあったと考えられます。

BCP策定の意義、進捗状況を定期的に全社員へ報告し、できるだけ多くの従業員の意見をBCPに反映させた
雛形にこだわらず、自分たちが活用しやすいように積極的にアレンジした
上のインタビューにもあるように、当初予定していなかった部門も自発的に有事の対応策を検討されました。これは、現場で湧き上がった“熱”を受け入れ、昇華させたBCP事務局の想いと努力の結果だと思います。今回の取り組みは、間違いなく社内の結束を強くしたと確信しています。今後、エスプリライン様がどのように自分たちの「IZAプラン」を運用し、実効性を高めていかれるのか、大変楽しみです。

お客様情報

名称 株式会社エスプリライン
本社所在地 埼玉県川越市脇田本町16-23
設立 1984年5月
資本金 1,000万円
従業員数 274名
代表者 代表取締役社長 大谷 登 氏
事業内容 外国語教材の企画・開発及び販売 など

(2013年4月末日現在)

プロジェクトメンバー

お客様

代表取締役社長

大谷 登 氏

専務取締役

大谷 治子 氏

クリエイティブ&メディア部・ 情報システム部 執行役員

大谷 佳 氏

人事・経理・総務 執行役員

畦上 麻衣子 氏

総務(事務局長)

藤田 奈苗 氏

総務

中山 喜之 氏

事業戦略部

髙草木 正博 氏

事業戦略部

草野 道子 氏

情報システム部

宮里 睦 氏

情報システム部

前田 由美子 氏

情報システム部

吉田 晃子 氏

ニュートン・コンサルティング

コンサルタント

高橋 篤史

コンサルタント

林 和志郎