日本ウォーターテックス様

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株式会社 日本ウォーターテックスは、地方自治体の水道事業をサポートする会社です。本社のある埼玉県幸手市をはじめ、現在42事業所を展開し、検針、未収金整理、窓口・受付、開・閉栓精算、給水受付等の業務を受託し、運営しています。同社ではもともと独自に新型インフルエンザBCPを策定していましたが、3.11での被災体験から今回、地震に対するBCPを策定し、既存の新型インフルエンザBCPも見直しをされました。事務局として本プロジェクトに携わった取締役の佐藤亮様、 営業開発業務推進本部 営業次長の飯﨑健一様、同本部の伊東真理様にお話を伺いました。

 

南相馬事業所や北茨城事業所の東日本大震災での被災がきっかけになりました

―貴社の事業内容を教えてください。

佐藤: 弊社は平成元年に創業して今年で25年目の会社です。主に自治体から仕事を受託し、水道料金の徴収業務、メーター検針から料金の確定、督促まで含めた料金徴収業務全般を行っており、様々な苦情への適切な処理のような困難な問題にも対応し、多くの事業所において収納率99.9%という実績を達成しています。どの会社にも勝る専門会社、プロの集団という自負をもって業務にあたっております。本社のある幸手市での業務をはじめ、現在は35自治体、42事業所で業務を行っています。各事業所は、水道事業体の庁舎や浄水場等の施設内に事務所を構えています。本社に勤務する従業員は20名ですが、全事業所には検針員まで含めて864名(平成25年4月1日現在)の従業員がおります。今回、本社と緊急時対応計画を策定した古河事業所には、検針員だけでも54名ほど所属しています。

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取締役 佐藤 亮 氏

―今回、BCPを策定されたきっかけを教えてください。

飯﨑: 弊社は、2009年に新型インフルエンザのH1N1型が流行した際、弊社のある事業所で6名ほど罹患し、出勤不能になるという事態に陥りました。本社から応援を出して事業継続したので、当時、そのような体制を定めたBCPを策定しました。BCPという言葉はそのとき初めて知りました。

佐藤: 当時策定したBCPは本などで勉強して素人が作ったものなので、今回、あらたにプロフェッショナルの意見を聞いてより良いものを作りたいと思いました。直接的なきっかけはやはり3.11です。弊社は福島県や茨城県内に事業所があり、東日本大震災では南相馬事業所と北茨城事業所がかなり被害を受けました。特に南相馬では津波の被害があり、自宅を流されてしまったスタッフもいました。当時は避難を余儀なくされた家族を何世帯かこちらの平須賀事務所で受け入れました。また原発の状況が危機感をもって伝えられ、水素爆発が起こった時には業務を一時休止して、市の許可を得て全従業員が引き揚げざるを得ませんでした。スタッフが戻って業務の体制が復旧するまでには 約1ヵ月程度かかりました。南相馬市は未だに全ての地域が完全に復旧しているという訳ではなく、依然として非常体制のままになっている地区もあります。一方、北茨城事業所では市から給水応援を依頼されました。弊社は、軽トラックで給水タンクを幸手市から運び、計20日間程度給水応援を行っていました。

当時は整備してあったメーリングリストを使って、2日後の日曜日には全員の安否確認をすることができました(当日は電話も携帯もつながりませんでした)。しかし、こうした経験から、危機管理に対する体制を社内に整えようということになり、今回のプロジェクトを立ち上げることになりました。

飯﨑: 弊社が受託しているのは水道事業の一部分ですが、公共事業ですので、有事においても一般市民の皆様にご迷惑をおかけするわけにはいかず、窓口業務等の業務を止められません。従いまして、BCPがどうしても必要だと考えています。

「事業所展開ガイドライン」を使って全42事業所に展開をはかる

―有事にはどのような業務が発生するのでしょうか。

飯﨑: 被災によって停止してしまった給水を復旧する過程では、復旧業務そのものには水道局の別部門や工事店などが当たるのですが、私たちは市民からのお問い合わせに対応することになります。また当然、水道局自体で人手が足りなくなりますから、給水車を運転したり給水活動に同行したりするといった支援をする必要もあります。従いまして、有事の際には、業務を止めるどころか、平時よりも業務が増えて人出が足りなくなるという状況になります。「公共事業だから業務を止められない」というのはそういう意味です。

佐藤: リスク分析や業務影響後分析を行うことによって、継続させなければならない業務が窓口業務であるということが明確になりました。滞納整理等に比べて窓口を優先しなければならないという意識はなんとなく持っていたのですが、業務影響度分析からそれが正しいことが実際に証明されました。このことは、弊社にとっては大きな意味がありました。

事業継続策の策定にあたっては、古河事業所をモデルに、本社と事業所がそれぞれ被災した場合、どちらかが被災した場合とパターンを分け、本社が機能しない場合には岩見沢(北海道)事業所を、安否確認や情報収集の取りまとめを行う代替拠点とした対策を立てました。

また訓練では安否確認のやり方が十分でないことがわかり、初動の行動指針を検討する上で大変有意義でした。

―これから各事業所へはどのように展開されますか。

佐藤: おかげさまで、他事業所でも統一して使えるようなBCPができましたが、42ある事業所に一気にBCPを導入することは現実的には難しいです。そこで事業所リスクアセスメントと、事業所展開ガイドラインの作成を支援していただきました。これらを用いて、まず岩見沢、秦野(神奈川県)、三条(新潟県)の事業所に優先的に導入していきます。特に、岩見沢は先ほども申し上げましたように本社被災時の代替拠点となる重要なポジションにあり、また、三条事業所も本社からある程度距離が離れているため本社被災時の代替候補地の一つとして弊社は捉えているため優先度を高くしています。 秦野事業所では、南海トラフ巨大地震に備えるために優先的に作成を急いでいます。

事業所への展開にあたってはポケットBCPを全従業員に配布し、携帯してもらうことにより、周知や啓蒙の効果を期待しています。各事業所への導入がうまくいったら、その後は本社と各事業所の連携調整を視野に入れた机上訓練も行いたいと考えています。

各自治体様からは、災害が起こったときに弊社としてどんな支援ができるか等、防災危機管理体制について問い合せをよく受けるようになっています。今回の取組によって、そういった要請以上の体制を策定できたと自負しています。

今後の展開について

―策定を終えて、どのような感想をお持ちになりましたか。

佐藤: 丁寧に支援していただいたおかげで、最後まであまり悩むことなく策定することができました。策定してみての感想としては、災害時の行動手順が明確になり、事業継続のフローができたことによる安心感があります。また、弊社ではもともと人を最も重要な経営資源であるという経営方針を持っていましたので、有事においてもまず従業員や家族の安否が第一で、次に事業を継続していくという会社としての指針が明確になったことがよかったと思います。

飯﨑: 各事業所でも、それぞれ自治体様の許可を得て訓練を実施していきたいと思います。

伊東: 今回大地震を想定した避難訓練に参加して、大きく意識が変わりました。それまでは机の下に潜ることぐらいしか考えていませんでしたし、この地域の避難所がどこにあるかさえ知りませんでした。行動指針も決まっていませんでした。早く全事業所でも訓練を行って、私たちが体験した同じ気持ちを体感していただきたいと思います。

―ニュートンのコンサルティングはいかがでしたか?

佐藤: プロジェクトを開始するにあたってはコンサルティング会社を比較検討し、中にはより安い料金を提示した会社もあったのですが、最終的には、ニュートンの内海さんから提案を受け、専門的な知識をしっかりもっていて、また3か月で策定したいという弊社の要望にも応えていただけるので、お願いすることにした次第です。期間をかけすぎると人手も予算もかさむし、BCMSの認証取得なども予定していなかったので、今年度明けの4月から3か月間で作ってしまいたかったのです。

飯﨑: 内海さんと林さんのコンサルティングは専門的な知識に裏付けられていることはもちろん、様々な事例を豊富に有しており、弊社の事業内容に合わせた精緻なツールを用意してくださったので、やはりプロフェッショナルだと実感しました。進行の管理もしっかりしていて、当初予定のスケジュール通り進んだことも感心しました。

佐藤: 机上訓練では、実際の震災時の映像を用いるなど臨場感のある演出に感心しました。地震の警報アラーム音等によって3.11当時の切迫した気持ちが蘇り、真剣に取り組むことができました。そうした演出ひとつで取組に対するモチベーションが変わってきますので、我々も今後行う訓練ではぜひ参考にしようと考えています。

担当の声

お客様とのBCP訓練実施の効果に期待

自社の事業継続能力をお客様にどのようにアピールし、契約を獲得するか、もしくは取引を継続するか。これはBCPに取り組む企業にとって尽きない悩みです。積極的にBCP活動を行っても、取引先からのアンケートや調査表、ホームページ等でのアピールだけでは伝えきれないことも多くあるのではないでしょうか。

今回の日本ウォーターテックス様のBCPプロジェクトでは、今回は現場従業員、BCP事務局以外に、お客様である市役所水道局職員の方にも訓練に参加していただき、策定したBCPの課題の洗い出しを目的とした体を動かす訓練を実施しました。この訓練では、次のような3つの効果が得られました。

実際の現場従業員の対応力を見て頂くことができた
一緒に行動することで、お互いの課題が発見できた
訓練を通じてお客様と一体感が生まれた
訓練ではありのままの“素の対応力”、自社の対応力が結果に出てしまいます。訓練でお互いをさらけ出すことで得られた成果だからこそ、アンケートや報告書等では伝えきれない事業継続への本気度、そして具体的な対応力をお客様へのアピール効果があったと思います。

今回のプロジェクトにより、お客様とともに洗い出した現実的な課題に対応したBCPを策定できました。日本ウォーターテックス様の今後のBCP活動は、確実に自社とお客様自身の対応力向上に結びつく効果があります。日本ウォーターテックス様が、お客様のますますの信頼のもとに命の源である水道事業をサポートされていくと確信しております。

お客様情報

名称 株式会社日本ウォーターテックス
本社所在地 埼玉県幸手市緑台1-19-11
設立年 1988年12月
資本金 1,000万円
従業員数 864名
代表者 代表取締役 増田 眞理 氏
事業内容 上下水道の検針・料金徴収及びこれに付帯する全業務

(2013年7月末日現在)

プロジェクトメンバー

お客様

取締役専務

増田 順一 氏

取締役

佐藤 亮 氏

営業開発業務推進本部 営業次長

飯﨑 健一 氏

営業開発業務推進本部

伊東 真理 氏

総務部長

山野井 講二 氏

古河事業所業務責任者

鈴木 徹 氏

ニュートン・コンサルティング

プリンシパルコンサルタント

内海 良

コンサルタント

林 和志郎